ラルム / しずく大賞

2025.12.30第5回集計 ロク選評 ロク・灯・草餅・凪・タカノツメ・いちょう・ヤギ・栞・はるまき・めじろ・オト・ぬか・こはぜ

第5回 しずく大賞(2025年) 結果と選評

はじめに

(ロク)

五回目。十三人。これまででいちばん多い。

一年休んでいた一人が四月に戻り、同じ月に一人が加わった。今年の十二月にいる全員が、票を入れた。

決め方で、一つだけ言葉を足した。続きものは、その年に新しい巻や新しい期が出ていれば対象にする。前から暗黙でそうしていたが、今年は漫画の部門で、それがはっきり効いた。

二十七日の会のあとに案内を回して、二日で十三票がそろった。票を開けたのは二十九日の夜。集計は僕がやった。

場所は、四年目の都内の貸し会議室。来たのは八人。灯、凪、栞、はるまき、ぬか、草餅、タカノツメ、僕。ほかの五人は画面から。開票の夜に来た人数では、いちばん多い。


結果

部門 大賞 票 次点
小説 『イン・ザ・メガチャーチ』朝井リョウ 12票中5票 票が分かれた
漫画 『メダリスト』つるまいかだ(この年に出た巻) 12票中6票 票が分かれた
アニメ 『薬屋のひとりごと』第2期(テレビアニメ) 13票中5票 『メダリスト』(テレビアニメ・4票)
映画 『国宝』李相日監督 12票中8票 『ファーストキス 1ST KISS』(2票)
ドラマ 『あんぱん』(連続テレビ小説) 13票中6票 『べらぼう』(4票)
音楽 米津玄師「BOW AND ARROW」 12票中5票 米津玄師「IRIS OUT」(3票)
ゲーム 『ドンキーコング バナンザ』 9票中4票 『マリオカート ワールド』(3票)

選評

小説部門 『イン・ザ・メガチャーチ』朝井リョウ

(灯)

夜の十時すぎに、最後の頁を閉じました。部屋の明かりを、少しだけ落としました。

何かを強く信じて集まる人たちと、その信じる気持ちを、うまく動かそうとする側の人たち。いくつかの視点が、少しずつ近づいていく話です。五月の会で読んだ同じ書き手の本と同じように、読み終えてすぐには、何も言えませんでした。

誰かを好きになる気持ちや、何かに夢中になる気持ちが、どこから来ているのか。読みながら、自分がこの会で毎月、同じ作品を一緒に味わってきた時間のことも、たぶん、少しだけ考えていました。

九月に出たばかりの本で、票は五つ。ほかの票は、ひとつずつに分かれました。

エッセイと絵本と朗読は、今年も部門にしていません。ただ、八月の会で聴いた『怪談』と、六月に読んだ旅の本は、その月の会のあと、何人かが別の本を探していました。票ではない形で、ちゃんと残っています。

漫画部門 『メダリスト』つるまいかだ

(草餅)

氷の上で、小さな女の子が、はじめて誰かのためにジャンプを跳ぶ。見開きで、うちは本を閉じた。

四月の会で、うちが進行した漫画。スケートを始めるには遅いと言われた女の子と、選手の夢を途中で終えたコーチの話。この一年に出た巻では、女の子がもっと大きな大会に出ていく。リンクの白と、衣装の色。一コマの中の光が、若葉みたいにまぶしい。

ここ三年、漫画の部門はいつも割れていた。今年は、四月の会で読んだ人が多かったからか、半分の票が集まった。続きものでも、その年の巻で選べる、とロクが言葉を足してくれたのも大きかった……

アニメの部門でも、同じ作品のアニメが次点に入っている。うちは、そっちにも少しだけ心の中で票を入れてた。

アニメ部門 『薬屋のひとりごと』第2期(テレビアニメ)

(凪)

後宮の庭で、薬師の女の子が、誰にも気づかれないまま毒の正体に気づく、あの顔から話させてください。

宮中で下働きをしている、薬と毒にやたら詳しい女の子が、その知識のせいで、次々と奇妙な事件に巻きこまれていく話で、第2期では、一話ごとの謎の向こうに、大きな話の骨組みが少しずつ見えてきて、ここ、本当に、終盤の数話は試合の最後の一周のように息をつめて観ていました。

今年のアニメは、ほんとうに票が割れて、次点の『メダリスト』とは一票差。十三人全員が票を入れた部門で、自分の一票がどちらだったかは、何回聞かれても言いません。

映画部門 『国宝』李相日監督

(ロク)

上映時間は百七十五分。今年いちばん長く、今年いちばん票がまとまった。

任侠の家に生まれた少年が、歌舞伎の名門に引き取られ、その家の跡取りと兄弟のように育つ。二人は同じ舞台を目指し、ときに入れかわる。

要するに、舞台の骨組みを裏側から見せる映画だ。楽屋、廊下、奈落。画面の端に、いつも誰かの背中がある。表で拍手が鳴っているとき、裏で何が起きているか。それを三時間、ずっと見せられる。

