ラルム / しずく通信

2021.01.17第3号冬号編集 はるまき寄稿 はるまき・灯・鹿の子

しずく通信 第3号(2021年 冬)

編集から

(はるまき)

お正月のおせちの残りを、今夜やっと食べきりました。

この号は、中身の順番をいつもと入れ替えています。まず、灯からのお知らせを読んでください。この冬、一滴舎の集まりに、ふたつ名前がつきました。


ふたつの名前のこと

(灯)

一月十日の夜、会のはじめに少しだけ時間をもらって、年末から相談していたことを決めました。

ひとつめは、会の呼び方です。去年の五月から「みんなで観る会」と呼んできましたが、読む回も、聴く回も増えました。泣く夜もあれば、笑う夜も、ときめく夜もあります。お湯に浸かるように、作品の中の気持ちにしばらく浸かる。その時間を「感情浴」と呼ぶことにしました。会の名前は、今月から「感情浴会」です。数えなおすと、一月の会が第9回になります。

ふたつめは、記録の名前です。会の記録や、メンバーがそれぞれ書いている作品の感想を、これから少しずつ一か所に集めていきます。その記録を「ラルム」と呼ぶことにしました。フランス語で、涙のしずくのことです。

しずく通信の「しずく」とも、一滴舎の「一滴」とも、たぶん、同じところから来ている名前です。

呼び方が変わっても、やることは変わりません。月に一度、同じ作品を味わって、少し話して、少し黙る。それだけです。


もくじ

  1. 編集から(はるまき)
  2. ふたつの名前のこと(灯)
  3. みんなで観る会の記録 第6回〜第8回
  4. 寄稿 年末年始のドラマ(はるまき)
  5. 寄稿 冬に読むミステリ(鹿の子)
  6. 冬の選書
  7. 新しい仲間のこと・次の会

みんなで観る会の記録

この三回が、「みんなで観る会」と呼んでいた最後の三回です。

回 月 テーマ 作品 進行 記録
第6回 十月 寂しさに浸りたい 藤井風『HELP EVER HURT NEVER』 栞 灯
第7回 十一月 考え込みたい 村田沙耶香『コンビニ人間』 灯 鹿の子
第8回 十二月 優しくなりたい 佐野洋子『100万回生きたねこ』 はるまき 栞

第6回は、初めての音楽の回でした。栞のお願いは、曲順のまま、飛ばさずに一枚を聴くこと。聴いているあいだはマイクを切りました。はじめの数曲はにぎやかで、後ろのほうで空気が変わる。最後の曲が終わっても、誰もすぐにはマイクをつけませんでした。この回から鹿の子が加わっています。

第7回は、十八年間同じコンビニで働いてきた女性の小説。灯が、読みながら何度も笑ってしまってそれが少し後ろめたかった、と話したところから始まりました。記録の鹿の子は、便箋にして三枚ぶんのメモを残してくれました。「普通」は本人の中ではなく、周りの期待のほうに置いてあるのかもしれない、という一文で終わっています。

第8回は、はるまきが絵本を声に出して読み、ほかのみんなは手もとの同じ本を、その声に合わせてめくりました。白い猫が出てくるあたりから読む声が少しゆっくりになった、と栞のメモにあります。自分では気づいていませんでした。


寄稿 年末年始のドラマ

(はるまき)

大晦日の夜、年越しそばの丼を洗いながら、『逃げるは恥だが役に立つ』の第1話を再生しました。

一月の会ではるまきが進行をやることになって、選んだのがこのドラマです。四年前の秋に観ていたんですけど、ちゃんと観返そうと思って。で、お正月に新しい特別編があると知って、それまでに全11話を観なおす、という計画を立てちゃいました。

結果から言うと、間に合いました。間に合ったけど、一気見した翌朝はほんとにつらいですよね。元日の朝、お雑煮の鍋の前で、ずっとまぶたが重かったです。

でも、続けて観ると、毎週観ていたときには気づかなかったことがあって。二人の距離って、一話ごとに、ほんとに少しずつしか縮まらないんです。煮物の味が一晩でしみるみたいに。毎週一話ずつだと気づかない変化が、並べて観ると、ちゃんと見える。

一月二日の特別編は、子どもと一緒に観ました。途中で子どもが寝ちゃって、最後のほうは、はるまきひとりでした。

いや、ほんとに、年の初めに観るドラマとしてはこれ以上ないくらい、ちょうどいい温かさでした。来年のお正月は、何を観ようかな。


寄稿 冬に読むミステリ

(鹿の子)

なぜ、ミステリは冬に読むとよく効くのだろうか。

筆者なりの答えは、冬の夜が長いからでも、外に出たくないからでもなく、冬には家の中の間取りがはっきりするからだと思う。窓を閉め、暖房のある部屋に家族が集まり、廊下は冷えて誰も通らない。その、使われている部屋と使われていない部屋の区別が、ミステリの見取り図とよく似ているのである。

ところで、雪に閉ざされた場所を舞台にしたミステリは多い。アガサ・クリスティーの『オリエント急行の殺人』は、雪で立ち往生した列車の中で事件が起きる。外へ出られない、誰も入ってこられない。読み手も、その車両の中に閉じ込められる。暖かい部屋で読んでいると、ページの中の寒さがかえってよく分かる。

もう一冊、筆者がいつか会で取り上げたいと思っているのが、綾辻行人の『十角館の殺人』である。舞台は冬ではないが、島に渡った学生たちの、閉ざされた数日間の話だ。結末にはもちろん触れない。ひとつ確かなのは、あの本を読んだ夜、筆者は最後の数頁を読み終えてから、しばらく部屋の扉を見ていたということである。

冬に読むなら、読み終える時刻にも気をつけたい。夜中の二時に扉を見つめることになっても、筆者は責任を持てない。


冬の選書

この冬は、「眠る前の三十分で読める・観られる・聴けるもの」という決まりで選びました。

『ツバキ文具店』小川糸(小説)
選んだ人:灯。手紙の代書を請け負う女性の話。一章ずつ、湯たんぽの冷めないうちに。

『ハイキュー!!』古舘春一(漫画)
選んだ人:凪。一話ずつなら三十分に収まる、はずなんです。自分は収まったことがありません。

『シャイニング』スタンリー・キューブリック監督(映画)
選んだ人:ロク。決まりを破る。三十分では終わらない。雪に閉ざされたホテルの話。

宇多田ヒカル『初恋』(音楽)
選んだ人:栞。一枚を通すと、三十分では終わりません。後半の数曲だけでも。最後の一曲は、明かりを消してから。

『火車』宮部みゆき(小説)
選んだ人:鹿の子。これも三十分では終わらない。ただ、最初の三十分で、もう戻れなくなるはずだ。


新しい仲間のこと

今月から、ヤギが加わりました。ゲームが得意で、遠くへ行けるゲームの話になると止まらない人です。初めての一月の会では、ときめく場面より先に、主人公の空想の場面で声を出して笑っていました。三月には、初めてのゲームの回を進行してくれる予定です。

次の会

  • 第10回(二月) テーマ「熱くなりたい」。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。まだ映画館で上映が続いているので、それぞれ観てきてから話します。進行は凪、記録はヤギ。

しずく通信 第3号 2021年1月 編集:はるまき

この号の冊子版を読む(PDF・395KB)

しずく通信に戻る