先週、試験の朝。駅まで自転車をこぎながら、イヤホンで一曲目を流していました。気づいたら、ペダルが曲の速さになってました。
四年前の夏
このアルバムを最初に聴いたのは、高校一年の夏です。
部活の友だちと、映画『ONE PIECE FILM RED』を観に行きました。四人で。正直、私はそのとき、ONE PIECEをそんなに知らなかったんです。友だちに誘われて、なんとなく。
映画の中心にいるのは、ウタという歌手の女の子です。世界中で大人気で、その子がはじめて、みんなの前でライブをする。その歌の声を担当しているのが、Adoさんでした。
映画館を出たあと、四人とも、しばらくあまり話しませんでした。帰りの電車で、誰かがスマホでアルバムを流しはじめて、片耳ずつイヤホンを分けて聴いた。それがこの一枚との出会いです。
七人が書いた七曲
アルバムには、映画の中でウタが歌う七曲が入っています。
あとで知って驚いたのは、七曲とも、書いた人がぜんぶ違うことです。一曲目の「新時代」は中田ヤスタカさん。二曲目の「私は最強」はMrs. GREEN APPLE。三曲目の「逆光」はVaundyさん。そのあとも、一曲ごとに別の人が書いている。
なのに、歌っているのは一人。
だから、一曲ごとに、声の色がぜんぜん違うんです。明るくて、まっすぐで、空に向かって伸びていく声もあれば、急に低くなって、怒っているみたいな声もある。同じ人の声なのに、気づいたら、何人もの人に会ったような気持ちになってました。
元気の出る順番
私がいちばん元気をもらうのは、最初の三曲です。
一曲目は、始まりの曲。イントロだけで、何か大きなことが始まる感じがする。映画のときは、ここで客席の空気が変わったのを覚えてます。
二曲目の「私は最強」は、試験の朝の曲です。私の中では。
歌詞の説明はしないけど、聴いていると、背中のまんなかに一本、まっすぐな棒が入るような感じがします。駅の階段をのぼるときに、ちょうどサビが来るように、家を出る時間を調整してます。ちょっと恥ずかしいけど、ほんとです。
三曲目で、熱くなる。速くて、強くて、聴き終わるころには、手のひらが少し熱いかも。
後ろの四曲
でも、このアルバムは、元気な曲だけじゃないんです。
真ん中あたりから、だんだん暗くて、不思議な曲になっていく。最後の二曲は、静かな曲です。ウタが、ほんとうに言いたかったことを、ひとりで歌っているような曲。
映画の話にはあまり触れないでおきます。ただ、最後の曲が終わると、私はいつも、あの夏の帰りの電車を思い出します。片耳ずつ分けたイヤホン。窓の外の夕方。四人とも、いまは別々の大学にいて、全員でそろうことは、もうあまりありません。
ちょっと会いたくなって、この前、グループに一曲目のリンクだけ送りました。すぐに三人から、スタンプが返ってきました。
浴びてほしい人
- 試験や発表の前に、背中を押してくれる一曲がほしい人
- 映画を観た人。もう一度アルバムで通すと、ウタの声が別の場所から聴こえます
- 昔、誰かと片耳ずつイヤホンを分けたことがある人
浴びる時間
移動中に。とくに朝の通学や通勤の電車、自転車。試験の前の日の夜は、最初の三曲で止めるのがおすすめです。最後まで聴くと、ちょっとしんみりして、勉強に戻れなくなるかも。
作品データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | ウタの歌 ONE PIECE FILM RED |
| 歌 | Ado |
| 発売 | 2022年8月 |
| 曲数 | 7曲(映画『ONE PIECE FILM RED』の主題歌と劇中歌) |
| 曲を書いた人 | 中田ヤスタカ、Mrs. GREEN APPLE、Vaundy、FAKE TYPE.、澤野弘之、折坂悠太、秦基博 |
近い気持ち
- 元気を出したい……試験の朝の、二曲目
- 熱くなりたい……三曲目で、手のひらが熱くなる
- 誰かに会いたくなりたい……片耳ずつ分けた、夏の帰りの電車
会では取り上げていません。栞さんに「一枚を通して聴くと、曲と曲のあいだに物語がある」と教わってから、シャッフルをやめて、最初から最後まで聴くようにしています。
