気づいたら、映画館のひじ掛けを握ったままだった。エンドロールが半分くらい流れるまで、手を離していなかった。
二月の感情浴会。俺は入って二回目で、記録は初めて。進行は凪。作品は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。去年の秋から映画館でずっと上映が続いているので、今回は同じ時間に再生するんじゃなくて、それぞれ近くの映画館で観てきて、日曜の夜に画面越しで話す形になった。
夜の列車の中で、乗客が次々と眠らされていく。その列車を守るために、主人公たちと、炎を使う剣士が戦う話。テレビアニメの続きなんだけど、俺はテレビ版をほとんど観ないまま行った。それでも最後の一時間は、全然関係なかった。
凪は三回観たらしい。三回とも同じところで背中が熱くなって、三回目は、そこが来ると分かっているのにまた駄目だった、と言っていた。何回観ても、が本当に口癖なんだな、と思った。
十一は、夜明け前の空の色の話をしていた。戦っている間、ずっと空が少しずつ明るくなっていく。その変わり方が、そのまま時間の残りを数えているように見えた、と。
ロクは、列車そのものの話。狭い車両の中で、どこまでが敵の体でどこからが列車なのか分からなくなる骨組みが怖かったらしい。灯は、映画館で周りの人が静かに泣いている気配があって、自分も泣いてもいいと思えた、と言っていた。
俺がひじ掛けを握っていたのは、最後の戦いの、夜が明けるまでのところ。あそこは、ゲームで言えば、回復も逃げるも選べない場面だ。ただ前に出るしかない人を見ていると、観ているこっちの手にまで力が入る。熱くなる、っていうのは、たぶん体のどこかに力が入って抜けなくなることなんだと思う。
帰りの電車で、ずっと手のひらを握ったり開いたりしていた。
次回は三月。ゲームの回で、俺が進行をやる。
(記録:ヤギ)