ラルム / 感情浴会の記録

2023.08.20第40回テーマ 熱くなりたい媒体 アニメ記録 ヤギ進行 凪

第40回 最後の数十秒、音が消えた 『THE FIRST SLAM DUNK』

取り上げた作品 THE FIRST SLAM DUNK(劇場アニメ・井上雄彦監督・2022年)

拳を握ったままだった

指の爪のあとが、手のひらに四つ残っていた。映画館を出て、自販機の前で財布を出そうとしたときに気づいた。

この回のこと

八月の感情浴会。進行は凪で、記録は俺。作品は、井上雄彦監督の劇場アニメ『THE FIRST SLAM DUNK』。去年の十二月に公開されて、まだ映画館での上映が続いている。二年半前の『無限列車編』の回と同じで、それぞれ映画館で観てきて、日曜の夜に画面越しで話した。十人全員。

高校バスケットボールの全国大会で、無名の高校が、最強と呼ばれる相手に挑む一試合。その試合の合間に、小柄なポイントガードの少年の、家族と兄の記憶が差しこまれていく。

原作を読んでいた人は、十人のうち六人。凪は、読んでいた側の代表として、原作とは視点の置き方が違う、とだけ言って、あとは何も言わなかった。先入観なしで観てほしい、ということらしい。

熱くなった場面

凪は、何回観ても、とまた言った。五回観たそうだ。最後の一周の、最後の数秒で、毎回喉がつまる、と。

草餅は、試合の途中で入る回想のつなぎ方が、見開きでページをめくる瞬間みたいだった、と言っていた。ロクは、要するに試合の時間と記憶の時間が、同じ骨組みで交互に組まれている、と。

オトは、試合の終盤で音がほとんど消えるところの話。こはぜは、その無音の中で、スニーカーが床をこする音だけが耳の奥に残った、と言っていた。ぬかは、主人公の母親が台所に立つ場面で、手が止まったらしい。

俺の話

俺が拳を握りっぱなしだったのは、主人公がドリブルで相手の壁を抜けていく場面だ。背の低い奴が、背の高い奴らの間の、細い道を見つける。ゲームで言えば、狭い崖の道を、足を踏み外さずに走り抜ける感覚に近い。

熱くなる、っていうのは、二年半前の俺は、どこかに力が入って抜けなくなることだと書いた。今回も同じだった。ただ今回は、抜けたあとに、少しだけ泣きそうになった。それが前と違った。

次回

九月は俺の進行で、ゲームの回。記録ははるまき。遠くへ行く回になる。

(記録:ヤギ)

気持ち熱くなりたい

場面夏

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