子どもたちが寝たあと、たたみかけの洗濯物を横に置いて、第1話を再生しました。
はじめは、たたみながら観るつもりだったんです。気づいたら、靴下が片方だけ手に残っていました。
タカノツメさんの「三度目」
このドラマを観ようと思ったのは、二年前のしずく通信がきっかけです。
秋の号で、タカノツメさんが「三度目だけど、第1話の最後でまたしびれた」と書いていました。編集をしているのに、はるまきはそのとき観ていなかったんですよね。いや、ほんとに、ずっと気になっていました。
今月、仕事の締め切りがひとつ片づいて、やっと観る時間ができました。
走る新人
主人公は、黒沢心という女の人です。黒木華さんが演じています。
心は、ずっと柔道をやってきた人です。けがで選手をあきらめて、出版社に入ります。配属されたのは、週刊の漫画雑誌の編集部。漫画は大好き。でも、編集の仕事のことは何も知りません。
とにかく、よく走るんですよね。廊下を走る。駅まで走る。漫画家さんの家まで走る。声も大きい。おじぎも深い。柔道の礼が、そのまま体に残っている感じです。
最初は、ちょっとまぶしすぎるかなと思いました。でも、二話目の途中くらいから、こっちの背中まで伸びてくるんです。
一冊の本のまわりの人たち
このドラマがいいのは、心だけの話じゃないところです。
ベテランの漫画家さんと、そのアシスタント。なかなか描けない新人。本を売る営業の人。書店の人。印刷所の人。一冊の漫画が読者に届くまでに、こんなにたくさんの人の手を通るんだ、と知りました。
回ごとに、その中の誰かに光が当たります。うまくいかない人の回もあります。報われない人の回もあります。
はるまきが好きなのは、営業の人が出てくる回でした。売り場で、本の並べ方ひとつに頭をひねる。地味な仕事ですよね。台所で、おかずの並べ方を毎朝考えるのと、ちょっと似ているなあと思いました。
自分の仕事のこと
観ながら、自分の仕事のことを何度か考えました。
家でできる仕事を、細かく引き受けています。誰かの名前で出るものを、少しずつ整える。それが最後にどこへ届いているのか、はるまきは、ほとんど知りません。
心は、知りに行くんです。自分が関わった本が、どこで、誰の手に渡るのか。それを知ると、また走れる。
しずく通信も、そうなのかもしれません。三十部くらいの冊子を、毎号、封筒に入れて送っています。届いた先で、誰かが一行でも読んでくれていたら、それでいいんだなあと思いました。
タカノツメさんの言っていた第1話の最後は、ここには書きません。はるまきも、しびれました。
浴びてほしい人
- 仕事でへとへとになって、それでも明日また行かなきゃいけない人
- 新しい職場や部署で、何も分からずにいる人
- 漫画が好きで、作っている人たちのことを知りたい人
浴びる時間
仕事で疲れた日の夜に、一話ずつ。全10話なので、平日に一話ずつ観ると、ちょうど二週間で観終わります。一気見は、翌朝がつらいのでおすすめしません。
作品データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 放送 | 2016年4月〜6月(TBS系・火曜の夜10時)全10話 |
| 脚本 | 野木亜紀子 |
| 原作 | 松田奈緒子の漫画(小学館) |
| 出演 | 黒木華、オダギリジョー、坂口健太郎 ほか |
近い気持ち
観終えた次の日、タカノツメさんに「やっと観ました」と送りました。返ってきたのは「では四度目を観る」という一行だけでした。
