ラルム / 作品の記録

2026.09.13媒体 アニメ記録 凪

夏になると、あの長い食卓に帰りたくなる 細田守監督『サマーウォーズ』

電話の場面で背中が熱くなった
『サマーウォーズ』の表紙
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おばあちゃんが、古い黒電話の前に正座して、知り合いに一人ずつ電話をかけていく場面から話させてください。

世の中が大混乱になって、町の信号や電話やいろんな仕組みが止まりかけているその夜、九十歳になるおばあちゃんは、家の奥から分厚い住所録を出してきて、昔から知っている人たちに、順番に電話をかけていくんです。相手は、役所の偉い人だったり、昔の教え子だったり、どこかの現場で働いている人だったり。そのひとりひとりを、短い言葉で、ただまっすぐに励ましていく。

ここ、本当に、何回観ても背中が熱くなります。大きな力で世界を救う話のまんなかに、おばあちゃんの電話がある。自分はこの映画を観るたびに、この場面で一度、座り直しています。

どんな映画か

数学が得意な、でも気の弱い高校二年生の健二が、あこがれの先輩の夏希に頼まれて、夏休みに長野の田舎へついていくところから始まります。行き先は、夏希の曾祖母の家。古くて大きな屋敷に、親戚が何十人も集まってくる。曾祖母・栄おばあちゃんの九十歳の誕生日を祝うためです。

健二が頼まれたのは、夏希の婚約者のふりをすること、でした。

同じころ、世界中の人が使っているネットの中の仮想の街で、ある乗っ取りをきっかけに、とんでもない騒ぎが始まります。その騒ぎに、健二と、陣内家の大家族が巻きこまれていく。

心が動いたところ

いちばん好きなのは、実は大事件の場面よりも、大家族の食卓の場面なんです。

長いテーブルに、おじさんやおばさんや、いとこや、その子どもたちがずらっと並んで、みんなが同時にしゃべっていて、誰が誰だかさっぱり分からない。健二は、その中にひとりで放りこまれて、おろおろしている。自分も最初に観たときは、健二と一緒に、名前を覚えるのをあきらめました。

でも、観ているうちに、ひとりずつの顔が分かってくるんです。すぐ怒るおじさん、ゲームが得意な無口な男の子、いつも台所に立っているおばさんたち。そして、そのまんなかに、栄おばあちゃんがいる。

この夏の途中で、陣内家はある大きな出来事に向き合うことになります。そこは書きません。ただ、そのあと、ばらばらだった親戚たちが、それぞれのやり方で、一つのことに向かっていく。そこからの流れが、最後の一周を走り切るみたいに熱くて、自分は画面の前で、たぶんずっと前のめりになっていました。

もうひとつ、どうしても書いておきたいのが、夏希の花札の場面なんです。細かいことは書きませんが、ある勝負の途中で、画面の向こうの、世界中の見知らぬ人たちが、少しずつ夏希の側に集まってくる。国も言葉もばらばらの人たちが、それぞれの小さな力を差し出していく。自分はここで、喉がつまって、気づいたら拳を握っていました。何回観ても、ここで同じように体が固くなるんです。

大家族の食卓と、世界中の見知らぬ人たち。大きさはまるで違うのに、この映画の中では、同じことをしているように見えます。困っている誰かのために、手元にあるものを差し出す。栄おばあちゃんの電話から始まったものが、最後には世界の大きさまで広がっていく。その広がり方が、自分にはとても気持ちよかったです。

懐かしさのこと

この映画を観ると、行ったこともない田舎の家が、懐かしくなります。縁側、広い座敷、夏の入道雲、朝顔、高校野球の中継が流れているテレビ。子どものころ、夏休みに親戚の家に行ったときの、あの騒がしさを思い出すんです。

そして、しばらく会っていない親戚や友だちに、電話をかけたくなる。自分は八月の会のあと、何年も連絡していなかった祖母の妹に電話をしました。元気だった。それだけで、なんだか夏が一つ終わった気がしました。

誰に浴びてほしいか

  • 夏休みに、親戚の家に集まった思い出がある人
  • 最近、家族や昔の知り合いと話していない人
  • 大勢の中にいると、自分の居場所がないように感じる人。健二もそうでした

いつ浴びるか

夏に。できれば、お盆の前後がいいと思います。それから、家族の誰かの誕生日の前の夜にも。観終わったら、ケーキより先に、電話を一本かけてみてください。

作品データ

項目 内容
作品名 サマーウォーズ
監督 細田守
脚本 奥寺佐渡子
制作 マッドハウス
公開 2009年8月
上映時間 約114分

近い気持ち

八月の感情浴会(第76回)で、自分が進行をした回の作品です。記録はタカノツメさんがまとめてくれました。会の最後に、それぞれが「夏休みの親戚の家の思い出」を一つずつ話したら、それだけで三十分が過ぎていました。

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