ラルム / 作品の記録

2026.10.23媒体 ドラマ記録 タカノツメ

日曜の夜に、月曜の朝の背筋を借りる テレビドラマ『半沢直樹』(2013年)

激辛の麺より、汗が出た
『半沢直樹』の表紙
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結論から言う。今週の小生を月曜から金曜まで立たせていたのは、十三年前の日曜劇場である。

先週、仕事でひとつ、理不尽な目にあった。詳しくは書かない。書くと長くなる。その晩、帰りの電車で、なぜかこのドラマの第1話を思い出した。家に着いて、上着を脱ぐより先に再生していた。

銀行の中の、ひとりの融資課長

主人公の半沢直樹は、大きな銀行の大阪の支店で、融資の課長をしている。

ある会社に、五億円の融資をする。支店長の強い押しで、急いで決めた融資である。ところがその会社が、すぐに潰れる。お金は戻らない。そして支店長は、責任を半沢ひとりに押しつけにかかるのだ。

半沢は、黙って頭を下げる男ではない。五億円を自分で取り戻す、と言い切る。言い切ったからには、やるしかない。

ドラマは前半と後半の二部に分かれている。前半はこの大阪の支店の話、後半は東京の本部に移ってからの話だ。原作は池井戸潤の小説で、前半が『オレたちバブル入行組』、後半が『オレたち花のバブル組』にあたる。

脚本が、毎週こちらの胃を締める

このドラマの脚本は、一話ごとに同じ順番で辛さを盛ってくる。

まず、半沢が追いつめられる。上からも横からも、銀行の外からも。手がかりは消され、味方だと思った人間が向こうに回る。ここで小生の胃が、ぎゅっと縮む。

次に、細い糸が一本見つかる。書類の端の数字。誰かの手帳。古い付き合いの同期が、こっそり持ってくる話。

そして最後に、半沢がその糸を一気に引く。相手の前に、証拠を一枚ずつ並べていく。

この最後の数分のために、前の四十分がある。分かっていても、毎週同じところで汗が出る。激辛の麺を食べているときの汗と、よく似ている。ぴりっと来て、そのあとで、体の芯から熱くなるのだ。

決め台詞は書かない

このドラマには、有名な台詞がいくつもある。放送の年には、ずいぶん真似された。

ここには書かない。書いてしまうと、それだけのドラマに見えるからである。

小生がしびれたのは、言い返す場面そのものより、言い返す前の半沢の顔だ。言いたいことを、何話もかけて飲みこんでいる。飲みこんだまま、黙って書類をめくっている。その顔があるから、最後の数分が効く。

半沢の妻の花も、いい。夫の仕事に口を出しすぎない。けれど、夫が家で何を飲みこんでいるかは、ちゃんと見ている。銀行の中が辛いぶん、家の場面の味が薄めにしてあって、そこで少し息がつけるのである。

すっきり、だけではない

全十話を観終えて、すっきりした。それは本当だ。

ただ、最終話の終わり方には、すっきりだけでは済まない後味がある。何が起きるかは書かない。小生は、停止を押したあと、しばらく画面の前で腕を組んでいた。来週まで待てない、ではなく、続きを観る前に一度考えさせられる、という終わり方だった。

組織の中で働いていると、正しいことを言えば勝てる、とは限らない。そのことを、このドラマは、勝つ場面のすぐ隣に置いている。それがあるから、小生は月曜の朝に、半沢の背筋を少し借りることができたのだと思う。


浴びてほしい人

  • 仕事で、言い返せなかったことを抱えて帰ってきた人
  • 日曜の夜に、月曜が来るのが少し重い人
  • 池井戸潤の小説を、読んだことがある人。読んでいなくても観られる

いつ浴びるか

仕事で疲れた日に、一話だけ。一話ごとに一度すっきりさせてくれる作りなので、毎晩一話ずつでもよい。ひとりの週末に前半の五話をまとめて観ると、大阪編の結末で、ちょうど汗がひく。

作品データ

項目 内容
作品名 半沢直樹
放送 2013年7月〜9月(TBS・日曜劇場)
話数 全10話(前半が大阪西支店、後半が東京本部)
原作 池井戸潤『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』
脚本 八津弘幸
出演 堺雅人、上戸彩、及川光博、香川照之、北大路欣也 ほか
続き 2020年に続編が放送

近い気持ち

会ではまだ取り上げていない。灯に話したら、日曜の夜にそんなに汗をかいて眠れるんですか、と聞かれた。眠れなかった。それも込みで、すすめておく。

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