この気持ちについて
ときめきは、胸が小さく跳ねる一瞬のことです。目が合う、名前を呼ばれる、思っていたより近くに座っていた。そういう小さな出来事で心拍が上がる感覚は、日々の中ではなかなか訪れません。
感情浴の「ときめきたい」は、恋愛の物語に限りません。初めて訪れた街の路地、新しい道具を手にした朝、憧れの人の仕事ぶりを間近で見たとき。何かに心を惹かれて、少しだけ背筋が伸びる感覚全体を指しています。
とはいえ、この気持ちを最も確実に連れてくるのは、やはり誰かが誰かを好きになっていく過程を丁寧に描いた作品です。椎名軽穂の漫画『君に届け』は、気持ちを言葉にするまでの長い遠回りを、一歩ずつ見守らせてくれます。森見登美彦の小説『夜は短し歩けよ乙女』は、片思いの空回りを京都の夜の騒ぎに乗せて描き、ときめきと可笑しさが同時にやってきます。映画『ローマの休日』は、一日だけの出会いがどれほど人を変えるかを見せてくれる古典です。
ときめきの感情浴は、明るい時間帯に向いています。夜に浸かると、切なさのほうへ流れていきやすいからです。
ときめきたいときの作品
この気持ちで記録された8作品です。しずくの数は、心が動いた大きさの目安で、作品の出来を採点したものではありません。

放課後の居間に、クラスでいちばん目立たない子がいた HERO・萩原ダイスケ『ホリミヤ』
同じ巻を二回読んでた

朝のあいさつひとつ分の、長い遠回り 椎名軽穂『君に届け』
秋に読んでも桜色だった

朝の体育館って、こんなに光ってたっけ 『アオのハコ』
一話目を三回リピートした

雪の日の指先は、声より近い 森下suu『ゆびさきと恋々』
自分の指を見てしまう
木に引っかかった瞬間、勝負はついていた 『愛の不時着』
来週まで待てなかった

毒見役の子が、毒の話のときだけ目を輝かせる 『薬屋のひとりごと』第2期
通学の電車で三回くらい笑った

炊きたてのごはんのような主人公に、ほっぺたがゆるむ 高松美咲『スキップとローファー』
ほっぺたがゆるみました

洗濯物をたたみながら、にやけてしまうドラマ 『逃げるは恥だが役に立つ』
頬がずっとゆるんでた
近くにある気持ち
ときめきたい気持ちのとなりにある言葉です。少し違う角度から浸かりたいときに。