去年の春、大学に向かう電車の中で、イヤホンをして一話目を観ていました。気づいたら、降りる駅を一つ過ぎていました。
それくらい、朝の体育館の光がきれいだったんです。
どんな話
主人公の猪股大喜は、高校一年生。バドミントン部です。毎朝、誰よりも早く体育館に来て練習している。
でも、実はもう一人、もっと早く来ている人がいる。女子バスケ部の、ひとつ上の先輩、鹿野千夏。大喜は、その先輩にずっと片思いをしています。
朝の体育館で、ネットをはさんだ向こうとこっち。ボールの音と、シャトルの音。二人は同じ時間に、別々の練習をしている。話すことは少ない。それだけ。
……と思っていたら、ある事情で、先輩が大喜の家で暮らすことになります。
心が動いたところ
いちばんときめいたのは、朝の体育館の場面でした。
窓から入る光が、床に長く伸びている。先輩がシュートを打つ。大喜がちらっと見る。見ていることを気づかれないように、すぐ目をそらす。
それだけなんです。それだけなのに、何回観ても、胸がきゅっとなる。私は一話目のその場面だけ、気づいたら三回リピートしてました。
アニメの光の描き方が、とにかく好きでした。朝の光、放課後の夕日、夏の日差し。季節が進むごとに、体育館の窓の色が変わっていく。通学の電車の窓から見える景色と、少し似てるかも、と思いました。
二人の距離は、ほんとうにゆっくり近づきます。同じ家にいるのに、話せない日もある。話せたと思ったら、すれ違う日もある。じれったいです。でも、そのじれったさが、観ていてうれしい。
それから、放課後。部活が終わって、暗くなった帰り道を、二人が少しだけ一緒に歩く回があります。コンビニの前の明かり、自転車の音、白い息。会話はほんの少しなのに、観ている私のほうが、なぜか緊張していました。家に帰ればまた同じ屋根の下なのに、帰り道の数分だけは、特別な時間になっている。その感じ、分かるかも、と思いました。
恋だけじゃない
この作品のいいところは、恋の話だけじゃないところです。
大喜も先輩も、それぞれの部活で、本気で上を目指している。大喜は、先輩に追いつきたくて練習する。先輩は、先輩で、自分の目標のために毎朝体育館に来ている。
好きな人のためにがんばる、じゃなくて、好きな人の隣に立てる自分になりたくてがんばる。そういう感じ。観てるこっちまで、何かがんばりたくなります。
それから、大喜の幼なじみの雛ちゃん。新体操部で、明るくて、まっすぐで、でもいろいろ抱えている子です。彼女のことも、すごく好きになりました。誰か一人だけを応援できなくなるのが、この作品のずるいところかも。
誰に
- 部活を引退して、しばらくたった人。あの朝の空気を思い出せます
- 恋愛ものは照れくさいけど、青春ものは好きな人
- 新しい生活が始まって、ちょっと疲れてきた人
いつ
春に。新しい学校や新しい職場に通いはじめたころ、通学や通勤の電車で一話ずつ。朝に観ると、その日一日、ちょっとだけ背すじが伸びます。
それから、会いたい友だちがいるとき。観終わったあと、高校の部活の仲間に、ひさしぶりに連絡しちゃいました。
作品データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | アオのハコ(テレビアニメ) |
| 原作 | 三浦糀の漫画(週刊少年ジャンプで2021年から連載) |
| 放送 | 2024年10月〜2025年3月 |
近い気持ち
- ときめきたい……朝の体育館で、目をそらす一瞬
- 元気を出したい……隣に立てる自分になりたい
- 誰かに会いたくなりたい……部活の仲間に連絡したくなる
四月の感情浴会(第72回)で、私が初めて進行をした回の作品です。記録は草餅さんがまとめてくれました。好きな場面を一つずつ言う時間で、みんなが「朝の体育館」と言いかけて、あとの人が言いにくそうにしてたのがおかしかったです。
