ラルム / 作品の記録

2022.08.07媒体 絵本記録 めじろ

読み聞かせの途中で、声がつまってしまった絵本 『ないた赤おに』

読む声がつまった
『ないた赤おに』の表紙
Amazon で見る

寝る前に、これ読んで、と持ってこられたのは、その週で三回目でした。

一回目と二回目は、なんとか最後まで読めたんです。三回目、あたしは最後の見開きのところで、声が出なくなりました。子どもは、ふしぎそうな顔であたしを見ていました。

どんなお話か

山の中に、ひとりの赤おにが住んでいます。

赤おには、人間と仲よくなりたいと思っています。だから家の前に、だれでも遊びにきてほしい、お茶もお菓子も用意して待っている、という意味の立て札を立てる。でも村の人たちは、おにの家なんてこわい、とだれも近づいてきません。

がっかりする赤おにのところへ、友だちの青おにがやってきて、ある方法を持ちかけます。自分が村で暴れるから、きみがそれをこらしめればいい。そうすれば、人間たちはきみを信じてくれる、と。

赤おには、ためらいながらも、その方法を受けいれます。

やわらかい絵のこと

あたしが読んだのは、いもとようこさんが絵を描いた本です。

いもとさんの絵は、毛布のようにやわらかい色をしています。赤おにの赤も、こわい赤ではなくて、ほっぺたが赤くなったときのような、あたたかい赤。青おにの青も、夜の空のように、しずかな青です。

おにが出てくるお話なのに、子どもはこの絵をまったくこわがりませんでした。赤おにが立て札を立てる場面では、うちの子も、いっしょになって、村の人たちに来てほしいと願っていたみたいです。ページをめくる手が、自然とゆっくりになりました。

結末に触れます

ここから先は、お話の最後に触れます。知らずに読みたい人は、次の「誰に」まで飛ばしてください。

村の人たちと仲よくなれた赤おには、しばらくして、青おにが遊びにこないことに気づきます。青おにの家をたずねると、戸は閉まっていて、そこには一枚の手紙がはりつけてある。

手紙に何が書いてあったのか、あたしの言葉で書くと、青おにの気持ちは、自分がいると赤おにがまた疑われてしまうから、遠くへ行く、というものでした。そして最後まで、赤おにのことを、友だちとして思っていた。

赤おには、その手紙を何度も読んで、泣きます。

あたしが声をつまらせたのは、ここでした。大人になってから読むと、青おにのしたことは、やさしいだけじゃないんだなあ、とわかるんです。自分がいなくなることでしか守れないものがある。そう決めた人の、ひとりで歩いていく背中が、見えるような気がしました。

子どもは、どうして赤おにが泣いているのか、まだぜんぶはわかっていないようでした。でも、あたしが泣いているのを見て、背中をとんとんしてくれました。

誰に

  • 大切な友だちと、はなれて暮らしている人
  • だれかのために、自分から身を引いたことのある人
  • 子どもに読んであげたい人。ただ、読み聞かせのときは、最後のページで声がつまる覚悟をしておいてください

いつ

寝る前の、部屋の明かりを落とした時間に。子どもといっしょでも、ひとりでも。

ひとりで読むなら、週末の夜がいいと思います。読み終えたら、しばらく会っていない友だちに、何か送りたくなるかもしれません。

作品データ

項目 内容
作品名 ないた赤おに
作 浜田廣介
絵 いもとようこ
媒体 絵本
発表 2005年(金の星社)
そのほか もとのお話は、昭和のはじめに書かれた童話です。ほかの絵の本もあります

近い気持ち

六月の感情浴会(第26回)で、あたしの進行で取り上げました。記録は栞です。会でも、何人かが、最後のところは声に出して読めない、と言っていました。

(記録:めじろ)

作品の記録に戻る