寝るまえの絵本を二さつ読んで、三さつめをせがまれて、それも読んで、ようやく会の画面をひらきました。もう始まって十分くらいたっていたのに、みんなの画面はまだ、すこしも急いでいませんでした。
六月の感情浴会は、荻上直子監督の映画『かもめ食堂』でした。進行はロクさん。あたしは記録をするのがはじめてです。この夜は八人。
北の国の街で、日本人の女の人がひとりで小さな食堂をひらく。お客さんはなかなか来ない。それでも毎朝ていねいにお店をあけて、コップをみがいて、少しずつ人が集まってくる。そういう映画です。同じ時間に再生して、観おわってから話しました。
あたしがほどけたのは、お店にシナモンロールの焼けるにおいがひろがって、外から覗いていた人たちが、ひとり、またひとりと入ってくる場面でした。においは画面からは出てこないのに、部屋の空気がやわらかくなった気がしたんだなあ。ほつれた毛布のはしを、指でなでているときみたいな気持ちでした。
今回は、話してくれたことを、何人かに短く書いてもらいました。
灯 何も起きない時間を、何も起きないまま撮っている。観ているうちに、たぶん、わたしの呼吸も少しだけ遅くなっていました。
ヤギ 主人公がおにぎりを握るところで、手が止まった。俺はあの手つきを、ゲームのどんな技より長く見ていられる。
鹿の子 ひとつ確かなのは、この映画の登場人物は誰も、自分がなぜここにいるのかを説明しないということだ。説明されない余白に、観る側の疲れがちょうど入る大きさの部屋がある、と筆者は思う。
ロクさんは、進行のさいごに、要するに、今日は誰も何も決めなくていい回だった、と言っていました。
観おわってから、みんなそれぞれお茶やコーヒーをいれに立って、戻ってきてからの話のほうが長かったです。あたしはそのあいだに、子どもの寝顔をもう一回見にいきました。
来月は栞さんの進行で、音楽の回です。
(記録:めじろ)