
雪の日の指先は、声より近い 森下suu『ゆびさきと恋々』
自分の指を見てしまう

迷宮の底で、土鍋の湯気を見ていた 九井諒子『ダンジョン飯』
夜中に土鍋を出した

野田サトル『ゴールデンカムイ』 雪の森から、とんとんと音がする
汁をすする音まで聞こえた

遅すぎるなんて、誰が決めたんだろう つるまいかだ『メダリスト』
見開きのたびに息を止めた

きらきらの裏側を、十六冊ぶん 赤坂アカ・横槍メンゴ『【推しの子】』
一巻で三回止まった

分かりあえないまま、同じ台所に立つ ヤマシタトモコ『違国日記』
分からないままで、いい

『マイ・ブロークン・マリコ』 骨箱を抱いて、夜行バスの窓側に
膝の上が重たかった

将棋のルールを知らないまま、五巻で本を伏せた 羽海野チカ『3月のライオン』
五巻で本を伏せた

片思いの置いていき方を、美大の片すみで知った 羽海野チカ『ハチミツとクローバー』
自転車のうしろ姿で、めくる手が止まった

『BLUE GIANT』の河原には、雪が降っていた
指が勝手に動いた

雨の田んぼ道で跳ねる、あのコマのこと 藤本タツキ『ルックバック』
見開きで本を閉じた

梅酒で酔った夜から、四人目の妹になる 吉田秋生『海街diary』
梅の実の色がしみた

真夜中の台所で、赤いウインナーをたこにした 安倍夜郎『深夜食堂』
零時すぎに油をひいた

硬度三半の主人公が、夜の見回りに会いにいく 市川春子『宝石の国』
指先が冷たくなった

最終巻が出る前の秋に 末次由紀『ちはやふる』
一つは十二月まで取っておく

卵ひとつの重さを、十五巻かけて量りなおす 荒川弘『銀の匙 Silver Spoon』
卵を割る前に手が止まった

炊きたてのごはんのような主人公に、ほっぺたがゆるむ 高松美咲『スキップとローファー』
ほっぺたがゆるみました

『きのう何食べた?』の台所には、段取りという名の気づかいがある
買い物袋を詰め直した

押し入れの段ボールから、ふたりのナナが出てきた 矢沢あい『NANA』
押し入れの前で座りこみました

明け方の渋谷が青く見えた日から 『ブルーピリオド』
背中が熱くなった

春が来る前に、泣く準備をしておく漫画 新川直司『四月は君の嘘』
最終巻は三回に分けて読んだ

碁のルールを知らないまま、白と黒の石に背中を熱くされた 『ヒカルの碁』
一局も分からないのに汗をかいた

段ボールのロボットに、大人まで振りまわされる 『よつばと!』
声を出して笑った