この気持ちについて
驚きたいときは、毎日の先がすっかり見えてしまっているときです。明日も今日と同じように過ぎると分かっていると、心は省エネのまま動かなくなります。そこへ予想を裏切る一撃が来ると、止まっていた頭と心が一度に目を覚まします。
この気持ちの感情浴でいちばん大切なのは、何も知らないまま浴びることです。あらすじや感想を先に読まない、話題になっていても結末に触れた話は避ける。ラルムでも、驚きが柱になる作品の記録では、仕掛けに触れない書き方をしています。
小説なら、綾辻行人の『十角館の殺人』のように、たった一行で見えていた景色がひっくり返るものがあります。乾くるみの『イニシエーション・ラブ』は、読み終えた人の多くがすぐに最初のページへ戻る作品です。映画『シックス・センス』は、公開から長い年月が経っても、何も知らずに観る人を変わらず驚かせています。
驚きの感情浴には、二度目の楽しみもあります。仕掛けを知ったうえで最初から浴び直すと、一度目には見えなかった伏線が、別の作品のように浮かび上がってきます。
驚きたいときの作品
この気持ちで記録された13作品です。しずくの数は、心が動いた大きさの目安で、作品の出来を採点したものではありません。

二十二分ごとに、太陽が終わる 『Outer Wilds』
焚き火の前で動けなくなった

十三人ぶんの糸が、一本によじれていく 『十三機兵防衛圏』
眠れないまま朝になった

きらきらの裏側を、十六冊ぶん 赤坂アカ・横槍メンゴ『【推しの子】』
一巻で三回止まった

火事の夜が、三回映る 是枝裕和監督『怪物』
二回目で、最初の場面が違って見えた

落ちている時間が、いちばん長かった 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』
着地まで息を止めていた

たった一行で、島の見取り図が書き換わる 綾辻行人『十角館の殺人』
最初の頁に戻った

六つの部屋の見取り図は、なぜ最後に描き変わるのか 一穂ミチ『スモールワールズ』
表紙をもう一度見た

九十五分のうち、怖いのは何も映っていない時間だ 映画『リング』
背中が冷えた

毒見役の子が、毒の話のときだけ目を輝かせる 『薬屋のひとりごと』第2期
通学の電車で三回くらい笑った

最初の丘で、金色の騎士に何十回も負けた 『ELDEN RING』
祝福の前で座りこんだ

地下の方舟で、誰を残すのか 夕木春央『方舟』
閉じてから寒気が来た

三十七分、カメラは止まらない 『カメラを止めるな!』
部品が噛み合う音がした

「普通」の見取り図は、誰が描いたのか 村田沙耶香『コンビニ人間』
読み終えてからずっと考えている
この気持ちになれる場面
驚きたい作品が、どんな時によく浸かられているか。場面ごとに、作品と特集を束ねています。
この気持ちの特集
メンバーが作品を持ち寄った特集です。
近くにある気持ち
驚きたい気持ちのとなりにある言葉です。少し違う角度から浸かりたいときに。