子どもたちが寝たあと、食洗機の音を聞きながら再生しました。
その日は、ほんとに疲れてたんです。仕事の締め切りと、上の子の学校の提出物と、夕飯の献立が、ぜんぶ同じ日に重なって。何も考えずに観られて、ちょっとだけ元気が出るやつ、と思って選んだのがこれでした。
結果、夜中の十二時に、はるまきはフライパンでパンを焼いていました。
どんな映画か
主人公のカールは、ロサンゼルスの有名なレストランの料理長です。腕はある。でも、店のオーナーには、決まったメニューをそのまま出せと言われている。新しい料理を作りたいカールは、ずっともやもやしています。
そこへ、有名な料理評論家がやってくる。いつものメニューを出したら、さんざんに書かれる。しかもカールは、それにネットで言い返しちゃうんです。言い返し方を間違えて、話がどんどん大きくなって、ついに店を辞めることになる。
いや、ほんとに、この前半は観ていて胃が痛かったです。言わなきゃいいのに、って何回も画面に言いました。
トラックを洗う回
いちばん好きなのは、そのあとです。
仕事をなくしたカールは、別れた奥さんと息子のパーシーと一緒に、マイアミへ行きます。そこで、古くて汚いフードトラックを一台手に入れる。
カールとパーシーが、そのトラックを掃除する場面があります。油でべとべとの床をこすって、壁を磨いて、窓をふく。ほとんど会話もなく、ただ洗う。
ここで、はるまきの肩の力が、すとんと抜けました。
台所の大掃除って、始める前はいやなのに、途中から無心になるじゃないですか。換気扇の油が落ちていくのを見てると、頭の中まで少し片づいていく感じ。あの感じが、画面からそのまま来たんです。仕事でうまくいかなかったことを、手を動かして洗い流していく。カールはたぶん、そうやって自分をほどいていたんだと思います。
店で一緒に働いていた仲間のマーティンも、わざわざ追いかけてきて加わります。三人で、キューバサンドイッチを売りながら、トラックでロサンゼルスまで帰る旅が始まる。
焦げたサンドイッチ
旅の途中で、パーシーが、焼きすぎて少し焦げたサンドイッチを、そのままお客さんに出そうとする場面があります。
カールは止めます。怒鳴るんじゃなくて、ちゃんと話す。自分がなぜ料理をしているのか。お客さんに何を渡したいのか。
ここ、子育て中の身としては、刺さりましたね。
はるまきは、焦げたトーストを子どもに「まあいいか」って出しちゃう日があります。それが悪いとは思ってないんです。でも、カールがパーシーに渡そうとしていたのは、焼き方の正解じゃなくて、自分の仕事を好きでいる理由のほうだったんだな、と思って。仕事で疲れて帰ってきた日に、それを子どもにちゃんと言えるかなあ、と考えちゃいました。
おなかが空く
あと、これは絶対に言っておきたいんですけど、おなかが空きます。
鉄板の上でパンが押しつぶされて、チーズがはみ出して、表面がこんがりしていく音。カールが、夜中に息子のために、ありあわせでチーズのサンドイッチを焼く場面もあって、それがまた、ぜんぜん凝ってないのに、いちばんおいしそうなんです。
観終わって、冷蔵庫にあった食パンとスライスチーズで、真似して焼きました。フライ返しで上からぎゅっと押して。家族が起きないように、静かに食べました。いや、ほんとに、おいしかった。
浴びてほしい人
- 仕事で言いたいことを飲みこんで、もやもやしたまま帰ってきた人
- 台所の大掃除をすると、なぜか気持ちが軽くなる人
- 夜中に何か焼きたくなっても、平気な人
浴びる時間
仕事で疲れた日の夜か、ひとりの週末に。おなかいっぱいのときより、少し小腹が空いているくらいがおすすめです。食パンとチーズを、先に買っておくといいですよ。
作品データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | シェフ 三ツ星フードトラック始めました |
| 監督・脚本・主演 | ジョン・ファヴロー |
| 製作 | 2014年(アメリカ) |
| 公開 | 2015年2月(日本) |
| 上映時間 | 約115分 |
近い気持ち
会では取り上げていません。でも、ぬかさんに話したら、「その押しつぶすやつ、わたくしもやります」と返ってきました。今度、どっちの焼き方がおいしいか比べる約束をしています。
