この場面について
仕事で疲れた日は、体より先に心が固くなっていることがあります。帰り道でもまだ頭の中で会議が続いていたり、言われた一言がいつまでも引っかかっていたり。家に着いても、なかなか仕事の顔が抜けません。
こんな日の感情浴は、長さより軽さを大切にします。一話で終わる漫画や、三十分ほどのアニメ、短い随筆など、すぐに浴びられてすぐに上がれるものがよく合います。笑ってもやもやを吹き飛ばすのも、何も起きない世界でひと息つくのも、どちらもこの場面の正解です。
仕事で疲れた日に浸かった作品
この場面で記録された28作品を、しずくの多い順に並べています。しずくの数は、心が動いた大きさの目安です。

負けた試合のほうを、何度も読み返してしまう 古舘春一『ハイキュー!!』
出張の帰りに四十五巻を読み終えた

手帳に百三十行、台詞はひとつも書かなかった 連続テレビ小説『虎に翼』
二年たっても舌がしびれる

いや、ほんとに、こういう職場があったらいいのに 『夜明けのすべて』
洗濯物をたたむ手が止まった

将棋のルールを知らないまま、五巻で本を伏せた 羽海野チカ『3月のライオン』
五巻で本を伏せた

段ボール箱の中から聞こえたギター 『ぼっち・ざ・ろっく!』
箱の中の音で座り直した

焦げたサンドイッチを、出すか出さないかの話 ジョン・ファヴロー監督『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』
観終わって、夜中にフライパンを出した

包丁をにぎれない人と、にぎりかたを知らない人の台所 雨隠ギド『甘々と稲妻』
合いびき肉を買いに走った

迷宮の底で、土鍋の湯気を見ていた 九井諒子『ダンジョン飯』
夜中に土鍋を出した

同じ朝は、一度も来なかった ヴィム・ヴェンダース監督『PERFECT DAYS』
翌朝、空を見上げた

鉛筆の線が五人になって、コートへ歩いてくる 『THE FIRST SLAM DUNK』
背中がずっと熱かった

真夜中の台所で、赤いウインナーをたこにした 安倍夜郎『深夜食堂』
零時すぎに油をひいた

『MIU404』 メロンパン号に乗ったつもりで、最終話まで走っちゃいました
翌朝まで胸が熱かった

元夫が三人、みんなちょっとずつ好きになっちゃう 『大豆田とわ子と三人の元夫』
最終回のあと、台所で立ったまま

唐揚げのレモン一個で、四人のことが好きになる 坂元裕二脚本『カルテット』
揚げものの手が止まった

豚肉いためと豚汁を、ひとりで頼んでしまう昼 久住昌之・谷口ジロー『孤独のグルメ』
お代わりの前で迷った

桃の缶詰を開ける前に、もう笑っていた さくらももこ『もものかんづめ』
夜食の箸が止まった

三十七分、カメラは止まらない 『カメラを止めるな!』
部品が噛み合う音がした

炊きたてのごはんのような主人公に、ほっぺたがゆるむ 高松美咲『スキップとローファー』
ほっぺたがゆるみました

『きのう何食べた?』の台所には、段取りという名の気づかいがある
買い物袋を詰め直した

客の来ない食堂で、肩の力が抜けていく 映画『かもめ食堂』
肩がすとんと落ちました

「普通」の見取り図は、誰が描いたのか 村田沙耶香『コンビニ人間』
読み終えてからずっと考えている

夕方の畦道で、名前を返す少年 『夏目友人帳』
夕方の色が残った

段ボールのロボットに、大人まで振りまわされる 『よつばと!』
声を出して笑った

富士山より高い雪原で、ラーメンが切れる 映画『南極料理人』
腹が鳴った

湖のほとりで、二人でカップ麺をすする夜 『ゆるキャン△』
肩がすとんと下がった

明るすぎる曲を、夜勤明けの国道で 藤井風「きらり」
歩く速さが少し変わった

夜勤明けに、小説でできた音を YOASOBI『THE BOOK』
足取りが少し速くなった

洗濯物をたたみながら、にやけてしまうドラマ 『逃げるは恥だが役に立つ』
頬がずっとゆるんでた
ほかの記録
感情浴会の記録や読みもののなかで、この場面にふれたものです。
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