上の子の入学の準備で、鉛筆一本一本に名前のシールを貼りながら、『silent』を第1話から観直していました。
四月から小学生です。名前を書くものが、こんなにあるなんて知りませんでした。で、シールを貼る手がいちいち止まるんですよね。画面の中で、別の手が、ずっと言葉を話しているから。
どんな話か
高校のときに付き合っていた紬と想が、八年ぶりに再会する話です。想くんは、そのあいだに耳が聞こえなくなっていた。紬は、ある日急に連絡が途絶えた理由を知らないまま、大人になっていました。そして紬の隣には、今は湊斗くんという恋人がいる。想くんの高校時代の友だちでもある人です。
暮れの大賞で、はるまきはこのドラマの選評を書きました。放送のときは毎週木曜、子どもを寝かしつけてから観ていて、第1話の再会の場面で、洗濯ばさみを持ったまま固まっちゃった話は、そこに書いたとおりです。
今回、観直して、いちばん長く止まったのは、紬が手話を習いはじめるところでした。
覚えたての手
大人になってから、新しい言葉を覚えるのって、大変なんですよね。紬は、想くんと話したくて手話の教室に通いはじめます。まだ上手じゃないから、手の形を一つずつ確かめるように動かす。間違えて、笑って、やり直す。
いや、ほんとに、その手つきが、上の子がひらがなを練習しているときの鉛筆の持ち方とそっくりで。はるまきはそこで一回、巻き戻しました。上手に話せるようになることより、話したい相手がいることのほうが先にある。言葉って、本当はそういう順番なんだなって。
想くんのほうも、声で話すことを、ほとんどしなくなっています。できないわけじゃないのに、しない。その理由は、ドラマの中で少しずつ分かっていきます。ここは、観る人それぞれに受け取ってほしいので書きません。
それから、湊斗くん。誰も悪くないのに、誰かが一歩引かなきゃいけない。大賞の選評にもそう書いたんですけど、観直すと、湊斗くんの一歩の引き方が、最初に観たときよりずっと丁寧に見えました。鍋を火から下ろすタイミングみたいに、早すぎても遅すぎてもだめなところで、ちゃんと下ろしている。はるまきは、今回はこの人のところで泣きました。
観直していて、もう一つ気づいたことがあります。このドラマは、ものすごく静かな場面が多いのに、観終わったあと、家の中の音がやけに大きく聞こえるんです。冷蔵庫のうなる音、子どもの寝返り、洗濯機の最後のすすぎ。ふだんは聞き流している音を、ひとつずつ拾ってしまう。はるまきは、その夜なかなか寝つけませんでした。
今月の会の前に
実は先週、『コーダ あいのうた』の記録を書いたばかりです。あちらも、聞こえない家族と、聞こえる娘の話でした。続けて観ると、音がない場面の作り方が、映画とドラマでまったく違うのが分かっておもしろかったです。
それで、観終わってから、子どもの名前を指文字で練習してみました。三回やって、三回とも途中の形を忘れました。紬の手つきのほうが、ずっと上手でした。
今月の会は、はるまきが進行で、このドラマを取り上げます。当日は第1話をみんなで同時に再生する予定です。洗濯ばさみは、手の届かないところに置いておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | silent(テレビドラマ) |
| 脚本 | 生方美久 |
| 出演 | 川口春奈、目黒蓮、鈴鹿央士 |
| 放送 | 2022年10月〜12月(フジテレビ系・木曜の夜) |
| 話数 | 全11話 |
| 主題歌 | Official髭男dism「Subtitle」 |
