ラルム / 作品の記録

2025.04.27媒体 漫画記録 いちょう

きらきらの裏側を、十六冊ぶん 赤坂アカ・横槍メンゴ『【推しの子】』

一巻で三回止まった
『【推しの子】』の表紙
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高校二年の春、塾の帰りの電車で、アニメの一話目を観ました。

一話目なのに、九十分くらいありました。降りる駅に着いても終わらなくて、ホームのベンチで最後まで観ました。そのあと、主題歌を気づいたら三日くらいリピートしてました。

それから二年。大学に入る前の春休みに、漫画を一巻から最終巻まで、まとめて読みました。去年の暮れに最終巻が出ていたので、今なら最後まで読める、と思って。

一巻の終わりまで

主人公のゴローは、地方の病院で働く産婦人科のお医者さんです。アイドルの星野アイのファン。

ある日、そのアイが、患者として病院に来ます。十六歳で、双子を妊娠している。誰にも言えない秘密です。

そこからいろいろあって、ゴローは、アイの子どもとして生まれ変わります。双子の兄、アクアとして。妹のルビーにも、ある秘密があります。

ここまで書くと、ちょっと変わった設定の話に聞こえるかも。私も最初はそう思ってました。でも一巻は、アイという人の話なんです。ステージの上ではずっと笑っていて、うそをつくのがとても上手な人。その人が、双子の前でだけ見せる顔があります。

一巻の最後に起きることは、ここには書きません。アニメで知っていたのに、漫画で読んでも、同じページで手が止まりました。一巻だけで、三回止まりました。

十六巻まで読んで

二巻からは、成長したアクアとルビーが、芸能界に入っていく話です。ドラマの撮影、恋愛のリアリティ番組、舞台、アイドルグループ。章ごとに、別の仕事の裏側が出てきます。

私がいちばん長く止まったのは、リアリティ番組の章でした。出演している女の子が、放送のあと、ネットの言葉にどんどん追いつめられていく。

私は、配信やネットで話題になりはじめた作品を見つけるのが好きです。ネットがなかったら、たぶん出会えなかった作品がたくさんあります。でも、同じ場所で、こういうことも起きている。それを、ちゃんと怖く描いていました。読んだ夜は、しばらくスマホを伏せて置いてました。

私がいちばん好きになったのは、有馬かなという女の子でした。小さいころ、子役としてものすごく売れていて、今はあまり仕事がない。口が悪くて、強がってばかり。でも、誰よりも現場のことを考えている。アクアとのやりとりは、読んでいてずっとはらはらしました。気づいたら、この子の出てくるページばかり読み返してました。

舞台の章は、逆に、元気が出ました。アイドルの章では、ルビーがステージに立ちます。お母さんと同じ場所に立とうとする女の子。コマの中のライトがまぶしくて、春休みの朝の光みたいでした。役者さんたちが、ひとつの場面をどう演じるかで本気でぶつかっていて、夜中に布団の中で読みながら、ちょっと泣きそうでした。

後半は、一巻の最後の出来事に、話がまたつながっていきます。最後の数巻は、読みながら何度も手が止まりました。どう終わるかは書きません。読み終えて、私はすぐにはうまく言葉にできませんでした。好きなところも、まだ考えているところも、両方あります。たぶん、それでいいのかも。

二票のこと

今月から、一滴舎に入りました。最初の会で、みなさんの話を聞くだけで精一杯でした。

そのあと、これまでのしずく大賞の選評を、一年ずつ読んでいきました。そしたら、二年前のアニメ部門で、この作品が次点に入っていました。二票。

大賞は『葬送のフリーレン』。私もあの年、一話目で泣いたので、それは分かります。でも、二票入っていたのが、なんだかうれしかったです。高校生の私が電車で観ていたころ、画面の向こうでも、誰かがこの作品に票を入れようとしてたんだ、と思って。誰が入れたのかは、まだ聞けていません。

アニメから入った人には、漫画の一巻をもう一度読んでほしいです。アイの顔が、コマで見るとまた違って見えます。ネットで少し疲れた日の帰り道にもいいかも。ただ、明るい話ではないので、元気がない日は、舞台の章まで待ってください。

項目 内容
作品名 【推しの子】
原作・作画 赤坂アカ(原作)・横槍メンゴ(作画)
連載 集英社「週刊ヤングジャンプ」(2020年〜2024年)
巻数 全16巻
アニメ 2023年4月からテレビアニメが放送
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