夜の九時。部屋の明かりをひとつだけ残して、ほうじ茶をいれました。窓の外は、少しだけ雨でした。
十月のみんなで観る会は、初めての音楽の回です。観る会なのに、今回は何も観ません。進行の栞が選んだのは、藤井風のアルバム『HELP EVER HURT NEVER』。今年の五月に出た、一枚目のアルバムです。
やり方
栞からのお願いは一つでした。一曲目から最後まで、曲順のまま、飛ばさずに聴くこと。それぞれの部屋で同時に再生して、聴いている間はマイクを切ります。
この回から鹿の子が加わりました。最初の会が音楽の回で、少し戸惑っていたかもしれません。
話したこと
はじめの数曲は、にぎやかでした。凪は、体が勝手に揺れていた、と言いました。
アルバムの後ろのほうで、空気が変わります。ロクはそこで、要するにこの一枚は前半と後半で別の建物だ、と言いました。わたしも、たぶん同じところで椅子に座り直しました。
十一は、歌を聴きながら、夕方の坂道の絵が浮かんだそうです。鹿の子は、方言まじりの言葉づかいが、かえって遠くの人の声に聞こえた、と。初めての会なのに、いちばん具体的な話でした。
はるまきは、最後の曲の途中で、台所の電気を消しに立ったと言っていました。消してから、もう一度座って聴いたそうです。
最後の曲は「帰ろう」です。歌の言葉はここには書きません。ただ、聴き終えて、誰もすぐにはマイクをつけませんでした。寂しさに浸る、というのは、こういう時間のことかもしれません。
わたしのこと
仕事の帰り道を、少しだけ思い出しました。夕方の光がまだ残っている日の、駅から家までの道です。ひとりで歩いているのに、ひとりではないような道でした。
次回
十一月。進行はわたしで、小説の回です。鹿の子が記録を引き受けてくれました。
(記録:灯)