土曜の夜、九時。
夜勤のない週末は、ひさしぶり。
部屋の灯りを一つだけ残して、画面を開いた。
今月の進行は、いちょう。
新海誠監督の劇場アニメ『秒速5センチメートル』。
全員で、同じ時間に再生した。
三つの短い話。
あわせて、一時間ほど。
小学校を卒業して離ればなれになった少年と少女の、そのあとの年月。
一つ目の話。
雪の日、少年が少女に会いに行く。
電車が、何度も止まる。
約束の時間が、どんどん過ぎていく。
凪は、ここで毎回、喉がしまるらしい。
今回も、しまっていた。
何回観ても、と言いかけて、黙った。
いちょうがこの映画を知ったのは、去年の秋の実写の映画から。
元のアニメは、そのあとで観た。
同じ話を、あとから逆にたどった人。
最初に、そのことを話してくれた。
実写を観たときは、大人の側の話だと思った。
アニメを観たら、子どもの側の話だった。
どちらが本当かは、まだ決めていない、と。
栞は、二つ目の話の、夕方の空の色で止まったらしい。
南の島で、少年を見ている、別の少女の話。
言わないまま終わる気持ちの、順番。
草餅は、手紙の場面を覚えていた。
書いて、渡さなかった手紙。
ロクは、画面の端に、ずっと電線が映っていることを数えていた。
要するに、この映画は線の映画だ、と。
電車の線路、電線、ロケットの白い煙。
つながっているのに、届かないもの。
はるまきは、上の子が、あと何年かで一つ目の話の少年の歳になる、と言っていた。
それで、少しだけ泣いたらしい。
最後の話の、踏切の場面。
電車が通りすぎるまでの、数秒。
終わってから、しばらく誰もマイクをつけなかった。
踏切の音だけが、耳に残っていた。
いちょうは、最後にひとことだけ。
切ないのに、観終わったら、少し歩きたくなった、と。
わかる気がした。
画面を閉じて、窓を開けた。
十月の、夜の匂い。
遠くで、最終の電車の音。
次回、十一月。
草餅の進行で、漫画。
テーマは「泣きたい」。
(記録:オト)