この気持ちについて
おなかを空かせたい、というのは、ラルムの気持ちの中でもいちばん体に近いものです。疲れが続くと、食事がただの作業になり、何を食べてもおいしいと感じにくくなります。そんなとき、誰かがおいしそうに食べている姿を見ると、忘れていた食べる楽しみが戻ってきます。
この気持ちの感情浴は、湯気や音や色を浴びることです。鍋のふたを開けた瞬間、焼き目がつく音、ひと口めの表情。作品の中の食卓は、実際の料理以上に、食べることのうれしさを濃く伝えてくれます。
久住昌之原作・谷口ジロー作画の漫画『孤独のグルメ』は、ひとりの男性が仕事の合間に店を選んで食べるだけの話で、食べる前の迷いまで含めて食事の楽しさが詰まっています。よしながふみの漫画『きのう何食べた?』は、二人暮らしの毎日の献立を手順ごと描き、作る楽しみまで思い出させてくれます。池波正太郎のエッセイ『食卓の情景』は、昔の東京の食べものの記憶を、読むだけでおなかが鳴るような筆で書き残しています。
この感情浴を浴びたあとは、ぜひ実際に何かを食べてください。作品の味を思い浮かべながら食べる一皿は、いつもより少しおいしく感じられます。
おなかを空かせたいときの作品
この気持ちで記録された9作品です。しずくの数は、心が動いた大きさの目安で、作品の出来を採点したものではありません。

野田サトル『ゴールデンカムイ』 雪の森から、とんとんと音がする
汁をすする音まで聞こえた

迷宮の底で、土鍋の湯気を見ていた 九井諒子『ダンジョン飯』
夜中に土鍋を出した

真夜中の台所で、赤いウインナーをたこにした 安倍夜郎『深夜食堂』
零時すぎに油をひいた

卵ひとつの重さを、十五巻かけて量りなおす 荒川弘『銀の匙 Silver Spoon』
卵を割る前に手が止まった

大きなたまごは、はこべなかった 中川李枝子・大村百合子『ぐりとぐら』
あたしもおなかがすいた

『きのう何食べた?』の台所には、段取りという名の気づかいがある
買い物袋を詰め直した

客の来ない食堂で、肩の力が抜けていく 映画『かもめ食堂』
肩がすとんと落ちました

富士山より高い雪原で、ラーメンが切れる 映画『南極料理人』
腹が鳴った

湖のほとりで、二人でカップ麺をすする夜 『ゆるキャン△』
肩がすとんと下がった
この気持ちになれる場面
おなかを空かせたい作品が、どんな時によく浸かられているか。場面ごとに、作品と特集を束ねています。
近くにある気持ち
おなかを空かせたい気持ちのとなりにある言葉です。少し違う角度から浸かりたいときに。