冬の号のはじめに
(はるまき)
お正月の三が日、ずっと台所に立っていたら、ドラマを一本も観られないまま四日になっちゃいました。
去年の暮れの会は、十二月二十八日でした。一年でいちばん押しつまった日に、侍の映画で元気をもらって、そのまま大賞の開票。いや、ほんとに、にぎやかな年越しでしたよね。
今号の寄稿は、年末年始にドラマを一気見したタカノツメと、冬に聴くアルバムの栞です。はるまきの代わりに、タカノツメがたくさん観てくれました。
もくじ
- 冬の号のはじめに(はるまき)
- 感情浴会の記録 第54回〜第56回
- 第4回 しずく大賞の結果
- 寄稿 年末年始の一気見(タカノツメ)
- 寄稿 冬のアルバム(栞)
- 冬の選書
- 次の会
感情浴会の記録
十月十二日(土) 第54回 ほどけたい
三宅唱監督『夜明けのすべて』。進行はロク、記録ははるまき。会のはじめに、先月の本を前半で止めていた人から、あのあと最後まで読んだ、という報告がありました。月に一度、体の調子で気持ちが抑えられなくなる女性と、パニック障害をかかえる青年が、小さな会社で少しずつ助け合う話です。ロクがこれを選んだ理由は、誰も怒鳴らない映画だから。はるまきは、髪を切ってあげる場面で笑いました。
十一月十日(日) 第55回 癒されたい
『ぐりとぐら』中川李枝子・大村百合子。進行はめじろ、記録はこはぜ。めじろが画面に本を向けて読みました。野ねずみの二匹が、森で大きな大きなたまごを見つける話です。焼き上がりを待つあいだの、めじろの声の間が、こはぜにはいちばん残ったそうです。ぬかは読み終わるなり、台所へ立っていきました。
十二月二十八日(土) 第56回 元気を出したい
安田淳一監督『侍タイムスリッパー』。進行はロク、記録はタカノツメ。幕末の侍が、現代の時代劇の撮影所に飛ばされて、斬られ役として生きていく話です。それぞれ映画館で観てから集まりました。凪は、侍よりも撮影所で働く人たちのほうで熱くなったそうです。
第4回 しずく大賞の結果
投票したのは十一人。オトが休会中のため、今回は投票に加わっていません。取りまとめはロクです。
| 部門 | 大賞 | 票 | 選評 |
|---|---|---|---|
| 小説 | 『カフネ』阿部暁子 | 10票中4票 | こはぜ |
| 漫画 | 『ふつうの軽音部』クワハリ・出内テツオ | 9票中5票 | 草餅 |
| アニメ | 『ダンジョン飯』(テレビアニメ) | 11票中6票 | 凪 |
| 映画 | 『侍タイムスリッパー』安田淳一監督 | 10票中7票 | ロク |
| ドラマ | 『虎に翼』(連続テレビ小説) | 11票中6票 | タカノツメ |
| 音楽 | 米津玄師「さよーならまたいつか!」 | 9票中3票 | 栞 |
| ゲーム | 『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(HD-2D版) | 7票中3票 | ヤギ |
十二月の会で取り上げた映画が、その月のうちに大賞に選ばれたのは、四回目にして初めてです。
寄稿 年末年始の一気見
(タカノツメ)
結論から言う。十二月三十日から一月三日までの五日間で、小生は十七話を観た。
年末年始は、連続ドラマを一気に観るために一年間ためておいた時間である。今年の献立は二本。
一本目は『地面師たち』。土地の持ち主になりすまして、大金をだまし取る詐欺師たちの話である。一話ごとに、辛さが一段ずつ上がっていく。最初はぴりっと来る程度だったのが、終盤には、口の中がしびれて味が分からなくなる。脚本が、観る側の舌を麻痺させにくるのだ。
二本目は『SHOGUN 将軍』。戦国の終わりの日本に、異国の船乗りが流れつく話で、こちらは辛さというより、じっくり煮込んだ濃い汁物である。一話が長い。だが、一話ごとに、盤上の駒が一つずつ動く。来週まで待てない、ではなく、待たずに次を再生してしまう。これが一気見の危うさなのだ。
一気見には、ひとつ欠点がある。最終回の前の週がない。前に会報に書いたとおり、小生はあの一週間を愛している。五日で十七話を観ると、あの週は、一晩の眠りの中に消えてしまうのである。
来年の年末は、一本だけにしようと思う。たぶん、無理である。
寄稿 冬のアルバム
(栞)
最後の曲が終わってから、窓の外の雪が、音もなく積もっていくのをしばらく見ていました。
冬に聴くアルバムは、音の少ないものがいい気がします。雪は音を吸うので、部屋の中の音も、少し遠くなる。そこに、大きな音はあまり似合いません。
シガー・ロスの『Takk…』は、北の国のバンドの一枚です。何を歌っているのか、私にはほとんど分かりません。分からないまま、声が楽器のひとつとして、遠くから近づいてくる。曲の順番に沿って聴いていくと、雪原を少しずつ歩いているような気がしてきます。
坂本龍一の『BTTB』は、ピアノだけのアルバムです。短い曲がいくつも並んでいて、一曲ごとに、部屋の温度が少しずつ変わる。ピアノの音が消えたあとの、ほんの短い無音のところに、いちばん長く残るものがある気がします。
冬の夜は長いので、一枚を通して聴いても、まだ夜は終わりません。二枚目をかけるかどうか迷うあいだの、その静けさまで含めて、冬のアルバムなのだと思います。
冬の選書
『作りたい女と食べたい女』ゆざきさかおみ(漫画)
選んだ人:ぬか。料理を作るのが好きな女性と、たくさん食べる女性が、同じマンションで出会う話です。大きな鍋いっぱいの料理が、ひとくち目で消えていく場面に、白いごはんが欲しくなります。
『マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!』(ゲーム)
選んだ人:ヤギ。海に浮かぶ島々を、兄弟で船に乗って回る。島に着くたびに、次の島が遠くに見える。
『100かいだてのいえ』いわいとしお(絵本)
選んだ人:めじろ。ページを縦にめくって、100かいまでのぼっていく絵本です。十かいごとに住んでいる生きものがかわるので、読み聞かせのとき、子どもと一緒に数えながらのぼります。
『ルックバック』藤本タツキ(漫画)
選んだ人:草餅。一昨年の秋の会で読んで、去年の夏に映画になった一冊。冬にもう一度読むと、雨の帰り道の見開きが、少し違う色に見える……
次の会
- 第57回(一月) テーマ「優しくなりたい」。テレビドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』。進行ははるまき、記録はめじろ。
- 第58回(二月) テーマ「笑いたい」。エッセイの回です。進行はぬか、記録は栞。
しずく通信 第19号 2025年1月 編集:はるまき