寝る前に、これ読んで、と持ってこられたのは、その週で三回目でした。
一回目と二回目は、なんとか最後まで読めたんです。三回目、あたしは最後の見開きのところで、声が出なくなりました。子どもは、ふしぎそうな顔であたしを見ていました。
どんなお話か
山の中に、ひとりの赤おにが住んでいます。
赤おには、人間と仲よくなりたいと思っています。だから家の前に、だれでも遊びにきてほしい、お茶もお菓子も用意して待っている、という意味の立て札を立てる。でも村の人たちは、おにの家なんてこわい、とだれも近づいてきません。
がっかりする赤おにのところへ、友だちの青おにがやってきて、ある方法を持ちかけます。自分が村で暴れるから、きみがそれをこらしめればいい。そうすれば、人間たちはきみを信じてくれる、と。
赤おには、ためらいながらも、その方法を受けいれます。
やわらかい絵のこと
あたしが読んだのは、いもとようこさんが絵を描いた本です。
いもとさんの絵は、毛布のようにやわらかい色をしています。赤おにの赤も、こわい赤ではなくて、ほっぺたが赤くなったときのような、あたたかい赤。青おにの青も、夜の空のように、しずかな青です。
おにが出てくるお話なのに、子どもはこの絵をまったくこわがりませんでした。赤おにが立て札を立てる場面では、うちの子も、いっしょになって、村の人たちに来てほしいと願っていたみたいです。ページをめくる手が、自然とゆっくりになりました。
結末に触れます
ここから先は、お話の最後に触れます。知らずに読みたい人は、次の「誰に」まで飛ばしてください。
村の人たちと仲よくなれた赤おには、しばらくして、青おにが遊びにこないことに気づきます。青おにの家をたずねると、戸は閉まっていて、そこには一枚の手紙がはりつけてある。
手紙に何が書いてあったのか、あたしの言葉で書くと、青おにの気持ちは、自分がいると赤おにがまた疑われてしまうから、遠くへ行く、というものでした。そして最後まで、赤おにのことを、友だちとして思っていた。
赤おには、その手紙を何度も読んで、泣きます。
あたしが声をつまらせたのは、ここでした。大人になってから読むと、青おにのしたことは、やさしいだけじゃないんだなあ、とわかるんです。自分がいなくなることでしか守れないものがある。そう決めた人の、ひとりで歩いていく背中が、見えるような気がしました。
子どもは、どうして赤おにが泣いているのか、まだぜんぶはわかっていないようでした。でも、あたしが泣いているのを見て、背中をとんとんしてくれました。
誰に
- 大切な友だちと、はなれて暮らしている人
- だれかのために、自分から身を引いたことのある人
- 子どもに読んであげたい人。ただ、読み聞かせのときは、最後のページで声がつまる覚悟をしておいてください
いつ
寝る前の、部屋の明かりを落とした時間に。子どもといっしょでも、ひとりでも。
ひとりで読むなら、週末の夜がいいと思います。読み終えたら、しばらく会っていない友だちに、何か送りたくなるかもしれません。
作品データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | ないた赤おに |
| 作 | 浜田廣介 |
| 絵 | いもとようこ |
| 媒体 | 絵本 |
| 発表 | 2005年(金の星社) |
| そのほか | もとのお話は、昭和のはじめに書かれた童話です。ほかの絵の本もあります |
近い気持ち
六月の感情浴会(第26回)で、あたしの進行で取り上げました。記録は栞です。会でも、何人かが、最後のところは声に出して読めない、と言っていました。
(記録:めじろ)
