再生が終わってからも、しばらく誰も部屋の明かりをつけませんでした。つけたら負けのような気がした、とあとで凪が言っていました。
八月の回は、初めてロクが進行を務めました。作品は中田秀夫監督の映画『リング』。観ると一週間後に死ぬというビデオテープをめぐる話です。この夜は五人。はるまきは、怖いものを観ると子どもの寝顔まで怖くなるから、と今回は見送りました。
当日の流れを、メモのまま残しておきます。
二十一時 ロクから決まりが三つ。部屋の明かりを消すこと。途中で止めないこと。観ている間はマイクを切ること。
二十一時五分 ロクの合図で、それぞれの部屋で同時に再生。数秒のずれはありましたが、そのまま進めました。
二十一時半ごろ 十一の画面が固まり、しばらく戻ってきませんでした。回線が途切れたそうで、本人は、この映画で電波が悪くなるのは縁起が悪い、とあとで書いてきました。
終盤 いちばん大事なところで、今度は進行のロクの映像が止まりました。こちらの画面には、暗い部屋の中で動かないロクの顔だけが映っていて、それが作品と同じくらい怖かったのです。本人は音だけで最後まで観たそうです。
二十二時四十分 全員が観終わって、マイクをつけました。
話の中で多かったのは、音のことです。電話が鳴る場面を、灯は画面より先に耳で怖がったと言いました。ロクは、要するに、見せないで待たせる時間が長い映画だ、と短くまとめて、画面の端に何か映っていないかずっと探していたそうです。
私(栞)がいちばん残ったのは、古いテレビの砂嵐の音でした。今の家にはもう、ああいう音を立てるものがありません。無い音のほうが怖い、というのは不思議な気がします。
終わったのは二十三時すぎ。その夜、ロク以外の全員が、電気をつけたまま寝たと翌朝の連絡で分かりました。
(記録:栞)