ラルム / しずく通信

2026.10.04第26号秋号編集 はるまき寄稿 はるまき・栞・凪

しずく通信 第26号(2026年 秋)

秋の号のはじめに

(はるまき)

下の子が、どんぐりを三十個ほど拾ってきました。玄関の靴箱の上に並べていたら、次の朝、そのうちの二個から小さな虫が出てきて、家じゅう大さわぎになっちゃいました。秋ですよね。

この号は、新しい棚で出す最初の号です。

夏の号で灯が知らせたとおり、これまでの記録を、ひとつの場所にまとめました。感情浴会の七十七回ぶんの記録も、しずく通信の二十五号ぶんのバックナンバーも、しずく大賞の選評も、メンバーの作品の記録も、いまはこの場所に並んでいます。引っ越しといっても、段ボールを運んだわけじゃないんですけどね。はるまきは、古い号の誤字をいくつか見つけて、こっそり直しました。

それから、前号の約束をひとつ。タカノツメが夏に第1話を録画した四本のうち、最終回まで残ったのは一本だったそうです。名前は、本人が作品の記録に書くときまで伏せておく、とのこと。いや、ほんとに、律儀な人です。

この秋、灯は、何年かおきに読み返している一冊をまた開いていて、ヤギは古いゲーム機を押し入れから出してきたそうです。それぞれの秋の話は、また別のところで。


もくじ

  1. 秋の号のはじめに(はるまき)
  2. 感情浴会の記録 第75回〜第77回
  3. 寄稿 引っ越しの前に読み返した記録(栞)
  4. 寄稿 候補を三つにしぼるまで(凪)
  5. 秋の選書
  6. 十月の会のお知らせ

感情浴会の記録

七月(第75回) 救われたい
スーザン・バーレイの絵本『わすれられないおくりもの』。進行はめじろ、記録はこはぜ。一人一ページずつ、順番に声に出して読みました。最初のページはロク、最後のページはめじろ。途中でヤギの声が一度だけ詰まって、誰も何も言わずに続きを待ちました。

八月(第76回) 懐かしみたい
細田守監督の『サマーウォーズ』。進行は凪、記録はタカノツメ。全員で同じ時間に再生しました。凪は終盤の花札の場面で声が裏返り、タカノツメは曾祖母が古い電話をかけ続ける場面でやられたそうです。はるまきは、あの大家族の食卓で、自分の家の夏の台所を思い出していました。

九月(第77回) 癒されたい
小川糸の小説『ライオンのおやつ』。進行は灯、記録はぬか。後半は、自分なら日曜日に何をリクエストするか、を一人ずつ話す時間になりました。本の感想より長くなったのは、はじめてかもしれません。ぬかの答えは、おやつではないと叱られていました。


寄稿 引っ越しの前に読み返した記録

(栞)

引っ越しの準備で、第1回の会の記録を、六年ぶりに読み返しました。

書いたのは私です。けれど、読んでいるあいだ、自分の文だという気がしませんでした。句読点の打ち方も、段落の終わらせ方も、いまとは少しずつ違う。大学院の研究室で、夜中に書いたものです。画面越しに三人の声を聞き分けるのに必死で、誰が何を言ったかを、とにかく全部書き留めようとしていました。

七十七回ぶんを、順番に読みました。

途中から、記録を書く人が増えていきます。書き方も人の数だけ変わっていきます。短い行で改行の多い記録、かしこまった言い回しの記録、「小生」で始まる記録。同じ会なのに、記録する人が変わると、その夜の音の響き方まで違って聞こえる気がしました。

読み返していて、いちばん長く止まったのは、記録の最後の一行でした。次回の予告です。次の月は誰が進行して、何を浴びるのか。どの回にも、ほとんど必ず書いてある。予告どおりに次の回があって、その次の回の記録の最後にも、また予告がある。七十七回ぶん、その順番が一度も途切れていませんでした。

それだけのことが、読み終えたあと、胸の底のほうにゆっくり沈んで残りました。


寄稿 候補を三つにしぼるまで

(凪)

毎月の会の候補を三つ出すのが自分の係なんですが、三つにしぼるまでに、だいたい十本くらいは頭の中で観返していて、今回もそうでした。

十月のテーマは「切なくなりたい」に決まっていました。最後まで残ったのは、新海誠監督の『秒速5センチメートル』、新川直司の漫画『四月は君の嘘』、山田尚子監督の『聲の形』の三つです。

『秒速5センチメートル』は、自分にとって、何回観ても同じ場面で息が止まる映画です。実は、創刊の年の秋の号の選書に、もう入っているんです。当時のメンバーの十一という人が、一枚の絵として成り立つ映画だ、と短く書いていました。六年たって、ようやく会で取り上げることになります。

決め手になったのは、いちょうでした。去年の秋に公開された実写の映画を観て、そこから元のアニメを観たそうで、同じ話を二つの入口から知っている人が進行したら、自分には見えていないものが見えるんじゃないか、と思ったんです。灯に相談したら、それがいい、と言ってくれました。

残った二つのうち、『四月は君の嘘』は、草餅が十一月に拾ってくれることになりました。テーマは「泣きたい」。ここ、本当に、うれしかったです。


秋の選書

宮沢賢治『風の又三郎』(朗読で聴く)
選んだ人:こはぜ。九月のはじめ、山あいの小さな学校に、ふしぎな転校生がやってくる話です。風の強い夜に聴くと、耳の奥で、雨戸がかたかた鳴るのです。

『もりのかくれんぼう』末吉暁子・作/林明子・絵(絵本)
選んだ人:めじろ。帰り道に知らない森へ迷いこんだ女の子が、動物たちとかくれんぼをする絵本です。落ち葉の色の中に隠れている動物を、娘と指でさがしていたら、ページをめくる手がなかなか進みませんでした。

『落下の解剖学』ジュスティーヌ・トリエ監督(映画)
選んだ人:ロク。雪深い山の家で、夫が転落して死ぬ。妻が疑われる。要するに、法廷の映画だ。答えを急がない。二時間半、画面の端の家族を見ていた。


十月の会のお知らせ

  • 第78回(十月) テーマ「切なくなりたい」。新海誠監督の『秒速5センチメートル』。進行はいちょう、記録はオト。十月二十四日(土)の夜。約一時間の作品なので、全員で同じ時間に再生して、そのあとゆっくり話します。
  • 第79回(十一月)は、草餅の進行で漫画を読む予定です。

しずく通信 第26号 2026年10月 編集:はるまき

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