ラルム / しずく通信

2023.07.02第13号夏号編集 はるまき寄稿 はるまき・栞・こはぜ・ロク

しずく通信 第13号(2023年 夏)

夏の号のはじめに

(はるまき)

冷やし中華のたれを、今年は自分で作ってみました。酢を入れすぎて、家族にむせられちゃいました。

七月で、しずく通信は創刊から三年になります。十三号目です。創刊号を読み返したら、最後に「次の号は十月」と書いてあって、そのとおりに十三回続いたんだなあと思うと、ちょっと不思議な気持ちです。

五月からは、こはぜが加わりました。朗読の好きな大学生です。紹介は、朗読の回をいっしょに進めた栞に書いてもらいました。


もくじ

  1. 夏の号のはじめに(はるまき)
  2. 感情浴会の記録 第36回〜第38回
  3. こはぜのこと(栞)
  4. 寄稿 耳で読む怪談(こはぜ)
  5. 寄稿 夏の終わりの映画(ロク)
  6. 夏の選書
  7. 次の会

感情浴会の記録

回 テーマ 作品 進行/記録 その夜のひとこと
第36回(四月) やり直したくなりたい 『ブラッシュアップライフ』(テレビドラマ・バカリズム脚本) はるまき/草餅 会のあと、しばらく話していなかった地元の友だちに連絡した(草餅)
第37回(五月) ほどけたい 宇多田ヒカル『BADモード』 オト/栞 二曲目から、体の向きが変わる(オト)
第38回(六月) 寂しさに浸りたい 夏目漱石『夢十夜』(朗読で聴く) 栞/こはぜ 縁側にしばらく座っているような夜でした(こはぜ)

四月は、三月まで放送されていたドラマを、はるまきが終わったらすぐやりたいと言って持ってきました。亡くなった女性が、自分の人生をもう一度やり直す話です。主人公が大人の頭のまま小学生に戻って授業を受ける場面で、はるまきはずっと笑っていました。

五月は、オトの進行で一枚を通して聴く回。こはぜの最初の会でした。オトからの付け加えは、部屋の明かりを落とすこと。終わり近くの長い曲が遠ざかっていくのを、誰も止めようとしなかった、と栞の記録にあります。

六月は、十ある夢のうち三つを、画面を消して、部屋を暗くして聴きました。こはぜは雨戸を閉めて、柱時計の音だけがする部屋で聴いていたそうです。入って二回目の会で、初めての記録でした。


こはぜのこと

(栞)

最初のあいさつの声が、思っていたより落ち着いていて、画面の向こうが少し静かになったのを覚えています。

こはぜは、朗読や音声の作品を記録してくれる大学生です。古い物語の朗読と、ラジオドラマが好きで、倍速では聴かない主義。五月の音楽の回で、歌声が近くなったり遠くなったりするのが、雨戸越しに誰かの声を聴いているようだった、と話していて、初めての会とは思えないことばだと思いました。

朗読の回を、これから一緒に作っていけたらうれしいです。


寄稿 耳で読む怪談

(こはぜ)

一行目の声が、思っていたよりずっと明るかったのです。それが、いちばん怖かった。

怪談は、目で読むより、耳で聴くほうが怖いとぼくは思っています。目で読むときは、怖い場面が来そうになると、少し先の行をちらりと見てしまえます。耳では、それができません。声が進む速さでしか、話は進まない。次の角を曲がるまで、何が待っているか分からないのです。

泉鏡花の『高野聖』は、旅の僧が山中の一軒家に泊まった夜の話です。聴いていると、声がゆっくりになるところで、こちらの息もゆっくりになります。山道の湿った空気や、ひとつ家の女の人の気配が、耳の奥で少しずつ近づいてきます。何が怖いのかを、はっきりとは言わない話です。

岡本綺堂の怪談も、よく聴きます。人が集まって、一人ずつ怖い話を語っていくという形の話が多く、朗読で聴くと、自分もその座敷の隅に座っているような気がしてきます。障子の向こうで、誰かが足を止める。そういう音のない場面ほど、声が変わる一瞬がくるのです。

いつか会で、怪談を朗読で聴く回ができたらと思っています。夏の夜、雨戸を閉めて。


寄稿 夏の終わりの映画

(ロク)

夏休みは四十日ほどある。そのうち最後の三日は、それまでの三十七日と重さが違う。

夏の終わりの映画とは、その最後の三日の映画のことだ。

『菊次郎の夏』。北野武監督。夏休みに、母親に会いに行く少年と、ろくに働かない中年の男の、あてのない旅。道中は、ほとんどがくだらない遊びだ。画面の端に、いつも青い空がある。その空が、旅の終わりに近づくにつれて、少しずつ遠く見えてくる。

『スタンド・バイ・ミー』。四人の少年が、線路を歩いて一泊の旅に出る。要するに、たった二日の話だ。だが、最後の数分で、その二日がどれだけ遠い昔になったかが分かる。組み立ては単純で、骨組みが見えているのに効く。

どちらも、観終えたあとに、夏が一つ終わる。まだ七月なら、観るのは早い。八月の最後の週まで、取っておくこと。


夏の選書

『TARI TARI』(テレビアニメ)
選んだ人:凪。海の近くの高校で、合唱をやりたい子たちが集まる話で、最後の数話の、歌の場面で、自分は何回観ても喉がつまるんです。

『海が走るエンドロール』たらちねジョン(漫画)
選んだ人:草餅。夫を亡くした女の人が、映画を撮りたいと思いはじめる話。夜の海の見開きで、うちは一回、本を閉じた。

『ロング・バケーション』(テレビドラマ)
選んだ人:はるまき。夏休みじゃなくて、人生のちょっと長いお休みの話です。家族が寝たあと、一話ずつ。

サカナクション『834.194』(音楽)
選んだ人:オト。二枚組。一枚目は街の夜、二枚目は、もっと遠くの夜。帰り道に、二枚目から。


次の会

  • 第39回(七月) テーマ「おなかを空かせたい」。映画『南極料理人』。ぬかの初めての進行です。記録はロク。
  • 第40回(八月) テーマ「熱くなりたい」。映画館で上映が続いているアニメ映画を、それぞれ観てきてから話します。進行は凪、記録はヤギ。

しずく通信 第13号 2023年7月 編集:はるまき

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