
八十分ごとの、はじめまして 小川洋子『博士の愛した数式』
ほうじ茶が、冷めるまで閉じられなかった

「わかる」と言えなくなる本 朝井リョウ『正欲』
揺れるより先に、黙った

語り手の声が、ずっと少しだけ笑っている 宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』
声に出して読みたくなった

四十年ぶんの、水車の音 津村記久子『水車小屋のネネ』
閉じたあと、しばらく膝に置いていた

地下の方舟で、誰を残すのか 夕木春央『方舟』
閉じてから寒気が来た

頁の上で、ピアノが鳴っていました 恩田陸『蜜蜂と遠雷』
頁をめくる指がふるえた

たった一行で、島の見取り図が書き換わる 綾辻行人『十角館の殺人』
最初の頁に戻った

六つの部屋の見取り図は、なぜ最後に描き変わるのか 一穂ミチ『スモールワールズ』
表紙をもう一度見た

「普通」の見取り図は、誰が描いたのか 村田沙耶香『コンビニ人間』
読み終えてからずっと考えている

『夏の庭 The Friends』 見張るはずだった夏が、通う夏に変わる
しばらく動けなかった