子どもを寝かしつけて、台所の電気だけつけて、火曜の夜に録っておいた回を再生しました。春からの三か月、それがはるまきの週に一度のお楽しみでした。
終わっちゃいましたね。いや、ほんとに、さびしいです。
どんなドラマか
主人公の大豆田とわ子は、住宅を建てる会社の社長さん。仕事はできるし、さっぱりしているし、娘とも仲がいい。でも、離婚を三回しています。
そして、その三人の元夫が、別れたあともなぜか、とわ子のまわりをうろうろしているんです。
一人目は、レストランをやっている、ちょっとつかみどころのない人。娘のお父さんです。二人目は、カメラマンで、器が小さくて、でもどこか憎めない人。三人目は、とわ子の会社の顧問をしている弁護士で、理屈っぽくて、ひねくれている人。
この三人が、とわ子の家の前で鉢合わせしたり、三人でごはんを食べながら、とわ子の悪口とも自慢ともつかない話をしたりする。これが、とにかくおかしい。
心が動いたところ
はるまきがいちばん笑ったのは、元夫たちがそろって、なにかにつけてとわ子の家に集まってくる回です。本人たちは、それぞれに理由をつけて来ているんだけど、要するに、みんな、とわ子のことがまだ好きなんですよね。見ているこっちは、分かってるよ、って言いたくなる。
台詞が、とにかくいいんです。書き写すことはしませんけど、何気ない会話の中に、ずっと覚えておきたくなる言葉がぽろぽろ落ちている。元夫たちのしょうもない言い合いに笑っていたら、次の瞬間、とわ子のひとことで、ぐっと胸をつかまれる。煮物の味見をしていたら、思っていたより深い味がして、手が止まる。そういう感じです。
覚悟して観てほしい回
笑えるドラマです。でも、途中で、とわ子にとってとても大きな出来事が起きます。はるまきは、その回を観たあと、しばらく台所から動けませんでした。
何が起きるかは書きません。ただ、そこから先のとわ子の、泣き方じゃなくて、泣かなさ方、みたいなものが、ずっと心に残っています。大人になると、悲しいことがあっても、次の日にはちゃんと会社に行って、ごはんを作って、洗濯物をたたむ。とわ子もそうする。そういう毎日の中に、悲しみが混ざっていくのを、ドラマは静かに見せてくれるんです。
ひとりで生きること
このドラマを観ていて、何度も考えたことがあります。ひとりで生きるって、さびしいことなのかな、と。
とわ子は、ひとりです。でも、元夫たちがいて、娘がいて、友だちがいる。誰とも一緒に暮らしていないけど、ひとりぼっちではない。その距離の取り方が、なんだかうらやましくて、はるまきは最終回のあと、洗い物を途中にしたまま、しばらく台所で立ったまま考えこんでしまいました。
それでも、観終わったあとは、ちゃんと元気が出ます。明日も洗濯機を回そう、と思えます。
浴びてほしい人
- 仕事や家のことで疲れて、笑いたいけど、ばかばかしいだけのものは違う、という人
- 別れた誰かのことを、ときどき思い出す人
- ひとりで生きることを、少しこわいと思っている人
いつ浴びるか
仕事で疲れた日の夜に、一話ずつ。夏の夜の、窓を開けて風が入ってくるくらいの時間がちょうどいいです。一気に観るより、一週間に一話か二話くらいのほうが、とわ子たちとの距離がちょうどよくなる気がします。
作品データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | 大豆田とわ子と三人の元夫 |
| 脚本 | 坂元裕二 |
| 出演 | 松たか子、松田龍平、角田晃広、岡田将生 ほか |
| 放送 | 2021年4月〜6月 |
| 話数 | 全10話 |
近い気持ち
この作品は会では取り上げていません。でも、会のあとの雑談で、毎週のように誰かがこのドラマの話をしていて、それがうれしくて、記録を残しておくことにしました。
