ラルム / しずく通信

2021.04.11第4号春号編集 はるまき寄稿 はるまき・ヤギ・めじろ・凪

しずく通信 第4号(2021年 春)

もくじ

  • 春のあいさつ(はるまき)
  • 新しい二人に、三つ聞きました(ヤギ・めじろ)
  • 感情浴会の記録 第9回〜第11回
  • 寄稿 ゲームで遠くへ行く(ヤギ)
  • 寄稿 春に始まるアニメ(凪)
  • 春の選書
  • 次の会

春のあいさつ

(はるまき)

上の子の新しい上履きに名前を書いていたら、ペンのインクが切れちゃいました。春ですね。

この冬から春にかけて、一滴舎に二人の仲間が増えました。一月からのヤギと、今月からのめじろです。九人になりました。創刊号の頃より、画面に並ぶ顔が三つ増えました。

それから、この号から会の名前が「感情浴会」になっています。はるまきはまだ、ときどき「観る会」と言い間違えます。


新しい二人に、三つ聞きました

一、どんなときに作品を浴びていますか

(ヤギ)夜。課題が終わったあと。コントローラーを持って、誰もいない場所まで歩く。それが一日の終わりの決まりになってる。

(めじろ)子どもが寝たあとの、台所のあかりの下です。それと、寝る前の読み聞かせのとき。あたしが読んでいるのに、あたしのほうが先に泣きそうになることがあります。

二、最近いちばん心が動いたもの

(ヤギ)一月の会で観た『逃げ恥』。ときめくより先に笑った。あと、三月の会で自分が進行した『風ノ旅ビト』。進行してるのに、雪の場面で手が止まった。

(めじろ)『ちいさいおうち』を子どもに読んでいて、最後のページで声がつまりました。何回も読んでいる本なのに、読むたびに、つまる場所がちがうんだなあ、と思いました。

三、会でやってみたいこと

(ヤギ)ゲームの回をもっと。遊んだことがない人と、同じ山を見たい。

(めじろ)去年の暮れに絵本の回があったと、前の号で読みました。いつか、あたしが選んだ一冊でも。大人だけで絵本を読む夜って、やわらかい毛布みたいな時間なんだろうなあ。


感情浴会の記録

「感情浴会」と呼ぶようになってからの、最初の三回です。

第9回(一月) ときめきたい 『逃げるは恥だが役に立つ』(テレビドラマ)

  • 進行:はるまき 記録:栞
  • 第1話をそれぞれ同時に再生して、あとは各自が観てきたところまでを持ち寄りました
  • はるまきの推しは、二人が決まった曜日に抱きしめ合う約束をする回。鹿の子は、契約の条項が書き換えられていくのを、二人の気持ちの地図として読んでいました
  • 栞のメモの最後は、言えなかった沈黙のほうに先にときめきが来る、という一文でした

第10回(二月) 熱くなりたい 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』

  • 進行:凪 記録:ヤギ
  • 映画館での上映が続いていたので、それぞれ観てきてから日曜の夜に集まりました
  • 凪は三回観て、三回とも同じところで背中が熱くなったそうです。十一は、戦いのあいだに少しずつ明るくなっていく空の色の話を
  • 記録のヤギは、映画館のひじ掛けを、エンドロールの途中まで握っていたと書いています

第11回(三月) 遠くへ行きたい 『風ノ旅ビト』thatgamecompany

  • 進行:ヤギ 記録:ロク
  • 初めてのゲームの回。会の一週間前までに、それぞれ一人で最後まで遊んでおく決まりでした。十一は卒業の準備で欠席
  • 遊び終えるまで、短い人で一時間四十分、長い人で三時間。いちばん長かったのは、何度も立ち止まって景色を見ていた灯
  • 途中で知らない誰かの旅人と一緒になった人は、七人中六人。はるまきは、コントローラーを持つのが十年ぶりでした

寄稿 ゲームで遠くへ行く

(ヤギ)

スティックを前に倒したまま、指を離せなかった。

砂の丘のてっぺん。遠くに光る山。そこまで何もない。『風ノ旅ビト』の最初の数秒で、俺はもう、あの山まで行くしかないと思っていた。

ゲームで遠くへ行く、っていうのは、移動が速いことじゃない。遠くに何かが見えることだ。見えているのに、まだ届かない。その距離が、歩く理由になる。

同じことを、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』でも思った。高いところに登ると、遠くの山が見える。見えた山には、ほとんど全部、本当に行ける。行けると分かった瞬間、ここで一回コントローラーを置いた。行けるなら、急がなくていい。そう思えたのは初めてだった。

電車にも飛行機にも乗らずに、部屋から一歩も出ずに、遠くへ行ける。今の季節には、それがちょっとありがたい。

会でゲームの回をやると、遊んでいない人が多い。でも、遠くの山を見るだけなら、見ている側にもできる。次の回も、誰かの隣で歩きたい。


寄稿 春に始まるアニメ

(凪)

一話目の、ほとんどタクシーの中の会話だけで二十分が過ぎていく作りに、正直、最初は戸惑ったんです。

今月始まったばかりの『オッドタクシー』の話です。動物の姿をした人たちが出てくる、かわいい絵柄なのに、運転手と客が話しているのは、なんだか落ち着かないことばかりで、観終わったあと、面白かったのかどうかも分からないまま、なぜか二話目の放送の日をカレンダーに書いていました。

春のアニメの一話目は、試合の最初の一周みたいなものだと思っていて、ここで全部を判断しない、というのが自分の決まりです。同じ週に観た『スーパーカブ』は反対に、ほとんど何も起きない一話目でした。ひとりで暮らしている高校生の女の子が、中古の小さなバイクを買う、それだけなんですが、エンジンがかかった瞬間に、画面の色がふっと変わるんです。ここ、本当に、観ていて喉の奥がきゅっとなりました。

どちらが最後まで心に残るのかは、まだ分かりません。三か月後の夏の号で、答え合わせをしたいと思います。


春の選書

『きらきらひかる』江國香織(小説)
選んだ人:灯。少し変わった夫婦の、静かな話です。夕方の光の中で読むのが、たぶんいちばん似合います。

『あつまれ どうぶつの森』(ゲーム)
選んだ人:ヤギ。遠くへは行かない。島の中を歩くだけ。それでも、朝の海岸で手が止まる。

『言の葉の庭』新海誠監督(アニメ映画)
選んだ人:十一。雨の庭園。緑の反射。四十六分、光が画面の主役である。

『あまちゃん』(連続テレビ小説)
選んだ人:はるまき。朝ドラを一本だけ勧めるなら、これです。十五分ずつ、朝ごはんのあとに。

『ちいさいおうち』バージニア・リー・バートン(絵本)
選んだ人:めじろ。季節がめぐって、まわりの景色だけが変わっていく絵本です。ページをめくる手が、春のところでいつもゆっくりになります。


次の会

  • 第12回(四月) テーマ「背中を押されたい」。山口つばさの漫画『ブルーピリオド』、第1巻と第2巻まで。進行は灯、記録は凪。めじろの最初の会です。
  • 第13回(五月) テーマ「切なくなりたい」。映画館で上映中の作品を、それぞれ観てきてから話します。進行は十一、記録ははるまき。

しずく通信 第4号 2021年4月 編集:はるまき

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