ラルム / 作品の記録

2026.10.14媒体 映画記録 はるまき

焦げたサンドイッチを、出すか出さないかの話 ジョン・ファヴロー監督『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』

観終わって、夜中にフライパンを出した
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』の表紙
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子どもたちが寝たあと、食洗機の音を聞きながら再生しました。

その日は、ほんとに疲れてたんです。仕事の締め切りと、上の子の学校の提出物と、夕飯の献立が、ぜんぶ同じ日に重なって。何も考えずに観られて、ちょっとだけ元気が出るやつ、と思って選んだのがこれでした。

結果、夜中の十二時に、はるまきはフライパンでパンを焼いていました。

どんな映画か

主人公のカールは、ロサンゼルスの有名なレストランの料理長です。腕はある。でも、店のオーナーには、決まったメニューをそのまま出せと言われている。新しい料理を作りたいカールは、ずっともやもやしています。

そこへ、有名な料理評論家がやってくる。いつものメニューを出したら、さんざんに書かれる。しかもカールは、それにネットで言い返しちゃうんです。言い返し方を間違えて、話がどんどん大きくなって、ついに店を辞めることになる。

いや、ほんとに、この前半は観ていて胃が痛かったです。言わなきゃいいのに、って何回も画面に言いました。

トラックを洗う回

いちばん好きなのは、そのあとです。

仕事をなくしたカールは、別れた奥さんと息子のパーシーと一緒に、マイアミへ行きます。そこで、古くて汚いフードトラックを一台手に入れる。

カールとパーシーが、そのトラックを掃除する場面があります。油でべとべとの床をこすって、壁を磨いて、窓をふく。ほとんど会話もなく、ただ洗う。

ここで、はるまきの肩の力が、すとんと抜けました。

台所の大掃除って、始める前はいやなのに、途中から無心になるじゃないですか。換気扇の油が落ちていくのを見てると、頭の中まで少し片づいていく感じ。あの感じが、画面からそのまま来たんです。仕事でうまくいかなかったことを、手を動かして洗い流していく。カールはたぶん、そうやって自分をほどいていたんだと思います。

店で一緒に働いていた仲間のマーティンも、わざわざ追いかけてきて加わります。三人で、キューバサンドイッチを売りながら、トラックでロサンゼルスまで帰る旅が始まる。

焦げたサンドイッチ

旅の途中で、パーシーが、焼きすぎて少し焦げたサンドイッチを、そのままお客さんに出そうとする場面があります。

カールは止めます。怒鳴るんじゃなくて、ちゃんと話す。自分がなぜ料理をしているのか。お客さんに何を渡したいのか。

ここ、子育て中の身としては、刺さりましたね。

はるまきは、焦げたトーストを子どもに「まあいいか」って出しちゃう日があります。それが悪いとは思ってないんです。でも、カールがパーシーに渡そうとしていたのは、焼き方の正解じゃなくて、自分の仕事を好きでいる理由のほうだったんだな、と思って。仕事で疲れて帰ってきた日に、それを子どもにちゃんと言えるかなあ、と考えちゃいました。

おなかが空く

あと、これは絶対に言っておきたいんですけど、おなかが空きます。

鉄板の上でパンが押しつぶされて、チーズがはみ出して、表面がこんがりしていく音。カールが、夜中に息子のために、ありあわせでチーズのサンドイッチを焼く場面もあって、それがまた、ぜんぜん凝ってないのに、いちばんおいしそうなんです。

観終わって、冷蔵庫にあった食パンとスライスチーズで、真似して焼きました。フライ返しで上からぎゅっと押して。家族が起きないように、静かに食べました。いや、ほんとに、おいしかった。


浴びてほしい人

  • 仕事で言いたいことを飲みこんで、もやもやしたまま帰ってきた人
  • 台所の大掃除をすると、なぜか気持ちが軽くなる人
  • 夜中に何か焼きたくなっても、平気な人

浴びる時間

仕事で疲れた日の夜か、ひとりの週末に。おなかいっぱいのときより、少し小腹が空いているくらいがおすすめです。食パンとチーズを、先に買っておくといいですよ。

作品データ

項目 内容
作品名 シェフ 三ツ星フードトラック始めました
監督・脚本・主演 ジョン・ファヴロー
製作 2014年(アメリカ)
公開 2015年2月(日本)
上映時間 約115分

近い気持ち

会では取り上げていません。でも、ぬかさんに話したら、「その押しつぶすやつ、わたくしもやります」と返ってきました。今度、どっちの焼き方がおいしいか比べる約束をしています。

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