遊ぶ時間は二時間ほど。会の一週間前に、それぞれ一人で最後まで歩いておく。それが進行のヤギからの条件だった。
三月の感情浴会。初めてのゲームの回だ。作品は『風ノ旅ビト』。砂漠の真ん中で目を覚ました旅人が、遠くに光る山を目指して歩く。それだけのゲームだ。言葉は一つも出てこない。
参加は七人。十一は卒業の準備で欠席。
当日の話を、数字で残しておく。
- 全員が遊び終えるまでにかかった時間。短い人で一時間四十分、長い人で三時間。長かったのは灯。途中で何度も立ち止まって景色を見ていたらしい
- 途中で、知らない誰かの旅人と一緒になった人。七人中六人。このゲームは、同じ時間に遊んでいる見知らぬ誰かと、名前も分からないまま一緒に歩くことがある
- その相手と、最後まで一緒だった人。三人
- 声を出して何か言った人。凪一人。雪の場面で、一人で遊んでいるのに、思わず相手に向かって話しかけていたそうだ
- ゲームを初めて最後まで遊んだ人。はるまき。コントローラーを持つのは十年ぶりと言っていた
要するに、全員が別々に、同じ場所を目指して歩いた。そのことを、日曜の夜に七人で確かめ合った会だった。
僕が残ったのは、雪山の場面だ。体に巻いた布が短くなり、足が重くなる。画面の端に、同じように凍えている誰かがいる。助けることはできない。近くにいることしかできない。それで十分だった。
ヤギは進行の最後に、遠くへ行きたいときは、遠くを歩いている誰かの隣にいるだけでいい、と言った。珍しく、誰も茶化さなかった。
次は四月。灯の進行で漫画。記録は凪。
(記録:ロク)