ラルム / 感情浴会の記録

2025.05.25第61回テーマ 考え込みたい媒体 小説記録 オト進行 灯

第61回 夜明け前まで考えていた 『正欲』

取り上げた作品 正欲(小説・朝井リョウ・2021年)

眠れなかった

夜勤明け、始発を待つホームで最後の章を読んだ。
点滅する信号。まだ暗い空。

今月の進行は灯。
朝井リョウの小説『正欲』。

人には言えない種類のこだわりを抱えて、ひっそり生きている人たちがいる。
その一方に、多様性という言葉を正しいものとして疑わない人たちがいる。
両方が、ひとつの出来事に向かって少しずつ近づいていく話。

灯は、少しだけ、と言ってから、長く黙った。
読み終えて、自分の言う「分かる」がどこまで本当なのか、分からなくなった、と。

ロク。
検事の章がいちばん怖かった。
自分は正しい側にいると思っている人間の話だから、と。

いちょう。
友だちに勧めるかどうか、まだ決められない。
勧めたら、自分が何を考えているかまで伝わってしまいそうで。

こはぜは、登場人物たちが自分に向けてつぶやくような場面の声を、耳の奥で何度も聞き直していたらしい。

凪は、途中で一度、本を置いた。
誰かを分かったつもりでいた自分のことを思い出して、しばらく続きが読めなかった、と。

はるまきは、子どもにどう話すかを考えながら読んでいた。
まだ答えは出ていない。

この回は、答えの出ない話ばかりだった。
それでいい回だった。

一年ぶりの記録。
帰り道の街灯みたいに、言葉がぽつぽつ出て、消えた。
そのまま書いた。

次回、六月。
ぬかの進行で、エッセイ。
テーマは「遠くへ行きたい」。

(記録:オト)

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