おかえりなさいの号
(はるまき)
今年の一月からお休みしていためじろが、今月、戻ってきます。
九か月ぶりです。赤ちゃんは、もう、はいはいで部屋じゅうを回っているそうです。はるまきも、下の子がそのくらいの頃は、洗濯物をたたみ終わるまでに三回は抱っこしていたなあ、と思い出しちゃいました。
戻ってきた最初の号なので、寄稿もお願いしました。休んでいたあいだに読んだ絵本の話です。十一人になりました。
もくじ
- おかえりなさいの号(はるまき)
- 感情浴会の記録 第39回〜第41回
- 寄稿 休んでいたあいだの絵本(めじろ)
- 寄稿 秋の短編(草餅)
- 秋の選書
- 次の会
感情浴会の記録
第39回(七月) おなかを空かせたい 『南極料理人』沖田修一監督
- 進行:ぬか(初めての進行) 記録:ロク
- 南極の内陸の基地で、一年間、八人の隊員の食事を作る男の話。十人で同じ時間に再生しました
- ぬかの決まりは、観る前に何も食べないこと
- 記録のロクがいちばん残ったのは、基地でラーメンが作れなくなって、隊長がひどく落ちこむ場面。会のあと、冷凍してあった麺をゆでたそうです。ぬかからは、ひとくち目の感想を求められていました
第40回(八月) 熱くなりたい 『THE FIRST SLAM DUNK』井上雄彦監督
- 進行:凪 記録:ヤギ
- 去年の暮れに公開されて、まだ上映が続いていたので、それぞれ映画館で観てきてから話しました
- 原作を読んでいたのは十人のうち六人。凪は五回観ていて、五回とも、最後の数秒で喉がつまったそうです
- 記録のヤギは、映画館を出てから、手のひらに爪のあとが四つ残っていたのに気づいた、と書いています
第41回(九月) 遠くへ行きたい 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』
- 進行:ヤギ 記録:はるまき
- 五月に出たゲーム。ヤギが自分の画面を映して遊び、みんなは横から見る形です
- 空に浮かぶ島のふちから、下の大地へ飛び降りる場面で、ヤギはわざと何も押さずに落ちていきました。はるまきは、ジェットコースターが大の苦手なのに、これは平気でした
- 終わったのは夜の十一時すぎ。ヤギは、いつもならここでセーブする、と言ってから、遠くの山を見るためだけに、もう少し歩いていました
寄稿 休んでいたあいだの絵本
(めじろ)
夜中の三時に、腕の中の子がやっと目をとじて、あたしはそのまま、まくらもとの絵本を一冊ひらきました。読むためじゃなくて、手に持っていたかったんだと思います。
休んでいたあいだ、読み聞かせの相手は、生まれたばかりの子と、お姉ちゃんになった上の子のふたりでした。
生まれたばかりの子には、まだお話は分かりません。だから、声と、色と、くりかえしの本ばかり読みました。かがくいひろしの『だるまさんが』は、だるまさんが、ころんだり、つぶれたり、のびたりするだけの本です。それだけなのに、ページをめくるたびに、小さな手足がぴくっと動く。まだ笑わない時期でも、ちゃんと何かが届いているんだなあ、と思いました。
松谷みよ子の『いないいないばあ』は、上の子が赤ちゃんのころにも読んだ本です。ページのはしがやわらかくなって、ほつれかけています。そのほつれたところを、こんどは下の子の指がなぞっていく。同じ本を、同じ声で、もうひとりに読む。毛布を洗って、もう一度かけてあげるみたいな気持ちでした。
上の子は、赤ちゃんに絵本を読んであげる係になりました。字はまだ読めないので、絵を見ながら、自分でお話を作って読んでいます。それを横で聞いているのが、この九か月でいちばん、ページをめくる手が止まった時間でした。
会のみんなの記録は、夜中にずっと読んでいました。また、話す側にもどります。
寄稿 秋の短編
(草餅)
川べりの道を、女の人がひとり、仕事帰りに歩いていく。背中だけのコマ。うちはその一コマのところで、しばらく先へ進めなかった。
こうの史代の『夕凪の街 桜の国』。広島の、戦争が終わって十年ほどたった街に暮らす女の人の話と、その家族の、もっとあとの時代の話が入った一冊。短い。一時間もあれば読める。でも、読み終えてから、本を棚に戻すまでに一日かかる。
秋になると、こういう短い話が読みたくなる。夏のあいだに外に出しっぱなしだった気持ちが、夕焼け色の空の下で、少しずつ部屋の中に戻ってくる。その戻り道に、一冊で終わる話がちょうどいいんだ。
もう一冊は、和山やまの『カラオケ行こ!』。合唱部の中学生が、なぜか歌のうまくなりたい大人に、歌を教えることになる話。笑っているうちに終わって、最後の見開きで、急に胸のあたりが熱くなる。秋の夜に、笑って、少しだけさびしくなれる一冊。
どちらも、誰かに渡したくなる。付箋の色は、秋だから、少し赤いのにしようかな……
秋の選書
『流浪の月』凪良ゆう(小説)
選んだ人:灯。まわりからは決して理解されない二人の、長い年月の話です。静かな夜に、少しずつ。読み終えてから、たぶん、しばらく何も話したくなくなります。
『注文の多い料理店』宮沢賢治(朗読で)
選んだ人:こはぜ。山で道に迷った二人の紳士が、一軒の料理店に入る話です。扉を開けるたびに、声が少しずつ変わっていくのが聴きどころなのです。
『ゾディアック』デヴィッド・フィンチャー監督(映画)
選んだ人:ロク。犯人を追う人たちの、何年にもわたる記録。答えより、書類の山のほうが怖い。
『ピクミン4』(ゲーム)
選んだ人:ヤギ。小さい体で、庭を歩く。いつもの庭が、遠い大陸になる。夕方のチャイムで手が止まる。
次の会
- 第42回(十月) テーマ「ひとりを味わいたい」。星野源のエッセイ集『いのちの車窓から』。進行は灯、記録はめじろ。戻ってきて最初の会で、さっそく記録を引き受けてくれました。
- 第43回(十一月) テーマ「ふるえたい」。漫画の回です。進行は草餅、記録はこはぜ。十一月から、また新しい仲間が加わる予定です。
しずく通信 第14号 2023年10月 編集:はるまき