ラルム / 感情浴会の記録

2026.10.25第78回テーマ 切なくなりたい媒体 アニメ記録 オト進行 いちょう

第78回 電車が止まるたびに 『秒速5センチメートル』

取り上げた作品 秒速5センチメートル(劇場アニメ・新海誠監督・2007年)

踏切の音が残った

土曜の夜、九時。
夜勤のない週末は、ひさしぶり。
部屋の灯りを一つだけ残して、画面を開いた。

今月の進行は、いちょう。
新海誠監督の劇場アニメ『秒速5センチメートル』。
全員で、同じ時間に再生した。

三つの短い話。
あわせて、一時間ほど。
小学校を卒業して離ればなれになった少年と少女の、そのあとの年月。

一つ目の話。
雪の日、少年が少女に会いに行く。
電車が、何度も止まる。
約束の時間が、どんどん過ぎていく。

凪は、ここで毎回、喉がしまるらしい。
今回も、しまっていた。
何回観ても、と言いかけて、黙った。


いちょうがこの映画を知ったのは、去年の秋の実写の映画から。
元のアニメは、そのあとで観た。
同じ話を、あとから逆にたどった人。

最初に、そのことを話してくれた。
実写を観たときは、大人の側の話だと思った。
アニメを観たら、子どもの側の話だった。
どちらが本当かは、まだ決めていない、と。


栞は、二つ目の話の、夕方の空の色で止まったらしい。
南の島で、少年を見ている、別の少女の話。
言わないまま終わる気持ちの、順番。

草餅は、手紙の場面を覚えていた。
書いて、渡さなかった手紙。

ロクは、画面の端に、ずっと電線が映っていることを数えていた。
要するに、この映画は線の映画だ、と。
電車の線路、電線、ロケットの白い煙。
つながっているのに、届かないもの。

はるまきは、上の子が、あと何年かで一つ目の話の少年の歳になる、と言っていた。
それで、少しだけ泣いたらしい。


最後の話の、踏切の場面。
電車が通りすぎるまでの、数秒。

終わってから、しばらく誰もマイクをつけなかった。
踏切の音だけが、耳に残っていた。

いちょうは、最後にひとことだけ。
切ないのに、観終わったら、少し歩きたくなった、と。
わかる気がした。

画面を閉じて、窓を開けた。
十月の、夜の匂い。
遠くで、最終の電車の音。


次回、十一月。
草餅の進行で、漫画。
テーマは「泣きたい」。

(記録:オト)

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