冬の湖のほとりで、焚き火の前にひとりで座っているリンのところへ、なでしこが震えながらやってくる。第1話のその場面を、自分はもう何回観たか分かりません。
リンは、冬のキャンプ場にひとりで来ている高校生なんです。人の少ない季節を選んで、テントを張って、火をおこして、本を読む。その日の夕方、リンは、トイレの前のベンチで眠りこんでいる女の子を見かけている。それがなでしこで、富士山を見に自転車で来たのに、眠っているうちに日が暮れて、帰れなくなってしまったんですよね。
寒さと心細さで半泣きのなでしこに、リンはほとんどしゃべらないまま、火のそばを空けて、カップ麺を分けてあげる。湖の向こうに、夜の富士山がうっすら見えている。二人は並んで、湯気の立つ麺をすする。
自分はこの場面を観ていて、気づいたら肩がすとんと下がっていました。仕事帰りで、ずっと上がっていたんだと思います。
何も起きない、のありがたさ
『ゆるキャン△』は、山梨の高校生たちが、キャンプをしたり、キャンプの道具を見に行ったり、キャンプの計画を立てたりするだけのアニメです。
本当に、それだけなんです。泣かせにくる場面も、大きな事件も、ほとんどない。ふだん泣ける話と熱くなれる話ばかり探している自分にとっては、正直、最初は物足りないかもしれないと思っていました。
でも、観ているうちに分かってきたんです。この作品のいちばん大事なところは、何も起きないことそのものなんだって。
リンはひとりが好きです。なでしこは、みんなでわいわいするのが好き。二人のキャンプのしかたは全然違うのに、どちらかがどちらかに合わせろ、とは誰も言わない。リンがひとりでキャンプに出かけて、なでしこたちは別の場所でキャンプをしていて、その夜、それぞれの場所の夜景の写真を送り合う。一緒にいなくても、ちゃんとつながっている。ここ、本当に、何回観ても、うらやましいなと思います。
ごはんの場面
それから、とにかく食べものがおいしそうなんです。
冷えた体に、あったかい鍋。朝のキャンプ場で焼くパン。夜のテントの中で食べる、ちょっとした甘いもの。自分はふだん深夜にカップ麺ばかり食べているので、第1話のあの一杯は、ほとんど自分ごとでした。観終わったあと、やかんに火をかけてました。
しずくが二つの理由
しずくは二つにしました。自分の目安だと、声が出なくなるような揺さぶられ方ではないからです。
でも、しずくの数が少ないことは、効かないということじゃないと思っています。疲れきった夜に、声が出なくなるほどの作品は、正直きついこともある。そういう夜に、手を伸ばせる場所にずっと置いておきたい作品です。
誰に浴びてほしいか
- ひとりの時間が好きなのに、それを少し後ろめたく感じている人
- 仕事で疲れて、何も考えたくない人
- 冬が苦手な人。観ると、寒さが少しだけ好きになります
いつ浴びるか
冬の、仕事で疲れた夜に一話ずつ。できれば、温かい飲みものか、カップ麺を用意してから。
ひとりの週末の昼間に、何話か続けて観るのもいいと思います。窓の外が寒そうな日ほど、よく効きます。
作品データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | ゆるキャン△(テレビアニメ) |
| 原作 | あfろの漫画(芳文社) |
| 監督 | 京極義昭 |
| 制作 | C-Station |
| 媒体 | アニメ |
| 放送 | 2018年1月〜3月 |
| 話数 | 全12話 |
| そのほか | 2021年に第2期、2022年に劇場版 |
近い気持ち
十一月の感情浴会(第31回)で、草餅の進行で取り上げました。記録は自分が書いています。草餅が初めて進行した回で、候補を三つ出したとき、草餅がこれにしたいと言ってくれたのがうれしかったです。
(記録:凪)
