夜勤明け、始発を待つホームで最後の章を読んだ。
点滅する信号。まだ暗い空。
今月の進行は灯。
朝井リョウの小説『正欲』。
人には言えない種類のこだわりを抱えて、ひっそり生きている人たちがいる。
その一方に、多様性という言葉を正しいものとして疑わない人たちがいる。
両方が、ひとつの出来事に向かって少しずつ近づいていく話。
灯は、少しだけ、と言ってから、長く黙った。
読み終えて、自分の言う「分かる」がどこまで本当なのか、分からなくなった、と。
ロク。
検事の章がいちばん怖かった。
自分は正しい側にいると思っている人間の話だから、と。
いちょう。
友だちに勧めるかどうか、まだ決められない。
勧めたら、自分が何を考えているかまで伝わってしまいそうで。
こはぜは、登場人物たちが自分に向けてつぶやくような場面の声を、耳の奥で何度も聞き直していたらしい。
凪は、途中で一度、本を置いた。
誰かを分かったつもりでいた自分のことを思い出して、しばらく続きが読めなかった、と。
はるまきは、子どもにどう話すかを考えながら読んでいた。
まだ答えは出ていない。
この回は、答えの出ない話ばかりだった。
それでいい回だった。
一年ぶりの記録。
帰り道の街灯みたいに、言葉がぽつぽつ出て、消えた。
そのまま書いた。
次回、六月。
ぬかの進行で、エッセイ。
テーマは「遠くへ行きたい」。
(記録:オト)