ラルム / 感情浴会の記録

2023.07.22第39回テーマ おなかを空かせたい媒体 映画記録 ロク進行 ぬか

南極の台所と、八人の一年 『南極料理人』の回(第39回)

取り上げた作品 南極料理人(映画・沖田修一監督・2009年)

夜中に麺をゆでた

隊員は八人。基地は南極の内陸、標高は三千八百メートルを超える。外の気温は、マイナス五十度を下回る日が続く。

七月の感情浴会。進行はぬか。作品は沖田修一監督の映画『南極料理人』。ぬかが進行をするのは、今回が初めてだ。

その基地に、一年間、料理係として送りこまれた男の話だ。事件はほとんど起きない。八人が寝て、起きて、働いて、食べる。それだけの映画だ。十人で同じ時間に再生した。

ぬかの決まりは変わっていた。観る前に、何も食べないこと。

話したこと

ぬかは、料理係が朝から晩まで台所に立っている姿を、ずっと見ていたらしい。白いごはんが欲しくなる、と三回言った。おにぎりの場面で、画面の向こうから、ため息のような声が何人か分聞こえた。

はるまきは、大きな海老を揚げる場面で吹き出していた。凪は、隊員たちが食卓で黙々と食べている場面がいちばん好きだと。こはぜは、基地の中の音、つまり、換気の音や、誰かが歩く床の音が、古い家の音に似ていると言った。

草餅は、観ながらずっと、家族に電話をしたくなっていたらしい。遠く離れた場所の話なのに、会いたい人の顔ばかり浮かぶ、と。

僕の話。

いちばん残ったのは、ラーメンの場面だ。基地でラーメンが作れなくなって、隊長が夜中にひどく落ちこむ。料理係は、材料が足りない中で、どうにか麺を作ろうとする。要するに、手に入らないものを、手に入るもので組み直す。その段取りが、機械の修理を見ているようで面白かった。

食べものの映画は、食べものそのものより、それを待っている人の顔で腹が減る。そういうことが分かった。

会が終わったのは二十三時。僕は、冷凍してあった麺をゆでた。ぬかに報告したら、ひとくち目の感想を求められた。

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