
負けた試合のほうを、何度も読み返してしまう 古舘春一『ハイキュー!!』
出張の帰りに四十五巻を読み終えた

包丁をにぎれない人と、にぎりかたを知らない人の台所 雨隠ギド『甘々と稲妻』
合いびき肉を買いに走った

放課後の居間に、クラスでいちばん目立たない子がいた HERO・萩原ダイスケ『ホリミヤ』
同じ巻を二回読んでた

豚肉いためと豚汁を、ひとりで頼んでしまう昼 久住昌之・谷口ジロー『孤独のグルメ』
お代わりの前で迷った

朝のあいさつひとつ分の、長い遠回り 椎名軽穂『君に届け』
秋に読んでも桜色だった

雪の日の指先は、声より近い 森下suu『ゆびさきと恋々』
自分の指を見てしまう

迷宮の底で、土鍋の湯気を見ていた 九井諒子『ダンジョン飯』
夜中に土鍋を出した

野田サトル『ゴールデンカムイ』 雪の森から、とんとんと音がする
汁をすする音まで聞こえた

遅すぎるなんて、誰が決めたんだろう つるまいかだ『メダリスト』
見開きのたびに息を止めた

きらきらの裏側を、十六冊ぶん 赤坂アカ・横槍メンゴ『【推しの子】』
一巻で三回止まった

分かりあえないまま、同じ台所に立つ ヤマシタトモコ『違国日記』
分からないままで、いい

『マイ・ブロークン・マリコ』 骨箱を抱いて、夜行バスの窓側に
膝の上が重たかった

将棋のルールを知らないまま、五巻で本を伏せた 羽海野チカ『3月のライオン』
五巻で本を伏せた

片思いの置いていき方を、美大の片すみで知った 羽海野チカ『ハチミツとクローバー』
自転車のうしろ姿で、めくる手が止まった

『BLUE GIANT』の河原には、雪が降っていた
指が勝手に動いた

雨の田んぼ道で跳ねる、あのコマのこと 藤本タツキ『ルックバック』
見開きで本を閉じた

梅酒で酔った夜から、四人目の妹になる 吉田秋生『海街diary』
梅の実の色がしみた

真夜中の台所で、赤いウインナーをたこにした 安倍夜郎『深夜食堂』
零時すぎに油をひいた

硬度三半の主人公が、夜の見回りに会いにいく 市川春子『宝石の国』
指先が冷たくなった

最終巻が出る前の秋に 末次由紀『ちはやふる』
一つは十二月まで取っておく

卵ひとつの重さを、十五巻かけて量りなおす 荒川弘『銀の匙 Silver Spoon』
卵を割る前に手が止まった

炊きたてのごはんのような主人公に、ほっぺたがゆるむ 高松美咲『スキップとローファー』
ほっぺたがゆるみました

『きのう何食べた?』の台所には、段取りという名の気づかいがある
買い物袋を詰め直した

押し入れの段ボールから、ふたりのナナが出てきた 矢沢あい『NANA』
押し入れの前で座りこみました