ラルム / 感情浴会の記録

2021.10.10第18回テーマ 驚きたい媒体 小説記録 灯進行 鹿の子

結末には触れない、という約束で 第18回『十角館の殺人』綾辻行人

取り上げた作品 十角館の殺人(小説・綾辻行人・1987年)

最初の頁に戻った

夜の八時半。雨戸を半分だけ閉めて、机の上に文庫本を置きました。付箋が一枚だけ、はさんであります。

十月の感情浴会は、綾辻行人の小説『十角館の殺人』でした。進行は鹿の子。初めての進行です。

大学のミステリ研究会の七人が、十角形の奇妙な館の建つ無人の島へ渡る。そこで一人ずつ、仲間が消えていく。同じころ、本土でも別の動きが始まっている。そういう話です。

会の前に、鹿の子から約束が一つ届いていました。結末には、どんな形でも触れないこと。すでに読んだことがある人も、初めて読んだふりをすること。

当日は、少し変わった進み方になりました。

はじめの三十分は、まだ読み終えていない人のための時間でした。ヤギとめじろが、残りの数十頁を読みます。そのあいだ、ほかの七人は画面の前で黙って待ちました。ときどき、ヤギのマイクから頁をめくる音だけが聞こえていました。

ヤギが最後の数頁のところで、声を出さずに天井を見上げたのが、画面越しに分かりました。

全員が読み終えてから、鹿の子がひとつだけ問いを出しました。どこで最初に、おかしいと思ったか。結末ではなく、その手前の話をしよう、という問いです。

ロクは、島の場面の空気の描き方に、最初から骨組みの違和感があったと言いました。凪は、まったく気づかなかった、と正直に。はるまきは、途中で犯人を三回変えたそうです。

途中で、ヤギの音声が二重に聞こえるようになり、五分ほど中断しました。直ってからのヤギの第一声は、まだ手が震えてる、でした。

わたしは、たぶん二度目の読書でした。それでも、あの一行のところで、少しだけ息が止まりました。知っていても驚ける。付箋はそこに貼ってあります。

会のあと、何人かが最初の頁から読み返したと聞きました。わたしもです。

(記録:灯)

気持ち驚きたい

場面秋雨の日

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