ラルム / しずく通信

2026.01.04第23号冬号編集 はるまき寄稿 はるまき・ロク・灯・ぬか

しずく通信 第23号(2026年 冬)

新しい年に

(はるまき)

元日の朝、お雑煮のお餅を焼きすぎて、はるまきの分だけ真っ黒になっちゃいました。

年の暮れの三回は、ゲームで結婚相手に悩んで、漫画で鍋の話をして、小説で最後まで誰の嘘も見抜けなかった、という三回でした。とくに十月の会は、はるまきはあんなに真剣な多数決を見たことがありません。

それから、十二月に五回目のしずく大賞がありました。投票したのは十三人。これまででいちばん多い人数です。


もくじ

  1. 新しい年に(はるまき)
  2. 第5回 しずく大賞の結果
  3. 感情浴会の記録 第66回〜第68回
  4. 寄稿 読み返した本(灯)
  5. 寄稿 冬の鍋の出てくる作品(ぬか)
  6. 冬の選書
  7. 次の会

第5回 しずく大賞の結果

(ロク)

十三人。五回目。これまででいちばん多い。

部門 大賞 票
小説 『イン・ザ・メガチャーチ』朝井リョウ 12票中5票
漫画 『メダリスト』つるまいかだ(この年に出た巻) 12票中6票
アニメ 『薬屋のひとりごと』第2期(テレビアニメ) 13票中5票
映画 『国宝』李相日監督 12票中8票
ドラマ 『あんぱん』(連続テレビ小説) 13票中6票
音楽 米津玄師「BOW AND ARROW」 12票中5票
ゲーム 『ドンキーコング バナンザ』 9票中4票

会で取り上げた作品が、漫画と映画の二つの部門に入った。映画の八票は、今年いちばんまとまった数だ。

アニメは最後まで割れた。次点は『メダリスト』のアニメで、四票。要するに、同じ作品が漫画とアニメの両方で票を集めた。一年の真ん中に、あの氷の上の話があったということだ。

選評は、今年初めて、いちょうが音楽部門を書いた。


感情浴会の記録

第66回(十月) 誰かに会いたくなりたい 『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』
進行:ヤギ 記録:めじろ
子どものころ、父と一緒に旅をしていた主人公が、やがて大人になり、家族を持つまでの長い話です。父との旅の途中のある場面で、ヤギは何回遊んでもコントローラーを置いてしまうそうです。後半は、みんなが楽しみにしていた、結婚の相手の多数決。幼なじみを選んだ人が七人、もう一人の娘さんを選んだ人が四人、あとから出た版でしか選べない三人目を選んだ人が一人、決められない人が一人でした。三人目を選んだのはタカノツメです。

第67回(十一月) おなかを空かせたい 『ダンジョン飯』九井諒子
進行:ぬか 記録:草餅
迷宮の奥で妹を竜に食べられてしまった剣士が、仲間と、迷宮の魔物を料理して食べながら奥へ進んでいく話です。去年、アニメのほうがしずく大賞に選ばれています。ぬかは最初に、一人ひとつ、いちばん食べてみたい料理を挙げてください、と言いました。会のあいだに各自が実際に食べていたものまで、草餅が記録してくれています。

第68回(十二月) 驚きたい 『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成
進行:灯 記録:ヤギ
ある会社の最終選考に残った六人の大学生の話です。会は前半と後半に分けて、前半は誰でも参加、後半は読み終えた人だけが残りました。残ったのは八人。読み終えた八人のうち、途中で真相に気づいていた人は一人もいなかったそうです。


寄稿 読み返した本

(灯)

大晦日の夕方、台所の窓の外で、雨が雪に変わりました。そのあいだに、古い文庫本を一冊読み終えました。

梨木香歩の『西の魔女が死んだ』です。しずく通信の創刊号で、わたしが夏の選書に入れた本でした。あれから五年半。この冬、久しぶりに読み返しました。

学校に行けなくなった少女が、初夏のひと月を祖母の家で過ごす話です。最初に読んだときは、少女の側で読んでいました。今回は、たぶん、祖母の側で読んでいたと思います。庭の野いちごを摘んで、ジャムを煮る。シーツを洗って、ラベンダーの上に干す。その一つ一つが、誰かに手渡すための時間だったのだと、少しだけ分かりました。

五年半のあいだに、会は六十八回ありました。そのうち、わたしが進行したのは、数えてみたら十二回でした。毎回、作品の最後で少し黙って、それから話してきました。

読み返すと、本は同じなのに、黙る場所が変わっています。窓の外は、もうすっかり雪の夜でした。


寄稿 冬の鍋の出てくる作品

(ぬか)

土鍋を棚の奥から出したのは、十一月の会の翌朝のことでありました。

十一月の会で、わたくしは『ダンジョン飯』の進行を務めました。この漫画のいちばん最初に出てくる料理は、鍋です。大きなサソリと歩くキノコを、迷宮の中で水炊きにする。材料はとんでもないのに、鍋を囲む四人の顔が、あまりにふつうの冬の夕飯の顔をしているのです。凪は会で、この水炊きをいちばん食べてみたい料理に挙げていました。

鍋の出てくる作品が好きなのは、鍋が、ひとりでは作りにくい料理だからだと思います。一人前の鍋というものもございますが、やはり鍋は、何人かで囲むためのかたちをしている。作品の中に鍋が出てくると、そこには必ず、囲む人たちがいます。

わたくしの家の冬の鍋は、白菜と豚肉を重ねて煮るだけのものです。仕上げに、刻んだぬか漬けを少しだけ添えます。ひとくち目で、体の奥の冷えが、ゆっくりほどけていきます。

最後に、残った汁でおじやを作ります。白いごはんが欲しくなる、の、いちばん正しい使い道です。


冬の選書

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(大河ドラマ)
選んだ人:タカノツメ。江戸の本屋の一代記である。一年かけて観る長い献立だが、冬の夜に一気に追いかけても、脚本はちゃんと効く。

ブライアン・イーノ『Music for Airports』(音楽)
選んだ人:オト。空港のための音楽。歌はない。夜明け前、誰もいない待合室の気分で。

『ダンダダン』第2期(テレビアニメ)
選んだ人:いちょう。オカルトと宇宙人と、ちょっとの恋。通学の電車で観はじめたら、気づいたら三駅ぶん乗り過ごしかけてました。

小川未明『赤い蝋燭と人魚』(朗読で)
選んだ人:こはぜ。人魚の娘が、蝋燭屋の老夫婦に育てられる童話です。冬の夜に聴くと、最後の場面で、声が変わる一瞬があるのです。


次の会

  • 第69回(一月) テーマ「やり直したくなりたい」。松居大悟監督の映画『ちょっと思い出しただけ』。第2回のしずく大賞の映画部門です。進行ははるまき、記録はいちょう。
  • 第70回(二月) テーマ「ひとりを味わいたい」。漫画の回です。進行は草餅、記録はオト。

しずく通信 第23号 2026年1月 編集:はるまき

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