この気持ちについて
熱くなりたいときは、自分の中の火が小さくなっているのを感じているときです。何かに本気になった記憶が遠くなり、毎日が同じ温度で過ぎていく。そんな日に、誰かが全力を出す姿を見届けると、こちらの体温まで上がってきます。
この気持ちの感情浴は、観る側も息を止めて一緒に走るような体験です。試合の最後の一球、ゴール前の数秒、仲間が待つ場所へ走り込む場面。読み終えたあと、手のひらが少し汗ばんでいることもあります。
運動や競技を描いた作品が多く並ぶのは、勝ち負けという分かりやすい山場があるからです。古舘春一の漫画『ハイキュー!!』は、背の低い主人公が高い壁に向かっていく試合の連続で、一冊ごとに体温が上がります。三浦しをんの小説『風が強く吹いている』は、寄せ集めの仲間が箱根駅伝を目指す物語で、走る場面を文字だけで熱くします。映画『ロッキー』は、勝つことより最後まで立っていることに意味を見いだす物語です。
熱さは長く続けて浴びると疲れも残ります。一冊、一試合と区切って、ほてりが冷める前に眠るくらいがちょうどよい量です。
熱くなりたいときの作品
この気持ちで記録された13作品です。しずくの数は、心が動いた大きさの目安で、作品の出来を採点したものではありません。

野田サトル『ゴールデンカムイ』 雪の森から、とんとんと音がする
汁をすする音まで聞こえた

遅すぎるなんて、誰が決めたんだろう つるまいかだ『メダリスト』
見開きのたびに息を止めた

十三人ぶんの糸が、一本によじれていく 『十三機兵防衛圏』
眠れないまま朝になった

段ボール箱の中から聞こえたギター 『ぼっち・ざ・ろっく!』
箱の中の音で座り直した

最終回の一つ前で、画面がにじんで見えなくなった 『宇宙よりも遠い場所』
息ができなくなった

夏になると、あの長い食卓に帰りたくなる 細田守監督『サマーウォーズ』
電話の場面で背中が熱くなった

『BLUE GIANT』の河原には、雪が降っていた
指が勝手に動いた

鉛筆の線が五人になって、コートへ歩いてくる 『THE FIRST SLAM DUNK』
背中がずっと熱かった

最終巻が出る前の秋に 末次由紀『ちはやふる』
一つは十二月まで取っておく

『MIU404』 メロンパン号に乗ったつもりで、最終話まで走っちゃいました
翌朝まで胸が熱かった

明け方の渋谷が青く見えた日から 『ブルーピリオド』
背中が熱くなった

碁のルールを知らないまま、白と黒の石に背中を熱くされた 『ヒカルの碁』
一局も分からないのに汗をかいた

最初の丘で、金色の騎士に何十回も負けた 『ELDEN RING』
祝福の前で座りこんだ
近くにある気持ち
熱くなりたい気持ちのとなりにある言葉です。少し違う角度から浸かりたいときに。