ラルム / 感情浴会の記録

2024.04.20第48回テーマ 背中を押されたい媒体 小説記録 ぬか進行 灯

『成瀬は天下を取りにいく』と、デパートの地下の匂い(第48回)

取り上げた作品 成瀬は天下を取りにいく(小説・宮島未奈・2023年)

背すじが伸びた

読み終えて真っ先に欲しくなったのは、デパートの地下で売っている、揚げたてのコロッケでありました。

閉店を控えたデパートの話を読むと、わたくしはどうしても地下の食料品売り場の匂いを思い出してしまうのです。今月の本は、宮島未奈の『成瀬は天下を取りにいく』。滋賀県大津市に住む中学二年生の成瀬あかりが、地元のデパートが閉店するまで毎日そこへ通い、テレビの中継に映り込むと決める。そんな夏から始まる連作です。

進行の灯がこの本を選んだ理由は、背中を押す人の話ではなく、押される必要のない人の話を読みたかったから、というものでした。成瀬は誰にも背中を押されません。自分で決めて、自分で歩いていきます。

最初の二章で語り手を務めるのは、幼なじみの島崎です。成瀬の突拍子もない挑戦に振り回されながら、いつのまにか一緒に漫才の舞台に立っていたりします。

わたくしがひとくち目で心をつかまれたのは、高校の入学式に、成瀬が髪をすっかり剃って現れるところでした。髪がどのくらい伸びるのかを、卒業まで確かめるのだそうです。発酵を見守るような気の長さに、すっかりうれしくなりました。

凪は、島崎の側に寄って読んでいました。すごい友だちのそばにいる人の、少しのさびしさと、同じくらいの誇らしさ。ヤギは、成瀬が失敗しても計画を取り下げないところに、ゲームのやり直しに似たものを感じたと言っていました。草餅は、一度本を閉じた場面がある、とだけ言って、どこかは教えてくれませんでした。

灯は最後に、少しだけ、と前置きしてから、今年は自分も何かひとつ、毎日続けることを決めてみます、と話していました。何を続けるのかは秘密だそうです。

会のあとで

今月から、しばらく会を休むメンバーがひとりいます。画面の並びがひとつ減ったのは少しさびしいのですが、ぬか床と同じで、寝かせておく時間も大事なのだと思います。戻ってくる日まで、席は空けておきます。

次回は五月。ロクの進行で、映画を取り上げます。

(記録:ぬか)

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