九月の会で取り上げた。何人かが、会のあと、もう一度観に行った。僕もその一人だ。

次点は『ファーストキス 1ST KISS』で二票。

ドラマ部門 『あんぱん』(連続テレビ小説)

(タカノツメ)

結論から言う。今年の朝、小生はあんぱんに負けた。

子ども向けの有名なヒーローを生み出した漫画家と、その妻の半生をもとにした話である。戦争をはさんで、二人は何度も離れ、何度も迷う。正義とは何かを、半年かけて問い続ける。

脚本が、甘い名前の作品なのに、まったく甘くない。戦争の場面は、ぴりっとどころではなく、翌朝まで舌がしびれる。そのあとで出てくる、ほんのひと切れの甘さが、あとから効いてくるのである。

次点は大河の『べらぼう』で四票。十三人全員が、どちらかの朝か夜にしびれていた。来週まで待てない、ではなく、明日の朝まで待てない一年であった。

音楽部門 米津玄師「BOW AND ARROW」

(いちょう)

一月、朝の電車の窓に、まだ霜がついていました。そのとき、初めてこの曲を聴きました。

アニメの『メダリスト』の主題歌です。氷の上を滑っていくような曲で、電車が加速するところで、ちょうどサビが来ると、鳥肌が立ちます。気づいたら、一年ずっとリピートしてました。

今年初めて選評を書きます。音楽の部門は、ほんとうはオトの担当ですが、オトから、今年はいちょうが書いて、と言われました。ちょっと緊張しています。

次点は、同じ人の秋の曲で三票。一年のはじめと終わりに、同じ人の曲がそれぞれ残ったのが、なんだかいいなと思いました。

ゲーム部門 『ドンキーコング バナンザ』

(ヤギ)

壁を殴った。穴があいた。その先に、また地面があった。そこで手が止まった。

地面を掘って、壊して、進むゲームだ。道がないなら作ればいい。崖があるなら崩せばいい。遠くへ行く方法が、自分の手の中にある。

地の底へ、地の底へ降りていく。降りるほど、世界が広くなる。遠くの山じゃなくて、足の下に、まだ行っていない場所がある。今年いちばん、地形の見え方が変わったゲームだった。

票は九人から集まって、四つ。遊んでいる人が、五年でいちばん多くなった。


投票したメンバーのひとこと

(栞)音楽は『BOW AND ARROW』に入れました。四月の会で漫画を読んだあとに聴くと、曲の中に、あの氷の音が沈んでいる気がしました。

(はるまき)ドラマは『あんぱん』です。毎朝、子どもの髪を結びながら観ていました。戦争の週は、いや、ほんとに、朝から台所で泣いちゃいました。

(めじろ)アニメで『メダリスト』に入れました。上の子がスケートの真似をして、居間の床をくつしたで滑っています。やわらかい毛布の上で転んで、笑っていました。

(オト)
戻ってきて、最初の大賞。
音楽は、いちょうに任せた。
一年ぶんの帰り道で聴いた曲を、いちょうのほうがよく知っていたから。
票は、アルバムに入れた。

(ぬか)わたくしは漫画で『メダリスト』に入れました。食べものの場面は多くないのに、読み終えて白いごはんが欲しくなったのでありました。体を動かす話には、そういう力があるようです。

(こはぜ)小説で『イン・ザ・メガチャーチ』に入れました。読んでいるあいだ、いくつもの声が、耳の奥で重なっていくように聞こえたのです。


五回の大賞

部門 2021 2022 2023 2024 2025
小説 スモールワールズ 汝、星のごとく 水車小屋のネネ カフネ イン・ザ・メガチャーチ
漫画 ルックバック さよなら絵梨 カグラバチ ふつうの軽音部 メダリスト
アニメ オッドタクシー ぼっち・ざ・ろっく! 葬送のフリーレン ダンジョン飯 薬屋のひとりごと 第2期
映画 ドライブ・マイ・カー ちょっと思い出しただけ 怪物 侍タイムスリッパー 国宝
ドラマ 大豆田とわ子と三人の元夫 silent ブラッシュアップライフ 虎に翼 あんぱん
音楽 きらり BADモード ひみつスタジオ さよーならまたいつか! BOW AND ARROW
ゲーム モンスターハンターライズ ELDEN RING ティアーズ オブ ザ キングダム ドラゴンクエストIII ドンキーコング バナンザ

選考を終えて

(ロク)

三十五作。五年ぶん。

並べると、会で取り上げた作品が、いつのまにか何本も入っている。反対に、ここに並んだ作品を、あとから会で取り上げたこともある。表の行と、毎月の会が、配線でつながっている。

十三人全員が票を入れたのは、アニメとドラマ。

来年も十二月にやる。この表は、また一列ぶん伸びる。

投票したメンバー:灯・凪・ロク・栞・はるまき・ヤギ・めじろ・オト・ぬか・草餅・こはぜ・タカノツメ・いちょう(十三人)

(取りまとめ:ロク)

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