ラルム / しずく通信

2023.01.08第11号冬号編集 はるまき寄稿 はるまき・凪・鹿の子・ロク

しずく通信 第11号(2023年 冬)

冬の号のはじめに

(はるまき)

七草がゆの七草を、今年はスーパーのセットで済ませちゃいました。それでも、ちゃんと春の匂いがしました。

年の暮れに、二回目のしずく大賞がありました。今年は十一人の投票です。結果はこの号の真ん中に置きました。

それから、ひとつお知らせを。一月から、しばらくお休みに入る仲間がいます。記録の欄のあとに、本人からの短いことばを載せています。


もくじ

  • 冬の号のはじめに(はるまき)
  • 感情浴会の記録 第30回〜第32回
  • めじろから
  • 第2回 しずく大賞の結果
  • 寄稿 泣いた回の数え方(凪)
  • 寄稿 結末に触れずに書く(鹿の子)
  • 冬の選書
  • 次の会

感情浴会の記録

回 テーマ 作品 進行 記録
第30回(十月) ぞくっとしたい 『方舟』夕木春央 鹿の子 オト
第31回(十一月) 癒されたい 『ゆるキャン△』(テレビアニメ) 草餅 凪
第32回(十二月) 優しくなりたい 『コーダ あいのうた』シアン・ヘダー監督 ロク めじろ

十月は、九月に出たばかりのミステリ。山奥の地下の建物に閉じこめられた人たちの話で、出るためには誰か一人が残らなければならない。鹿の子の決まりはいつもどおり、結末には触れないこと。十一人のうち十人で、はるまきは子どもの学校の行事の準備で欠席しちゃいました。ロクは建物の間取りの話を、凪は登場人物の名前を紙に書いて並べた話を。記録のオトは、最後の数十頁を夜勤明けの始発の中で読んだそうです。

十一月は、草餅の初めての進行。ひとりでキャンプをするのが好きな女の子の話で、第1話の、湖のほとりで二人がカップ麺をすする場面が、この夜の中心でした。草餅の提案で、話したことを一人ずつ短く書いて残しています。ヤギは、ゲームの中でならもう何百泊もしてる、と言っていました。

十二月は、耳のきこえない家族の中で、ただひとりきこえる女の子の映画。十人で同じ時間に再生しました。学校の発表会の場面で、映画の音がすっと消える。ロクは、観客を家族の席に座らせる仕掛けだ、と言っていました。


めじろから

あたしは、一月からしばらく、会をお休みします。子どもが生まれたためです。

十二月の会の記録を書き終えたとき、これでしばらく書けないんだなあ、と思って、少しだけさびしくなりました。でも、休んでいるあいだも、会報と記録は読んでいます。毛布にくるまって、夜中の授乳のあいまに読むと思います。

戻ってきたら、絵本の回をやらせてください。


第2回 しずく大賞の結果

取りまとめはロク。投票したのは十一人です。

部門 大賞 票 選評
アニメ 『ぼっち・ざ・ろっく!』(テレビアニメ) 11票中7票 凪
ドラマ 『silent』(生方美久脚本) 10票中6票 はるまき
小説 『汝、星のごとく』凪良ゆう 10票中5票 鹿の子
漫画 『さよなら絵梨』藤本タツキ 10票中4票 草餅
映画 『ちょっと思い出しただけ』松居大悟監督 9票中4票 ロク
音楽 宇多田ヒカル『BADモード』 10票中4票 オト
ゲーム 『ELDEN RING』 6票中3票 ヤギ

今年は、票の集まった順に並べています。ロクからひとこと。

十一人。去年より二人多い。十一人全員が票を入れた部門は、アニメだけだった。要するに、今年いちばん同じ場所で心が動いたのは、あのバンドだ。


寄稿 泣いた回の数え方

(凪)

第12話の、あの音が鳴りはじめたところで、自分の手はもうノートの端に線を一本引いていたんです。

泣いた回を数えています。毎年、手帳のいちばん後ろのページに、作品の名前と、何話目か、どこで声が出なくなったかを書いて、横に線を引く。去年は、全部で十九本でした。いちばん多かったのは十二月で、会で観た映画も一本入っています。

数え方には、自分なりの決まりがあって、涙が出たかどうかではなく、声が出なくなったかどうかで数えます。泣いていても、声が出るうちは数えない。喉がつまって、横にいる人に何か聞かれても答えられない、その状態になったら一本。試合で言えば、最後の一周で息が上がって、もう何もしゃべれない感じです。

こうやって数えていると、何回観ても同じ場所で線を引いている作品があることに気づきます。五月の会で最初に観た手紙の話の第10話には、この三年で七本引いています。回数が減らないんです。慣れるどころか、次に何が来るか分かっているぶん、その手前から喉が準備を始める。

今年は何本になるのか、まだ分かりません。ただ、線を引くたびに、自分がまだちゃんと動いているんだと確かめられるので、この数え方はやめないと思います。


寄稿 結末に触れずに書く

(鹿の子)

結末を明かさずに、どうやって驚きを人に手渡せばいいのだろうか。

感情浴会の記録では、ミステリの回に限らず、結末には触れないことにしている。この決まりを最初に口にしたのは筆者である。十角館の回のことだった。以来、筆者なりにいくつかのやり方を試してきたので、ここに書き留めておきたいと思う。

ひとつめは、結末ではなく、最初に「おかしい」と思った場所を書くことだ。驚きには、必ず手前に小さな違和感がある。それは廊下の奥の扉が少しだけ開いているのを見つけるようなもので、扉の向こうに何があるかは書かなくても、扉が開いていたことは書ける。

ふたつめは、読み終えたあとの自分の体のことを書くことである。『方舟』を読んだ夜、筆者はしばらく本を閉じたまま、部屋の見取り図を頭の中で描き直していた。何が起きたかではなく、何をしてしまったかなら、誰の楽しみも奪わない。

ところで、この決まりは、書く側にも効いてくる。結末に頼れないので、途中の景色を丁寧に見るようになるのだ。ひとつ確かなのは、結末に触れずに書いた記録のほうが、あとで読み返したときに、自分が何に驚いたのかをよく思い出せるということである。


冬の選書

『違国日記』ヤマシタトモコ(漫画)
選んだ人:草餅。人見知りの小説家が、姉の遺した娘を引きとって暮らす話。見開きで二人が並んで座っているだけのページで、うちはいつも一回止まる……

『最高の離婚』(テレビドラマ・坂元裕二脚本)
選んだ人:はるまき。十年前の冬のドラマです。夫婦げんかの台詞の応酬に、洗い物の手が止まっちゃいます。

『Stray』(ゲーム)
選んだ人:ヤギ。猫になって、知らない街を歩く。屋根から屋根へ。高いところで手が止まる。

『孤独のグルメ』久住昌之・谷口ジロー(漫画)
選んだ人:ぬか。ひとりの男性が、仕事のあいまに、ひとりでごはんを食べるだけの漫画です。寒い夜に読むと、白いごはんが欲しくなります。


次の会

  • 第33回(一月) テーマ「元気を出したい」。大賞のアニメ部門に選ばれた『ぼっち・ざ・ろっく!』。進行は凪、記録はオト。
  • 第34回(二月) テーマ「切なくなりたい」。こちらも大賞のドラマ部門から、『silent』。進行ははるまき、記録は鹿の子。

しずく通信 第11号 2023年1月 編集:はるまき

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