ラルム / 作品の記録

2026.10.13媒体 漫画記録 凪

負けた試合のほうを、何度も読み返してしまう 古舘春一『ハイキュー!!』

出張の帰りに四十五巻を読み終えた
『ハイキュー!!』の表紙
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よその部から借りてきた人も入れて、やっと人数をそろえて出られた中学最後の大会で、背の低い男の子が、ネットの向こうの天才セッターに何度も止められて、それでも最後の一本までボールを追いかけて、結局一回戦で負けてしまう、あの第1話の試合で、自分はもう持っていかれていたんです。

男の子の名前は日向翔陽。昔テレビで観た、背の小さなエースにあこがれてバレーを始めた中学生で、部員がほとんどいない部で、ひとりで練習を続けてきました。対戦相手のセッターは、影山飛雄。才能はあるのに、仲間とうまくいっていない選手です。

負けた日向は、高校で影山に勝つと決めて、あのエースがいた烏野高校に入ります。そして、体育館の扉を開けると、そこに影山がいる。

ここ、本当に、何回読んでも笑ってしまうし、同時に背中が熱くなるんです。

負けた日のこと

この漫画は、試合の場面がとにかく熱くて、ボールが床に落ちる一瞬前の見開きで、何度も息が止まります。日向が目をつぶったまま跳んで、影山がその手のひらにぴたりとボールを届ける速攻が、初めて決まったときの体育館の静けさは、自分の中でいまだに何かの基準になっている気がします。

でも、自分がこの漫画をいちばん読み返しているのは、勝った試合より、負けた試合のほうなんです。

途中、ある大きな大会の予選で、烏野は負けます。何巻もかけて積み上げてきた試合が、最後の一点で終わる。そのあとの部員たちの、泣いているのかいないのか分からない顔が、一人ずつ描かれていく。

自分はそこで、背中がじんと重くなって、しばらく本を閉じたままでいました。負けた人たちを、この漫画はいっさい笑わないし、かわいそうにも描かない。負けたところから、次の日の練習がちゃんと始まる。最後の一周で抜かれたランナーが、次の日の朝にまた走りに出ていく、その当たり前の強さみたいなものが、そこにあるんです。

烏野にも、そういう人がいます。一年生の影山に正セッターの座を譲ることになった、三年生のセッター。試合に出られない日のほうが多いのに、ベンチからいちばん大きな声を出している。自分は、この人がコートに入る数少ない場面で、何回読んでも喉がつまるんです。

烏野の選手だけじゃありません。相手の学校の選手たちにも、それぞれ三年間があって、負けて引退していく人がいて、その人たちの最後の一日まで、ちゃんと描いてくれる。四十五巻のあいだに、自分は何回、相手チームの三年生の背中で泣いたか分かりません。

六年前の選書の、続き

もう六年近く前、しずく通信の冬の選書にこの漫画を入れました。一話ずつなら三十分に収まるはずなんです、と書いて、自分は収まったことがない、と正直に付け足しています。

あれから、何回も最初から読み返しました。今年の秋は、外回りの仕事で遠くへ出る日が続いて、そのたびに行き帰りの電車で何巻かずつ読んで、先週の出張の帰り道で、ようやくまた最終巻までたどり着きました。

六年たって読むと、前は日向のほうばかり見ていたのに、今回は、日向の横に並べなかった選手たちのほうが気になりました。控えの選手、けがをした選手、途中でバレーから離れていく選手。あの人たちの一コマ一コマで、自分はいちばん長く手が止まっていたんです。

仕事で疲れて帰った夜にも、試験や大事な日の前の晩にも、一巻ずつ読むのがいいと思います。読み終えると、次の日の朝、少しだけ早く目が覚めます。

項目 内容
作品名 ハイキュー!!
作者 古舘春一
連載 集英社「週刊少年ジャンプ」(2012年〜2020年)
巻数 全45巻
アニメ 2014年4月からテレビアニメが放送

近い気持ち

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