ラルム / しずく通信

2024.01.07第15号冬号編集 はるまき寄稿 はるまき・ロク・タカノツメ・灯

しずく通信 第15号(2024年 冬)

一年をしまう号

(はるまき)

大掃除で換気扇を外したら、思っていた三倍よごれていて、年越しそばを作る前に力尽きちゃいました。

この冬の号は、少しだけ欲ばって、去年一年の会を全部並べてみました。十二回ぶんを一枚の表にすると、同じ一年なのに、ずいぶん遠くまで行ったんだなあと思います。

去年は、お休みに入った人がいて、離れた人がいて、戻ってきた人がいて、新しく来た人が二人いました。いまは十二人です。十一月から加わったタカノツメには、さっそく寄稿をお願いしました。


もくじ

  • 一年をしまう号(はるまき)
  • 二〇二三年の十二回
  • 感情浴会の記録 第42回〜第44回
  • 第3回 しずく大賞の結果
  • タカノツメのこと・寄稿 最終回の前の週(タカノツメ)
  • 寄稿 年の暮れの本棚(灯)
  • 冬の選書
  • 次の会

二〇二三年の十二回

回 月 テーマ 作品
第33回 一月 元気を出したい 『ぼっち・ざ・ろっく!』(テレビアニメ)
第34回 二月 切なくなりたい 『silent』(テレビドラマ)
第35回 三月 驚きたい 『十三機兵防衛圏』(ゲーム)
第36回 四月 やり直したくなりたい 『ブラッシュアップライフ』(テレビドラマ)
第37回 五月 ほどけたい 宇多田ヒカル『BADモード』
第38回 六月 寂しさに浸りたい 夏目漱石『夢十夜』(朗読で聴く)
第39回 七月 おなかを空かせたい 『南極料理人』(映画)
第40回 八月 熱くなりたい 『THE FIRST SLAM DUNK』(アニメ映画)
第41回 九月 遠くへ行きたい 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』
第42回 十月 ひとりを味わいたい 星野源『いのちの車窓から』(エッセイ)
第43回 十一月 ふるえたい 藤本タツキ『ルックバック』(漫画)
第44回 十二月 誰かに会いたくなりたい 有川ひろ『旅猫リポート』(小説)

絵本の回だけが、一度もありませんでした。今年は、きっとあります。


感情浴会の記録

第42回(十月) 進行は灯、記録はめじろ。九か月ぶりに戻ってきためじろの最初の会で、灯が最初に、おかえりなさい、と言いました。灯は通勤の電車で読んで、窓の外と文章の中の時間が重なったそうです。

第43回(十一月) 進行は草餅、記録はこはぜ。この夜がタカノツメの初めての会でした。草餅は、雨の帰り道の見開きで一度本を閉じた、と。後半に起きることは、誰も細かく話しませんでした。

第44回(十二月) 進行は灯、記録はタカノツメ。青年が愛猫を車に乗せて、昔の友人を一人ずつ訪ねていく話です。記録は、結論から言う、小生は猫に負けた、という一行で始まっています。


第3回 しずく大賞の結果

取りまとめのロクから。

十二人。部門は七つ。十二人全員が票を入れた部門は、今年もアニメだけだった。

部門 大賞 票
小説 『水車小屋のネネ』津村記久子 11票中5票
漫画 『カグラバチ』外薗健 10票中4票
アニメ 『葬送のフリーレン』(テレビアニメ) 12票中8票
映画 『怪物』是枝裕和監督 10票中5票
ドラマ 『ブラッシュアップライフ』(バカリズム脚本) 11票中5票
音楽 スピッツ『ひみつスタジオ』 11票中4票
ゲーム 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』 8票中5票

ドラマ部門の選評は、加わって一か月のタカノツメが書いています。


タカノツメのこと

十一月から加わったタカノツメは、ドラマの記録を担当してくれます。国内の連続ドラマから海外の作品まで観る人で、辛いものと脚本の話になると長くなる、と最初のあいさつで自分から言っていました。

寄稿 最終回の前の週

(タカノツメ)

結論から言う。連続ドラマでいちばん旨いのは、最終回ではない。その前の週である。

最終回は、答え合わせの回である。散らばったものが拾われ、結ばれ、閉じられる。もちろん、それはそれで旨い。だが、小生がしびれるのは、閉じる直前の、いちばん散らかっている回なのだ。

前の週には、脚本家が三か月ぶんの火力を全部入れてくる。主人公はいちばん追いつめられ、味方は離れ、隠されていたことが半分だけ明かされる。残りの半分は、来週。ここで放送が終わる。来週まで待てない。この「待てない」こそが、連続ドラマという食べものの、あとから効いてくる辛さなのである。

たとえば『アンナチュラル』。一話ごとに事件が閉じる作りでありながら、最後の二話で、それまでの話の下に一本、太い線が通っていたことが分かる。前の週を観終えた夜、小生は台所で水を二杯飲んだ。

配信で一気に観られる時代になった。便利である。だが、小生は今も、最終回の前の週だけは、一週間待つことにしている。待つ一週間も、脚本のうちなのだ。


寄稿 年の暮れの本棚

(灯)

十二月三十日の夕方。本棚の前に、少しだけ座っています。

年の暮れに、一年ぶんの本を棚に戻すのが、毎年の決まりです。読み終えたまま机の上に積んであった本を、一冊ずつ手に取って、どこに置くか決める。それだけのことに、たぶん二時間くらいかかります。

今年いちばん長く手に持っていたのは、津村記久子の『水車小屋のネネ』でした。十八歳の姉と八歳の妹が家を出て、水車小屋のある町で暮らしはじめる。そこから四十年。分厚い本なので、読み終えるまでに春から夏の終わりまでかかりました。棚に戻すとき、少しだけ重さを確かめてから置きました。

十月の会の『いのちの車窓から』は、窓ぎわの段に。十二月の『旅猫リポート』は、そのすぐ隣に置きました。車の窓と、電車の窓。並べておくと、たぶん、どちらの窓からも同じ夕方の光が見えます。

全部を戻し終えると、外はもう暗くなっていました。ほうじ茶をいれて、新しい年の最初の一冊を、まだ決めないまま、湯気だけ眺めています。


冬の選書

『エルピス―希望、あるいは災い―』(テレビドラマ・渡辺あや脚本)
選んだ人:タカノツメ。報道番組の作り手たちが、ある事件の真相を追う話である。脚本が、最後まで甘くならない。ぴりっと来る。

『BLUE GIANT』立川譲監督(アニメ映画)
選んだ人:凪。ジャズのサックスで世界一を目指す青年の話で、最後の演奏の場面は、何回観ても、自分の体まで音に合わせて動いてしまうんです。

『てぶくろ』ウクライナ民話・エウゲーニー・M・ラチョフ絵(絵本)
選んだ人:めじろ。森に落ちた片方のてぶくろに、動物がつぎつぎ入っていく絵本です。読み聞かせのとき、動物がふえるたびに、子どもがくすくす笑います。

『ランチ酒』原田ひ香(小説)
選んだ人:ぬか。夜に働く女性が、仕事明けの昼に、ひとりでごはんとお酒をいただく話です。ひとくち目の描き方で、白いごはんが欲しくなります。


次の会

  • 第45回(一月) テーマ「考え込みたい」。宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』。去年の夏から上映が続いている映画です。それぞれ観てきてから話します。進行はロク、記録は草餅。
  • 第46回(二月) テーマ「救われたい」。大賞のアニメ部門に選ばれた『葬送のフリーレン』。進行は凪、記録は栞。

しずく通信 第15号 2024年1月 編集:はるまき

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