二十号目の春に
(はるまき)
この号で、しずく通信は二十号目です。春の号を作るのは、これで五回目になりました。
そして、この春はふたつ、いい知らせがあります。一年お休みしていたオトが、今月から戻ってきます。それから、いちょうという新しい仲間が加わります。十三人になりました。一滴舎の画面が、いちばんにぎやかになる春です。
はるまきは、春キャベツを一玉まるごと使ったロールキャベツを煮込みながら、この号をまとめました。煮込んでいるあいだに、ちょうど二十号ぶんの目次を読み返せました。
もくじ
- 二十号目の春に(はるまき)
- はじめまして(いちょう)
- 感情浴会の記録 第57回〜第59回
- 寄稿 一年ぶりの二曲目(オト)
- 寄稿 春の青春漫画(草餅)
- 春の選書
- 次の会
はじめまして
(いちょう)
課題の途中で、たまたま流していたアニメの一話目に、気づいたら手が止まっていました。そこから、作品の感想を誰かと話したくなって、ここに来ました。
大学生です。アニメと音楽が好きで、配信やネットで話題になりはじめた作品を見つけるのが、たぶん得意です。通学の電車が長いので、そのあいだに一話観たり、アルバムを一枚聴いたりしています。
昔の作品は、あまり知りません。これから、いろいろ教えてもらえたらうれしいです。よろしくお願いします。
感情浴会の記録
第57回(一月) 優しくなりたい 『アンメット ある脳外科医の日記』(テレビドラマ)
進行ははるまき、記録はめじろ。事故の後遺症で、新しい記憶が一日で消えてしまう脳外科医の話です。第1話を各自で観てきて、最終話まで観た人は話をひかえめに、という決め方でした。灯は、毎朝、自分の書いた日記を読む場面が残ったそうです。記録のめじろは、会のはじめに家のネットが切れて、真っ暗な画面を見ながら、覚えていられないってこういう感じなのかなあ、と考えていたと書いています。
第58回(二月) 笑いたい 『もものかんづめ』さくらももこ
進行はぬか、記録は栞。笑い声がなかなか止まない会でした。最初に笑い出したのは凪、次がはるまき。はるまきは台所で揚げものの油の前で読んでいて、あぶなかったんです。ロクは、書き手が自分の失敗を一歩引いて眺める距離の取り方の話を。ぬかは最後に、よく笑ったあとはおなかが空くので今夜はここまでにいたしましょう、と締めました。
第59回(三月) 切なくなりたい スピッツ『ひみつスタジオ』
進行は栞、記録はこはぜ。おととしの大賞の音楽部門の一枚を、栞の決めた三つの約束で聴きました。曲を飛ばさない、順番を入れかえない、途中で話さない。こはぜは聴きながら、浮かんだことをノートに走り書きしていて、その走り書きがそのまま記録になっています。最後の曲が終わったあと、しばらく画面の誰も動きませんでした。
寄稿 一年ぶりの二曲目
(オト)
新しい町。
夜勤明けの、まだ知らない帰り道。
街灯の間隔が、前の町より広い。
一年、会を離れていた。
そのあいだ、アルバムを一枚通して聴くことが、ほとんどなかった。
一曲だけ。
移動の途中で、一曲だけ。
戻る前の週。
三月の会の記録を読んだ。
その一枚を、帰り道で再生した。
一曲目。
まだ体が構えている。
知らない町の信号。点滅していない。
二曲目から。
肩が下りた。
一年ぶりに、二曲目まで来た、と思った。
アルバムの二曲目が好きだ。
一曲目は、入口。
二曲目で、やっと部屋に入る。
一年ぶりに、部屋に入った気がした。
家に着いても、まだ途中だった。
玄関で、最後まで聴いた。
寄稿 春の青春漫画
(草餅)
放課後の帰り道。ギターケースを背負った女の子の背中が、ケースのぶんだけ少し大きく見える。その一コマで、うちは読むのを一回止めた。
『ふつうの軽音部』。去年の大賞の漫画部門で、選評はうちが書いた。高校に入って軽音部に入った女の子が、少しずつバンドを組んでいく話。部室のすみっこの、うまく言えない気持ちが、コマとコマのあいだにずっと置いてある。
春の青春漫画は、始まりの話がいい。何者でもない子が、何かを始める。まだ何も上手くない。でも、上手くないまま、最初の一歩を踏み出す見開きがある。そこで一回本を閉じて、窓の外の若葉を見る。
うちが加わる前の会で読まれた『スキップとローファー』も、始まりの話。地方から東京に出てきた女の子の、入学式の日から始まる。三年前の会の記録を読んで、うちも読み返した。桜色の話なんだ。
今月の会では、うちが進行を受け持つ。選んだのは、やっぱり始まりの話。まだ誰にも言ってないけど、この号が届くころには、もう知られているかも……
春の選書
『君のクイズ』小川哲(小説)
選んだ人:灯。クイズ番組の決勝で、問題が読まれる前に正解した人がいた。その理由をたどっていく話です。短い本なので、春の夜に一気に。
『ホットスポット』(テレビドラマ・バカリズム脚本)
選んだ人:タカノツメ。富士山のふもとのビジネスホテルで働く女性が、同僚のとんでもない秘密を知ってしまう話である。脚本が、日常の会話の中に、あとから効く辛さを仕込んでくる。
『はじめてのおつかい』筒井頼子・林明子(絵本)
選んだ人:めじろ。五歳の女の子が、はじめてひとりで牛乳を買いにいく絵本です。上の子が、この春から、ちょっとしたおつかいに行くようになりました。
『薬屋のひとりごと』第2期(テレビアニメ)
選んだ人:いちょう。後宮で働く薬師の女の子の話です。気づいたら、第1期から全部見返してました。
次の会
- 第60回(四月) テーマ「熱くなりたい」。漫画の回です。進行は草餅、記録は凪。オトといちょうが加わって、十三人で迎える最初の会です。
- 第61回(五月) テーマ「考え込みたい」。朝井リョウの小説『正欲』。進行は灯、記録はオト。
しずく通信 第20号 2025年4月 編集:はるまき