この気持ちについて
ひとりを味わいたいという気持ちは、寂しさとは別のものです。人といる時間が嫌なわけではない。けれど、誰にも合わせず、誰の顔色もうかがわず、自分の速さで過ごす時間がどうしても必要になることがあります。
この気持ちの感情浴では、ひとりで過ごす人の姿を、好ましいものとして眺めます。ひとりで歩き、ひとりで食べ、ひとりで考える人物が、寂しそうではなく満ち足りて見える。そういう作品に触れていると、自分のひとりの時間にも同じ豊かさがあると気づけます。
谷口ジローの漫画『歩くひと』は、郊外に越してきた男性が近所を歩くだけの話がほとんど言葉なしで続き、ひとりの散歩の楽しさがそのまま伝わってきます。ソローの『森の生活』は、森の小屋での暮らしを通して、ひとりでいることと考えることの関係を語る古典です。ゲーム『風ノ旅ビト』は、広い砂漠をひとり歩く旅の中に、ときおり誰かの気配が混じる作品で、ひとりの時間の輪郭をかえってはっきりさせます。
ひとりの感情浴は、終わったあとの過ごし方も含めて楽しんでください。すぐに誰かと話さず、しばらくその余韻の中にいるのも味わいのうちです。
ひとりを味わいたいときの作品
この気持ちで記録された10作品です。しずくの数は、心が動いた大きさの目安で、作品の出来を採点したものではありません。
名前も知らない誰かと、山を目指した二時間 『風ノ旅ビト』
コントローラーを置いた

分かりあえないまま、同じ台所に立つ ヤマシタトモコ『違国日記』
分からないままで、いい

同じ朝は、一度も来なかった ヴィム・ヴェンダース監督『PERFECT DAYS』
翌朝、空を見上げた

落ちている時間が、いちばん長かった 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』
着地まで息を止めていた

真夜中の台所で、赤いウインナーをたこにした 安倍夜郎『深夜食堂』
零時すぎに油をひいた

窓の外を見ている人の、窓のこと 星野源『いのちの車窓から』
窓の外を見たくなった

走らない人が読んでも、夜道が少し長くなる 村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』
散歩の道が少し伸びた

「普通」の見取り図は、誰が描いたのか 村田沙耶香『コンビニ人間』
読み終えてからずっと考えている

「わかる」と言えなくなる本 朝井リョウ『正欲』
揺れるより先に、黙った

湖のほとりで、二人でカップ麺をすする夜 『ゆるキャン△』
肩がすとんと下がった
この気持ちになれる場面
ひとりを味わいたい作品が、どんな時によく浸かられているか。場面ごとに、作品と特集を束ねています。
この気持ちの特集
メンバーが作品を持ち寄った特集です。
近くにある気持ち
ひとりを味わいたい気持ちのとなりにある言葉です。少し違う角度から浸かりたいときに。