ラルム / 作品の記録

2023.01.15媒体 ゲーム記録 ヤギ

最初の丘で、金色の騎士に何十回も負けた 『ELDEN RING』

祝福の前で座りこんだ
『ELDEN RING』の表紙
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コントローラーを握った手のひらが、汗で少し滑った。洞窟の出口を抜けて、初めて外の光を浴びたときのことだ。

目の前に、草原が広がっている。遠くに、空を突き抜けるくらい大きな金色の木が見える。右のほうには崩れた教会。左のほうには崖。どこへ行ってもいい。誰もそう言わないのに、そう分かる。

そして、その草原の真ん中を、金色の鎧の騎士が、馬に乗ってゆっくり行き来している。

俺はまっすぐその騎士に向かっていって、三秒で倒された。

負け続けること

このゲームは難しい。有名な話だ。でも、難しさの話だけで終わらせたくないので、ここでは別のことを書く。

あの騎士には、そのあと何十回も負けた。途中で気づいた。倒さなくていいんだ、と。草原は広い。騎士の周りを大きく回りこめば、別の道がいくらでもある。

ここで一回コントローラーを置いた。

負けたことが悔しかったんじゃない。自分が、目の前の一番強そうなものに、なぜか真っ正面から向かっていくくせがあることに、気づいてしまったからだ。ゲームの話なのに、ちょっと耳が痛かった。

城の門の前で

草原を回りこんで、別の道を進んでいくと、やがて大きな城の前に出る。門の手前の橋で、背の高い、杖を持った敵が待っている。

こいつにも、何十回も負けた。今度は、回りこむ道がない。避けて通れない相手だった。

一週間、毎晩、同じ橋の上で倒された。途中で、別の地方を歩き回って、体を鍛えて戻ってきた。それでも負けた。最後の夜、地面に残されていた見知らぬプレイヤーのしるしから助っ人を呼んで、二人がかりで、ようやく門をくぐった。一人で勝ったわけじゃない。でも、門をくぐった瞬間の、背中が熱くなる感じは、たぶん一生忘れない。

祝福のこと

この世界には、ところどころに小さな金色の光がある。祝福と呼ばれている。そこで休むと、体力が戻る。負けたときには、最後に休んだ祝福からやり直しになる。

俺は祝福を見つけるたびに、そこでしばらく座りこんでいた。画面の中の主人公も、座る。二人で、遠くの山を眺める。

雨の降る湿地で、ずっと迷っていたとき、崖の下にぽつんと光る祝福を見つけた。あのときの安心は、うまく言えない。長い坂道を登りきって、ようやく平らなところに出たときの感じに近い。

ひとりなのに、ひとりじゃない

このゲームは、基本的にひとりで遊ぶ。でも、地面のあちこちに、ほかのプレイヤーが残した短いメッセージが落ちている。この先に敵がいる、とか、ここで休め、とか。たまに、嘘も混ざっている。

見知らぬ誰かが、同じ場所で、同じように負けて、何かを残していった。その跡を見るたびに、この広い世界のどこかで、同じように苦戦している人間がいるんだと思えた。顔も名前も知らない。それでも、少しだけ背中が軽くなった。

しずくのこと

しずくは三つにした。

心が大きく揺れる場面が、たくさんあったわけじゃない。泣いてもいない。ただ、何十時間も遊んでいるうちに、負けることがこわくなくなった。それが、このゲームが俺に残したものだと思う。

去年の暮れの第2回しずく大賞で、ゲーム部門に選ばれた。票を入れたメンバーの何人かは、俺と同じように、最初の騎士の話をしていた。

誰に

  • 何かに負け続けていて、やめたくなっている人
  • 真っ正面からぶつかるくせがある人。回り道も道だ
  • ひとりで遠くへ行きたいけど、少しだけ誰かの気配がほしい人

いつ

冬の、ひとりで過ごす週末に。まとまった時間があるときがいい。そして、負けて腹が立ったら、祝福の前で座って、炭酸を一口飲んでほしい。画面の中の山は、たぶん現実の山より遠い。でも、ちゃんと歩いていける。

作品データ

項目 内容
作品名 ELDEN RING(エルデンリング)
開発 フロム・ソフトウェア
発売 2022年2月
機種 家庭用ゲーム機とパソコン
遊び方 ひとりで遊べる。ほかの人のメッセージや協力で、ゆるくつながれる

近い気持ち

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