一年をしまう号
(はるまき)
大掃除で換気扇を外したら、思っていた三倍よごれていて、年越しそばを作る前に力尽きちゃいました。
この冬の号は、少しだけ欲ばって、去年一年の会を全部並べてみました。十二回ぶんを一枚の表にすると、同じ一年なのに、ずいぶん遠くまで行ったんだなあと思います。
去年は、お休みに入った人がいて、離れた人がいて、戻ってきた人がいて、新しく来た人が二人いました。いまは十二人です。十一月から加わったタカノツメには、さっそく寄稿をお願いしました。
もくじ
- 一年をしまう号(はるまき)
- 二〇二三年の十二回
- 感情浴会の記録 第42回〜第44回
- 第3回 しずく大賞の結果
- タカノツメのこと・寄稿 最終回の前の週(タカノツメ)
- 寄稿 年の暮れの本棚(灯)
- 冬の選書
- 次の会
二〇二三年の十二回
| 回 | 月 | テーマ | 作品 |
|---|---|---|---|
| 第33回 | 一月 | 元気を出したい | 『ぼっち・ざ・ろっく!』(テレビアニメ) |
| 第34回 | 二月 | 切なくなりたい | 『silent』(テレビドラマ) |
| 第35回 | 三月 | 驚きたい | 『十三機兵防衛圏』(ゲーム) |
| 第36回 | 四月 | やり直したくなりたい | 『ブラッシュアップライフ』(テレビドラマ) |
| 第37回 | 五月 | ほどけたい | 宇多田ヒカル『BADモード』 |
| 第38回 | 六月 | 寂しさに浸りたい | 夏目漱石『夢十夜』(朗読で聴く) |
| 第39回 | 七月 | おなかを空かせたい | 『南極料理人』(映画) |
| 第40回 | 八月 | 熱くなりたい | 『THE FIRST SLAM DUNK』(アニメ映画) |
| 第41回 | 九月 | 遠くへ行きたい | 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』 |
| 第42回 | 十月 | ひとりを味わいたい | 星野源『いのちの車窓から』(エッセイ) |
| 第43回 | 十一月 | ふるえたい | 藤本タツキ『ルックバック』(漫画) |
| 第44回 | 十二月 | 誰かに会いたくなりたい | 有川ひろ『旅猫リポート』(小説) |
絵本の回だけが、一度もありませんでした。今年は、きっとあります。
感情浴会の記録
第42回(十月) 進行は灯、記録はめじろ。九か月ぶりに戻ってきためじろの最初の会で、灯が最初に、おかえりなさい、と言いました。灯は通勤の電車で読んで、窓の外と文章の中の時間が重なったそうです。
第43回(十一月) 進行は草餅、記録はこはぜ。この夜がタカノツメの初めての会でした。草餅は、雨の帰り道の見開きで一度本を閉じた、と。後半に起きることは、誰も細かく話しませんでした。
第44回(十二月) 進行は灯、記録はタカノツメ。青年が愛猫を車に乗せて、昔の友人を一人ずつ訪ねていく話です。記録は、結論から言う、小生は猫に負けた、という一行で始まっています。
第3回 しずく大賞の結果
取りまとめのロクから。
十二人。部門は七つ。十二人全員が票を入れた部門は、今年もアニメだけだった。
| 部門 | 大賞 | 票 |
|---|---|---|
| 小説 | 『水車小屋のネネ』津村記久子 | 11票中5票 |
| 漫画 | 『カグラバチ』外薗健 | 10票中4票 |
| アニメ | 『葬送のフリーレン』(テレビアニメ) | 12票中8票 |
| 映画 | 『怪物』是枝裕和監督 | 10票中5票 |
| ドラマ | 『ブラッシュアップライフ』(バカリズム脚本) | 11票中5票 |
| 音楽 | スピッツ『ひみつスタジオ』 | 11票中4票 |
| ゲーム | 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』 | 8票中5票 |
