特集の号です
(はるまき)
運動会のお弁当の練習で、卵焼きを三本焼いて、三本とも家族のおやつになっちゃいました。
秋の号は、初めて特集の形にしてみました。凪の寄稿「秋に観返すアニメ」を読んだら、みんなにも一本ずつ聞きたくなって。新しい作品ではなく、もう一度観る・読む・聴く・遊ぶ一本です。いつもの秋の選書の代わりに、それを並べました。
もくじ
- 特集の号です(はるまき)
- 特集 観返す・読み返す
- 秋に観返すアニメ(凪)
- みんなの、もう一度の一本
- 寄稿 読み聞かせで泣いた日(めじろ)
- 感情浴会の記録 第51回〜第53回
- 次の会
特集 観返す・読み返す
秋に観返すアニメ
(凪)
第10話の、最初の手紙が届く場面から、また話させてください。四年前の五月、一番最初の会で三人で観た、あの回です。
自分は毎年、秋になると観返すアニメが二本あって、ひとつがその『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』なんです。前に会報で、泣いた回を数えていると書きましたが、この第10話には、もう九本も線を引いていて、何回観ても、減るどころか、手紙が一通目から順に届いていく流れの、二通目あたりから喉が準備を始めてしまう。慣れるって、たぶん、こういう作品には起きないんです。
もうひとつが『蟲師』で、こっちは泣くためではなくて、体の熱を下げるために観ています。夏のあいだ、外回りで一日じゅう歩いて、体の中に残っている熱みたいなものを、山の中の静かな話が一話ずつ冷ましてくれる。三年前の秋の選書にも入れましたが、あれからも毎年、十月になると第1話から観はじめています。
観返すと、最初に観たときの自分の部屋や、季節や、その頃の仕事のことまで一緒に戻ってくるのがいいんです。作品は同じなのに、観ている自分のほうが毎年ちょっとずつ違う。最後の一周を何度も走っているような感じで、それが秋には、ちょうどいいんだと思います。
みんなの、もう一度の一本
灯 小川洋子『博士の愛した数式』。四年前の秋の選書に、わたしが入れた本です。読み返したら、最初に読んだときには気づかなかった、家政婦さんの台所の場面に、少しだけ長くとどまっていました。
ロク 『ジョーズ』。創刊号の夏の選書に入れた。四年ぶりに観返した。前半、サメがほとんど映らないのは知っていた。知っていても、画面の端の海面を見てしまう。
栞 大滝詠一『A LONG VACATION』。創刊号で私が選んだ一枚を、九月の終わりに聴き返しました。夏の終わりに聴くと、曲と曲のあいだの静けさが、前より少し長く感じられた気がします。
タカノツメ 『重版出来!』。漫画の編集部のドラマである。新人の編集者が、作家と本と読者のあいだを走り回る。三度目だが、第1話の最後で、小生はまたしびれた。
こはぜ 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』(朗読で)。ぼくが加わる前の会で聴いた作品だと、記録で知りました。子どものころに聴いた朗読を、いま聴き返すと、声が変わる一瞬が、前とは違う場所にあったのです。
ヤギ 『風ノ旅ビト』。三年前の春の会で、俺が初めて進行したゲーム。ひとりでもう一度歩いた。雪山で、また手が止まった。隣には、また知らない誰かがいた。
寄稿 読み聞かせで泣いた日
(めじろ)
もう一回読んで、と持ってこられたのは、上の子がいちばん好きな絵本でした。その日、あたしは最後のページで、声が出なくなりました。
瀧村有子の『ちょっとだけ』です。赤ちゃんが生まれて、お姉ちゃんになった女の子の話。お母さんは赤ちゃんのお世話でいそがしくて、女の子は、牛乳をつぐのも、パジャマのボタンをとめるのも、ひとりでやってみます。ちょっとだけ、できた。そうやって、ひとつずつ、がまんをかさねていく。
読み聞かせのとき、あたしはいつも、女の子の声を少しだけ小さくします。去年、うちに下の子が生まれてから、この本を読むたびに、上の子の顔を見られなくなりました。最後のページで、女の子がお母さんにあることをお願いする場面があります。そこで、声がつまりました。
上の子は、泣いているあたしを見て、ちょっとだけ笑って、あたしの背中をぽんぽんとたたきました。毛布をかけてもらったみたいな気持ちになりました。
子どもに読んであげているつもりで、ほんとうは、子どもに読んでもらっていたんだなあ、と思います。
感情浴会の記録
第51回(七月) すっきりしたい 『不適切にもほどがある!』(テレビドラマ・宮藤官九郎脚本)
進行はタカノツメ、記録は凪。一九八六年の体育教師が、バスごと今の時代に来てしまう話です。第1話だけを各自で観てきて、最終話まで観ている人はそのぶん黙っている決まり。全話観ていた進行役が、いちばん黙っているのが大変そうでした。はるまきは、家族が起きないように途中から手で口を押さえて笑っていました。
第52回(八月) 懐かしみたい 『窓ぎわのトットちゃん』(劇場アニメ)
進行はめじろ、記録は灯。古い電車を教室にした学校に通う女の子の話です。めじろは子どもの頃に原作を読んでいて、いまは親として観るので、泣く場所が変わったそうです。ロクは、校長先生がはじめて会った子どもの話を何時間も黙って聞く場面を挙げていました。
第53回(九月) 泣きたい 『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ
進行は栞、記録は草餅。家族からの暴力や人の死が出てくる本なので、栞が会のはじめにそのことを伝えました。凪はしばらくマイクを切っていました。つらくて前半で止めた人もいて、この回は、それでいい回でした。
次の会
- 第54回(十月) テーマ「ほどけたい」。三宅唱監督の映画『夜明けのすべて』。進行はロク、記録ははるまき。
- 第55回(十一月) テーマ「癒されたい」。絵本の回です。進行はめじろ、記録はこはぜ。
しずく通信 第18号 2024年10月 編集:はるまき