ラルム / しずく通信

2025.07.06第21号夏号編集 はるまき寄稿 はるまき・ロク・いちょう

しずく通信 第21号(2025年 夏) 創刊五年の号

創刊から五年

(はるまき)

五年前の七月、家族が寝たあとの一時間で、創刊号をまとめていました。

あの頃は、上の子がまだ小さくて、夜中に何度も起きていました。栞のメモを読みながら、途中で抱っこして、また座って、また読んで。いまその子は、自分で朝ごはんのパンを焼いています。五年って、そういう長さなんですね。

創刊号をいま読み返すと、はるまきの編集後記は、いや、ほんとに、照れちゃうくらい張り切っています。でも、いちばん最後の一行だけは、いまも同じ気持ちです。季節の変わり目の会がどうなるのか楽しみです、と書いてありました。五年たっても、次の季節の会がいちばん楽しみです。

この号は、少しだけ特別に、ロクに五年ぶんの数字を数えてもらいました。


もくじ

  • 創刊から五年(はるまき)
  • 五年を数える(ロク)
  • 感情浴会の記録 第60回〜第62回
  • 寄稿 通学の電車で聴いた曲(いちょう)
  • 寄稿 夏に観たい怖くない映画(ロク)
  • 夏の選書
  • 次の会

五年を数える

(ロク)

数えた。

  • しずく通信 二十一号。一度も休まず、季節ごとに出た
  • 寄稿 四十二本。この号の二本を入れて
  • 寄稿を書いた人 十五人。いまはいない人も含めて、これまでに加わった全員が、少なくとも一本は書いている
  • 感情浴会 六十二回。二〇二〇年の五月から、毎月一回。抜けた月はない
  • しずく大賞 四回。十二月に、今年で五回目になる
  • いまのメンバー 十三人。創刊号の頃は六人だった

要するに、一つの季節も、一つの月も欠けていない。建物で言えば、柱が一本も抜けていない。

その柱を、ほとんど一人で立ててきたのは、はるまきだ。二十一号のうち、二十号をはるまきが編集した。残りの一号は、栞が代わった春の号だ。


感情浴会の記録

第60回(四月) 熱くなりたい 『メダリスト』つるまいかだ
進行:草餅 記録:凪
オトが戻り、いちょうが加わって、十三人で迎えた最初の会でした。フィギュアスケートを始めるには遅いと言われる年齢の少女と、選手の夢を途中で終えた青年の話です。草餅は、青年がこの子のコーチになると決める見開きで、一度本を閉じたそうです。いちょうは、自己紹介のときに、この作品はアニメで観ていました、と話していました。

第61回(五月) 考え込みたい 『正欲』朝井リョウ
進行:灯 記録:オト
人に言えない種類のこだわりを抱えて生きている人たちと、多様性という言葉を疑わない人たちが、ひとつの出来事に向かって近づいていく話です。灯は、少しだけ、と言ってから、長く黙りました。答えの出ない話ばかりの回で、それでいい回でした。オトにとって、一年ぶりの記録です。

第62回(六月) 遠くへ行きたい 『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』若林正恭
進行:ぬか 記録:いちょう
書き手がひとりでキューバへ旅をした旅行記です。いちょうの初めての記録で、会のあとに、ぬかに少しだけ質問をして、その答えも書き残してくれました。ヤギは、旅に出たもうひとつの理由が明かされるところで手が止まった、と。


寄稿 通学の電車で聴いた曲

(いちょう)

朝の電車で、窓の外の田んぼをぼんやり見てたら、イヤホンの中の曲が三周目に入ってました。

通学は片道一時間ちょっと。そのあいだに聴く曲は、だいたい一曲だけです。気に入ると、そればっかりリピートしてしまう。

この春ずっと聴いていたのは、米津玄師の「BOW AND ARROW」でした。四月の会の『メダリスト』の、アニメのほうの主題歌です。氷の上を滑っていく感じの曲で、電車が加速するところとちょうど合うと、ちょっと鳥肌が立ちます。会で漫画のほうを読んでからは、聴くたびに、あの見開きが浮かぶようになりました。

去年の秋から冬は、Creepy Nutsの「オトノケ」でした。速くて、ずっと跳ねてる曲。朝、眠いまま乗った電車で聴くと、駅三つぶんくらいで目が覚めます。

歌の言葉のことは、うまく書けないので書きません。ただ、同じ曲を同じ電車で毎日聴いていると、季節が変わっても、その曲の中だけ時間が止まってる感じがします。秋になったら、窓の外は銀杏並木になるので、そのときは、また違う一曲かも。


寄稿 夏に観たい怖くない映画

(ロク)

僕がこれまで会で進行したのは九回。そのうち、ぞくっとしたい回は一回しかない。それでも、会では怖い映画の係だと思われている。

なので今回は、はっきり逆をやる。怖くない映画。夏に観ても、布団の中で思い出さなくていいもの。

『サマーフィルムにのって』。時代劇が大好きな女子高生が、夏休みに仲間を集めて、自分たちで映画を撮る。撮影の段取りが、そのまま青春の骨組みになっている。夏の夕方に観ること。

『リトル・ミス・サンシャイン』。ばらばらな家族が、黄色い古いバスで長い道を走る。バスはずっと調子が悪い。途中で何度も止まる。要するに、壊れかけた機械を全員で押す映画だ。最後の舞台の場面は、声を出して笑っていい。

『南極料理人』。二年前の七月の会で観た。怖いのは寒さだけだ。

どれも、観たあとに電気を消して眠れる。怖い映画の翌朝より、少しだけ体が軽い。それも、ちゃんと数に入る。


夏の選書

『サマータイムレンダ』(テレビアニメ)
選んだ人:凪。四年前の夏の選書に漫画で入れた作品は、アニメにもなっています。島の夏の数日を何度も繰り返す話で、最後の一周まで、やっぱり止まれないんです。

『カルテット』(テレビドラマ・坂元裕二脚本)
選んだ人:タカノツメ。軽井沢の別荘で、四人の演奏家が一緒に暮らす話である。冬のドラマだが、夏の夜に観ると、脚本の冷たさがちょうどいい。

『銀の匙 Silver Spoon』荒川弘(漫画)
選んだ人:ぬか。農業高校に入った少年の話です。夏の実習で、自分たちで育てたものを食べる場面があって、ひとくち目で、白いごはんが欲しくなります。


次の会

  • 第63回(七月) テーマ「寂しさに浸りたい」。ゲーム『Outer Wilds』。進行はヤギ、記録はロク。知ってしまうと面白さが半分になるゲームなので、遊んだ人は、まだ遊んでいない人に何も話さないこと。
  • 第64回(八月) テーマ「ぞくっとしたい」。小泉八雲の『怪談』を朗読で聴きます。進行はこはぜ、記録はタカノツメ。

しずく通信 第21号 2025年7月 編集:はるまき

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