ドラマ部門の選評は、加わって一か月のタカノツメが書いています。
タカノツメのこと
十一月から加わったタカノツメは、ドラマの記録を担当してくれます。国内の連続ドラマから海外の作品まで観る人で、辛いものと脚本の話になると長くなる、と最初のあいさつで自分から言っていました。
寄稿 最終回の前の週
(タカノツメ)
結論から言う。連続ドラマでいちばん旨いのは、最終回ではない。その前の週である。
最終回は、答え合わせの回である。散らばったものが拾われ、結ばれ、閉じられる。もちろん、それはそれで旨い。だが、小生がしびれるのは、閉じる直前の、いちばん散らかっている回なのだ。
前の週には、脚本家が三か月ぶんの火力を全部入れてくる。主人公はいちばん追いつめられ、味方は離れ、隠されていたことが半分だけ明かされる。残りの半分は、来週。ここで放送が終わる。来週まで待てない。この「待てない」こそが、連続ドラマという食べものの、あとから効いてくる辛さなのである。
たとえば『アンナチュラル』。一話ごとに事件が閉じる作りでありながら、最後の二話で、それまでの話の下に一本、太い線が通っていたことが分かる。前の週を観終えた夜、小生は台所で水を二杯飲んだ。
配信で一気に観られる時代になった。便利である。だが、小生は今も、最終回の前の週だけは、一週間待つことにしている。待つ一週間も、脚本のうちなのだ。
寄稿 年の暮れの本棚
(灯)
十二月三十日の夕方。本棚の前に、少しだけ座っています。
年の暮れに、一年ぶんの本を棚に戻すのが、毎年の決まりです。読み終えたまま机の上に積んであった本を、一冊ずつ手に取って、どこに置くか決める。それだけのことに、たぶん二時間くらいかかります。
今年いちばん長く手に持っていたのは、津村記久子の『水車小屋のネネ』でした。十八歳の姉と八歳の妹が家を出て、水車小屋のある町で暮らしはじめる。そこから四十年。分厚い本なので、読み終えるまでに春から夏の終わりまでかかりました。棚に戻すとき、少しだけ重さを確かめてから置きました。
十月の会の『いのちの車窓から』は、窓ぎわの段に。十二月の『旅猫リポート』は、そのすぐ隣に置きました。車の窓と、電車の窓。並べておくと、たぶん、どちらの窓からも同じ夕方の光が見えます。
全部を戻し終えると、外はもう暗くなっていました。ほうじ茶をいれて、新しい年の最初の一冊を、まだ決めないまま、湯気だけ眺めています。
冬の選書
『エルピス―希望、あるいは災い―』(テレビドラマ・渡辺あや脚本)
選んだ人:タカノツメ。報道番組の作り手たちが、ある事件の真相を追う話である。脚本が、最後まで甘くならない。ぴりっと来る。
『BLUE GIANT』立川譲監督(アニメ映画)
選んだ人:凪。ジャズのサックスで世界一を目指す青年の話で、最後の演奏の場面は、何回観ても、自分の体まで音に合わせて動いてしまうんです。
『てぶくろ』ウクライナ民話・エウゲーニー・M・ラチョフ絵(絵本)
選んだ人:めじろ。森に落ちた片方のてぶくろに、動物がつぎつぎ入っていく絵本です。読み聞かせのとき、動物がふえるたびに、子どもがくすくす笑います。
『ランチ酒』原田ひ香(小説)
選んだ人:ぬか。夜に働く女性が、仕事明けの昼に、ひとりでごはんとお酒をいただく話です。ひとくち目の描き方で、白いごはんが欲しくなります。
次の会
- 第45回(一月) テーマ「考え込みたい」。宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』。去年の夏から上映が続いている映画です。それぞれ観てきてから話します。進行はロク、記録は草餅。
- 第46回(二月) テーマ「救われたい」。大賞のアニメ部門に選ばれた『葬送のフリーレン』。進行は凪、記録は栞。
しずく通信 第15号 2024年1月 編集:はるまき