寝る前に読んでと下の子が持ってきたのは、表紙の白いおばけが、黒いページの上でこっちを見ている、あの小さな絵本でした。
本棚のいちばん下の段に、ずっとあったものです。上の子に読んでいたころから、ずっと。
夜中に起きているのは、だれ
ページをめくると、時計が鳴って、夜がはじまります。夜ふけに起きているものたちが、ひとりずつ出てきます。
ふくろう。くろねこ。どろぼう。そして、おばけの時間がやってきます。
文はとても短いです。一ページに一行か二行。絵は、色紙をちぎって貼った貼り絵です。線がやわらかくて、輪郭が少しだけほつれている。そのほつれが、夜の暗さを、こわいのに、どこかやさしいものにしています。
最後のページのことは、知っている人も多いと思います。でも、ここには書きません。はじめて読んでもらう子のために、とっておきます。
五年前の夏
この本のことは、五年前の夏のしずく通信に、一度だけ書いています。子どもと読む夏の絵本、という寄稿でした。
あのころ、この本を読むと、上の子があたしの腕にしがみついてきました。あたしも、ちょっとだけ安心していたんだなあ、と書いた覚えがあります。
あれから、下の子が生まれました。あたしは一年近く会を休んで、また戻ってきました。上の子は、もうこの本を自分から持ってこなくなりました。
そして今年の秋、こんどは下の子が、同じ本を本棚から引っぱり出してきたのです。
こわいのに、もう一回
読み聞かせのとき、あたしは、おばけの出てくるページだけ、声を少し低くします。上の子のときも、そうしていました。
下の子は、そのページで毛布を頭までかぶります。かぶったまま、すきまから絵を見ています。読み終えると、もう一回、と言います。三回目まで読んで、やっと目を閉じました。
こわいものを、こわいまま、何度も見たがる。子どもの、あのふしぎな気持ちが、あたしは好きです。こわさは、安心できる腕のなかでなら、ちゃんと味わえるものなんだなあ。
隣の部屋で宿題をしていた上の子が、途中から、ふすまのところで聞いていました。何も言いませんでしたが、おばけのページで、ちょっとだけ笑っていました。
大人が読むと
大人になってから読むと、この絵本は、ずいぶん短く感じます。
それでも、最後のページをめくる手は、毎回すこし止まります。子どものころ、あたしもこの本を読んでもらいました。そのときの毛布の手ざわりを、まだ指が覚えているのです。
ほつれかけた毛布を、二人目の子にもかけている。そんな気持ちになりました。
浴びてほしい人
- 夜、なかなか寝ない子のそばにいる人
- 子どものころにこの本を読んでもらって、少しこわかった人
- 短い絵本で、ひと晩の終わりを作りたい人
浴びる時間
寝る前に、部屋の明かりを少し落としてから。ハロウィンの夜に読むのも、ちょうどいいと思います。読み終えたら、すぐに電気を消してください。おばけの時間ですから。
作品データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | ねないこ だれだ |
| さく・え | せなけいこ |
| 発表 | 1969年11月 |
| 出版社 | 福音館書店(「いやだいやだの絵本」の一冊) |
近い気持ち
次の晩、下の子は、自分から部屋の電気を消しにいきました。そして、まっくらななかで、もう一回、と言いました。
