ラルム / しずく通信

2022.04.17第8号春号編集 はるまき寄稿 はるまき・ぬか

しずく通信 第8号(2022年 春)

まずはお知らせ

(はるまき)

今月から、感情浴会の記録を、一か所にまとめて残していくことにしました。

これまでの記録は、記録係それぞれの手もとのメモや、個人のアカウントに書いたものでした。それを少しずつ集めて、同じ場所で読み返せるようにします。書き方は、書く人によってばらばらのままでいい、というのが栞の意見で、はるまきも賛成です。そろえすぎると、誰が書いたのか分からなくなっちゃいますもんね。

しずく通信は、これまでどおり季節ごとに出します。


もくじ

  • まずはお知らせ
  • 感情浴会の記録 三つの問い(第21回〜第23回)
  • ぬかのこと
  • 寄稿 春キャベツの出てくる漫画(ぬか)
  • 寄稿 新しいドラマの第1話(はるまき)
  • 春の選書
  • 次の会

感情浴会の記録 三つの問い

この冬の三回は、どの回も、進行役や記録係がひとつずつ問いを出していました。今回は、その問いを見出しにしてまとめます。

もし一度だけ戻れるなら、いつに戻るか

第21回(一月)、やり直したくなりたい。川口俊和の『コーヒーが冷めないうちに』。進行は灯、記録は栞。ある席に座ると過去に戻れるけれど、コーヒーが冷めるまでに帰ってこなければならない喫茶店の話です。

灯の提案で、前半は、それぞれ温かい飲みものが冷めるまでのあいだだけ話す、というやり方にしました。後半の問いには、チャットの欄に一行ずつ答えました。この夜は八人で、鹿の子は年明けの仕事で欠席。はるまきは書かずに口で答えました。何を答えたかは、記録のほうに残っています。

なぜ、あの男は車を預けられたのか

第22回(二月)、救われたい。濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』。進行はロク、記録は鹿の子。三時間ちかい映画なので、それぞれ観てきてから話しました。この回から、ぬかが加わって十人になりました。

問いを出したのは、記録の鹿の子です。ロクは、車は妻の声が残っている部屋のようなものだった、と答えました。栞は、音を立てない運転の話を。ぬかは、観終えて最初に温かい汁物をすすりたくなった、と言って、場がふっとゆるみました。

どこで、ふるえたか

第23回(三月)、ふるえたい。恩田陸の『蜜蜂と遠雷』。進行はオトの初めての進行で、記録ははるまき。ロクはシフトが重なって欠席でした。

ピアノのコンクールに集まった若い演奏者たちの話です。オトが、小説の中で弾かれる曲を、話のあいまに少しずつ流してくれました。ふるえた場面は見事にばらばら。はるまきは、働きながら出場する楽器店の青年でした。会の前の日に、子どもの小さな発表会を聴いたばかりだったので、なおさらです。


ぬかのこと

二月から加わったぬかは、食べものが出てくる作品を記録してくれます。会社勤めで、夜食とぬか漬けが好き。呼び名の由来を聞いたら、実家から分けてもらったぬか床を、もう十年以上育てているからだそうです。初めての会が三時間の映画で、なかなか大変だったと思います。


寄稿 春キャベツの出てくる漫画

(ぬか)

読み終えて最初にしたことは、キャベツを一玉買いに行くことでありました。

春キャベツの季節です。葉がやわらかく、巻きがゆるく、生のままでも甘い。わたくしは毎年この時期になると、春キャベツの出てくる作品を読みたくなります。今年はそれを漫画で探してみよう、と思い立ちました。

結論から申しますと、見つかりませんでした。

手もとの料理の漫画を、十冊ほどめくりました。キャベツはたくさん出てきます。千切りも、炒めものも、ロールキャベツもあります。ところが、春キャベツと名指しされた一皿には、とうとう出会えなかったのです。キャベツは、季節を名乗らずに皿の上にいる野菜なのかもしれません。

その代わり、ページをめくるたびに、ひとくち目の音が聞こえてくる気がしました。ざくっ、でも、しゃきっ、でもない、春キャベツにしか出せない、あのやわらかい音です。漫画の絵からは匂いも味もしないのに、白いごはんが欲しくなる。台所の音まで思い出させるのが、食べものの漫画の力だと思います。

その夜は、買ってきたキャベツを大きめに切って、塩をふって、一晩寝かせました。翌朝のお弁当に入れました。

春キャベツの出てくる漫画をご存じのメンバーがいらしたら、次の会でこっそり教えてください。


寄稿 新しいドラマの第1話

(はるまき)

子どもを送り出したあと、洗濯機を回しながら、新しい朝ドラの第1話を再生しました。

今週から始まった『ちむどんどん』です。沖縄の北のほうの村で育つ、四人きょうだいの話。第1週は、まだ子どもの頃の話でした。はるまきはこの一週間、毎朝十五分、洗濯物を干す前にこれを観るのが決まりになっています。

春は、新しいドラマの第1話がいっぺんに来る季節ですよね。はるまきは、第1話はなるべく何も調べずに観ることにしています。誰が出ているかも、どんな話かも、なるべく知らないまま。そうすると、第1話の終わりに、続きを観たいかどうかが、自分の体で分かるんです。

続きを観たくなる第1話には、共通点があると思っていて。登場人物が、まだ全部を話していない。何か隠しているとか、言えないことがあるとか。台所で言うと、鍋のふたが少しだけ開いていて、中が見えそうで見えない感じです。

四月は、第1話を何本も観て、何本かを残して、何本かを手放す月。今年は何本残るかな。


春の選書

『図書館の神様』瀬尾まいこ(小説)
選んだ人:灯。高校の文芸部の顧問になった女性と、部員がひとりだけの一年です。春の夕方に、少しだけ。

『桐島、部活やめるってよ』吉田大八監督(映画)
選んだ人:ロク。同じ金曜日を、何人もの視点で撮り直す。建物の同じ廊下が、見る人によって違って見える。

サニーデイ・サービス『東京』(音楽)
選んだ人:オト。春の朝の一枚。夜勤明けより、始発より、もう少し明るい時間に。

『ポケモン レジェンズ アルセウス』(ゲーム)
選んだ人:ヤギ。まだ地図のない土地を、歩いて埋めていく。丘の上で、手が止まる。

『甘々と稲妻』雨隠ギド(漫画)
選んだ人:ぬか。父と娘が、土鍋で炊いたごはんを食べるところから始まる漫画です。炊きたての湯気の絵で、わたくしは一度、本を閉じました。


次の会

  • 第24回(四月) テーマ「すっきりしたい」。テレビドラマ『MIU404』。進行ははるまき、記録はヤギ。
  • 第25回(五月) テーマ「ときめきたい」。漫画の回です。進行は凪、記録はぬか。

しずく通信 第8号 2022年4月 編集:はるまき

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