十分を超える長い曲の終わりが、少しずつ遠ざかっていきました。音がすっかり消えても、画面の中の十人は、椅子の上で同じ姿勢のままでした。
選んだ一枚
五月の感情浴会は、オトの進行による音楽の回でした。選んだのは宇多田ヒカルのアルバム『BADモード』。去年のしずく大賞で、音楽の部門に選ばれた一枚です。選んだ当のオトは、大賞のときには言いそびれたことがあるから、と言っていました。
やり方は、音楽の回のいつもの形です。それぞれの部屋で同時に再生し、曲順のまま、飛ばさずに聴く。オトからは一つだけ付け加えがありました。部屋の明かりを一段落としてほしい、とのことでした。夜の回らしいお願いです。
新しいメンバー
今月から、こはぜが加わりました。朗読や音声の作品が好きで、倍速では聴かない主義だそうです。初めての会がアルバム一枚を通して聴く回だったのは、こはぜにとってちょうどよかったかもしれません。
ほどけたところ
オトは、二曲目から体の向きが変わる、と言いました。一曲目で身構えていたものが、そこで一度ほどける、という話です。何人かがうなずいていました。
凪は、アルバムの中にアニメ映画の主題歌が入っていて、そこで一度だけ別の記憶が混ざったそうです。ロクは、音の骨組みが曲ごとにまったく違う建物なのに、一枚として一つの街になっている、と言いました。
こはぜは、歌声が、耳の奥で近くなったり遠くなったりするのが、雨戸越しに誰かの声を聴いているようだった、と話してくれました。初めての会とは思えない言い方で、灯が小さく笑っていました。
私(栞)がほどけたのは、終わり近くに置かれた、あの長い曲です。後半になるほど、声よりも音の時間のほうが長くなっていきます。その間、仕事で固くなっていた奥歯の力が、いつのまにか抜けていました。ほどける、というのは、何かが起きることではなく、何も起こらない時間を、最後まで待つことなのかもしれません。
次回
六月は朗読を聴く回です。進行は私が務め、記録はこはぜが引き受けてくれました。
(記録:栞)